理研、スペースデブリを除去する技術を考案―高強度レーザーで大気圏に再突入

2015年4月23日 13:31

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宇宙用高輝度レーザーシステムを可能とするCANレーザーシステムの概要を示す図。レーザーは、多数(1000本以上)のファイバーで並列に増幅され約1.5mの光学系でスペースデブリに向かって射出される。CANは、Coherent Amplification Networkの略。(理化学研究所の発表資料より)

宇宙用高輝度レーザーシステムを可能とするCANレーザーシステムの概要を示す図。レーザーは、多数(1000本以上)のファイバーで並列に増幅され約1.5mの光学系でスペースデブリに向かって射出される。CANは、Coherent Amplification Networkの略。(理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]

  • レーザービームによるスペースデブリの進路変更を示す図。レーザービームが起こしたアブレーションによる反力を、スペースデブリの進行方向とは反対の方向に与えるとその高度が下がり、最終的には地球大気に再突入する。(理化学研究所の発表資料より)
  • レーザービームによるプラズマアブレーションの概念を示す図。強い輝度の光(ここではレーザー)が物質表面に照射されると、表面の物質がプラズマ化して吹き出してくる。この現象をプラズマアブレーションと呼ぶ。その時物質が噴き出す反作用(反力)をスペースデブリが受ける。(理化学研究所の発表資料より)

 理化学研究所の戎崎俊一主任研究員・和田智之グループディレクターらの共同研究グル―プは、スペースデブリ(宇宙ゴミ)に軌道上から高強度レーザーを照射することで、地球大気に再突入させて除去できることを明らかにした。

 スペースデブリは、地球衛星軌道を周回する不要な人工物体で、その相対速度は弾丸よりも速い秒速10キロメートル(km)以上に達するため、人工衛星や宇宙ステーションに衝突すれば致命的な損傷を与える可能性がある。

 今回の研究では、平均パワーが500kW高強度レーザーを100㎞以上離れた場所からスペースデブリに10秒程度照射することで、スペースデブリの固体表面からプラズマが噴き出す現象(プラズマアブレーション)を起こし、反作用によって減速して地球大気へ再突入させることができることを明らかにした。

 今後は、国際宇宙ステーションなどを活用して段階的に技術実証し、最終的には、地球観測のための人工衛星が密集する高度約700~900㎞の極軌道付近に、スペースデブリ除去専用の宇宙機を近くに打ち上げることが提案されている。

 なお、この内容は「Acta Astronautica」に掲載された。論文タイトルは、「Demonstration designs for the remediation of space debris from the International Space Station」。

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