東京農工大、植物細胞壁の「リグニン」を効率よく分解する方法を開発 バイオマスの加工性改善に期待

2015年1月14日 19:56

印刷

植物細胞壁の構造を示す図。植物の細胞壁は、中間層を含む薄い一次壁とその内側に生成する厚い二次壁に大別される。二次壁には多糖類であるセルロースやヘミセルロースに加え、リグニンが沈着し、植物の体制維持、水分の通導、病虫害に対する耐性などに重要な役割を果たしている(東京農工大学などの発表資料より)

植物細胞壁の構造を示す図。植物の細胞壁は、中間層を含む薄い一次壁とその内側に生成する厚い二次壁に大別される。二次壁には多糖類であるセルロースやヘミセルロースに加え、リグニンが沈着し、植物の体制維持、水分の通導、病虫害に対する耐性などに重要な役割を果たしている(東京農工大学などの発表資料より)[写真拡大]

  • 低分子のリグニンを分解することができるバクテリアSphingobium sp.SYK-6株とリグニン分解に働く酵素LigDを示す図(東京農工大学などの発表資料より)
  • LigDによるリグニン改変の原理とその効果を示す図(東京農工大学などの発表資料より)

 東京農工大学の梶田真也准教授らによる研究グループは、植物の細胞壁に多量に蓄積するリグニンを、より分解しやすい構造に改変するための新しい技術を開発した。

 植物の細胞壁に含まれるリグニンは、植物を工業原料として利用する際には邪魔になることが多いため分離する必要があるが、これまでの処理方法は大量のエネルギーと化学薬品が必要であった。

 今回の研究では、バクテリアSphingobium sp.SYK-6株の酵素LigD使って、リグニン全体の50~70%を占める分子間の「β-O-4型結合」のベンジル位にあるアルコールをケト(炭素と酸素が二重結合で結合したカルボニル基)へと酸化させる技術を開発した。

 そして、LigD遺伝子をモデル植物であるシロイヌナズナで発現させたところ、リグニン分子のベンジル位のケト構造が、野生型植物の約3倍にまで増加していることが明らかになった。これは高分子のリグニンに特徴的な分子構造を認識する酵素を用いて、植物細胞壁に含まれるリグニンの構造改変に成功した世界初の事例という。

 現時点ではケト構造の導入効率が低く、リグニンの分解性を顕著に向上させるまでには至っていないが、将来的にはリグニンの構造改変によって分解性が向上し、植物バイオマスの加工性改善や加工工程から排出される温室効果ガス削減に繋がることが期待される。

 なお、この内容は1月9日に「Plant Biotechnology Journal」にオンライン公開された。

関連記事