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【小倉正男の経済羅針盤】アメリカの利上げと日本経済
■利上げ後は「金利高・為替高・株式高」に移行か
アメリカは雇用統計の発表が接近していることで株価が過敏な動きをみせている。
先月は、雇用統計が発表されると株価が300ドル超ほど低下した。雇用者数が大きく増加し、失業率が低下したからである。
雇用者数が増加し失業者が減るのは、経済にとって本来は理想的なことである。
だが、人手不足から賃金上昇などが懸念されることになる。利上げが早まるという見方が台頭する。アトランタ連銀総裁など金融筋からは「ゼロ金利政策の解除」といった声も流される。株価は神経質にそれに反応している。
雇用統計が発表されるということで株価が過敏に反応しているのだから、マーケットは実のところ雇用の実態をかなり好調と捉えているに違いない。
利上げは、どうあれ年内のどこかで遅かれ早かれ実施されるとみられる。利上げ実行前は神経質なものである。
だが、利上げが一旦なされれば、アメリカはすんなり「金利高・為替高・株価高」に移行するのではないか。
リーマンショック後、アメリカがそれこそ「辛抱強く」目指してきた高みに歩みを進めることになる。
■日本は3度目の金融量的質的緩和を模索
FOMC(連邦公開市場委員会)は、声明から「辛抱強く」という文言をすでに消し去ったが、慎重に仕上げの間合いを計っているといったところか。
アメリカは、利上げを「正常化」としている。逆にいえば、ゼロ金利状態は「異常」ということになる。
問題は日本である。
景気の動きを眺めると、アメリカを追って「正常化」、つまり利上げを行えるような状況にはない。むしろ、逆に日銀による3度目になる金融量的質的緩和に進むことになるのではないか。
マーケットからは、それこそ早くそれを行うべきという声が上がっている。 マーケットは辛抱強いか辛抱強くないか――。おそらく後者に決まっているが、声を上げるのはタダであり自由だから、どうせなら早くしてくれ、ということになる。
日本のほうは「金利安・為替安・株価高」という構図になるとみられる。デコボコというか、実力相応というか、アメリカのように高みは目指せない。
■日本に残されている手は「規制緩和」しかない
アメリカが利上げを行えば、世界のおカネはアメリカに集まることになる――。事態の推移とともに、アメリカ経済は繁栄に向かい、いずれは「バブル」ということになる。
資本主義というものはそういうものである。いつか来た道というか、「バブル」これは繰り返すことになる。
ともあれ、そこで日本が行わなければならないのは、「規制緩和」しかないのではないか。
アベノミクスによる円安政策は、トヨタ自動車を筆頭に輸出型製造業に大きな恩恵を与えた。これら日本の主力産業は、体力=収益力を十分に回復させることになった。
だが、それは円安の「底上げ経済」であり、これ以上の浮揚を求めるのは困難ではないか。
次に出てこなければならないのは、新しい産業・企業である。ソフトバンクなどを上回るような新しくて画期的なビジネスが台頭してこなければ、日本はまた再びデフレ経済に陥ることになりかねない。
「辛抱強く」それを言うしかない。残されている政策は「規制緩和」しかない、と――。
(経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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