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順天堂大、マウスで遺伝性難聴の根本的治療に成功
内耳とコルチ器の構造。蝸牛管に存在するコルチ器には音を感じとるセンサー細胞である有毛細胞とそれを支えている支持細胞によって立体構造を形成している。有毛細胞からの聴覚信号はラセン神経節、聴神経を経由して脳に伝わる(順天堂大学の発表資料より)[写真拡大]
順天堂大学医学部の池田勝久教授らの研究チームは、ヒトの遺伝性難聴に等しい疾患モデルマウスの作製成功と、このマウスへの遺伝子治療によって聴力の回復にも世界で初めて成功した。
この疾患モデルマウスはヒトの遺伝性難聴の最大の原因であるGJB2(コネキシン26遺伝子)を変異させており、周産期のGjb2変異マウスの内耳に正常のGjb2遺伝子を導入することで、聴力と内耳細胞の発育の改善がみられた。
先天性難聴は出生時からの高度な聴覚障害を示し、先天性疾患の中で最も高頻度に発生する疾患の一つ。言語発育の障害や明瞭な会話の制限といった著しいハンディキャップをきたす。1000出生に1人の発症で、その半数以上は遺伝子異常が原因とされている。治療として補聴器や人工内耳によって会話能の向上がなされているが、根本的な治療とはなり得ていないのが現状だ。
ヒトの遺伝性難聴の仕組みに等しい疾患モデルマウスの聴覚を回復できたことは、ヒトの遺伝性難聴の根本的治療法の開発に貢献することが期待される。現在、研究チームでは、今回作製されたGjb2欠損マウスを用いて、iPS由来細胞による再生治療とGjb2の遺伝子治療を組み合わせた難聴治療の研究を試行し、すでに良好な成果を得つつある。
このように、本研究結果はGJB2変異による遺伝性難聴の治療戦略を明確に示し、聴覚障害の根本的治療を目指す新時代を切り開くと考えられる。なお、この研究は理化学研究所、がん研究所、帝京大学との共同研究で行われた。本研究成果はHuman Molecular Genetics オンライン版4月2日付に公開された。(記事:町田光・記事一覧を見る)
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