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融点2000度超のホウ素融体の電子構造を初めて解明―金属ではなく半導体
静電浮遊法は、NASAとJAXAによって開発された、静電気を用いて試料を浮遊させる技術である。浮遊試料に高出力レーザを照射することにより、3,000℃を超える超高温を実現できる。(写真:JAXAなどの発表資料より)[写真拡大]
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の岡田純平助教らによる研究グループは、宇宙実験技術「静電浮遊法」と大型放射光施設SPring-8を用いて、溶融したホウ素の電子構造を解明することに世界で初めて成功した。
元素は、大きく分けると、金属と非金属(半導体、絶縁体)に分類され、ホウ素や硅素(シリコン)などの元素は、金属と非金属の境界に位置する。ホウ素に関しては、理論的な予想では溶けると金属になると考えられてきたが、融点が2,077℃と非常に高く、ホウ素の液体を安定に保持できる容器が存在しないことから、性質が良く分かっていなかった。
今回の研究では、静電気を用いて材料を浮遊保持する「静電浮遊法」を用いることにより、ホウ素を溶融して保持することに成功した。そして、大型放射光施設SPring-8に静電浮遊溶解装置を設置し、コンプトン散乱測定法と呼ばれる、物質中の電子の振る舞いを直接見る手法を用いて、ホウ素融体中の電子の挙動を観測した。
その結果、ホウ素融体中の電子は、それほど動き回っておらず、むしろ大半の電子が原子間に拘束されていることが判明した。つまり、ホウ素融体は金属ではなく、半導体であると言える。
今後は、本研究成果が、新たな材料開発につながると期待されている。
なお、この内容は米物理学会誌「Physical Review Letters」に掲載された。論文タイトルは、「Visualizing the mixed bonding properties of liquid boron with high-resolution x-ray Compton scattering」(高分解能X線コンプトン散乱測定による液体ボロン中の結合状態の可視化)。
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