【小倉正男の経済羅針盤】サプライズ感が乏しい「地方創生」戦略

2014年12月25日 13:13

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■「地方創生」の本気の度合いは?

 「地方創生」――安倍晋三総理は、どうやら本気のようだ。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を重点政策として推進するとしている。

 東京都を中核とした首都圏にばかり人口が集中し、地方は「自治体消滅」の危機にあるといわれている。

 首都圏が繁栄していても、首都圏以外の地方を見渡すと閑散としてシャッターが下りた商店街といった街ばかりでは、地方消滅の「いびつな国」といわれても仕方がない。

 安全保障からみても、地震や災害のクライシス・マネジメントからみても、首都圏への一極集中は脆弱性を極大化するのみだ。

 「どうやら本気のようだ」としたが、問題はその度合いである。「決意」というか「不退転の気持ち」のようなものがなければ、政策もどこかそれが反映されることになる。

■優遇策は「地方移転するチャンスだ」というお得感が乏しい

 次期総理候補の有力な一人である石破茂・前幹事長を地方創生担当大臣に充てているのだから本気といえば本気である。

 だが、石破氏を幹事長ポストから外したとみる向きからすると、本気の度合いはそう高くはないことになる。

 具体策としては、東京から地方に本社機能を移転した企業の法人税軽減、地方で人員を採用した企業への助成制度の新設などが取りざたされている。

 その中身だが、法人税軽減は本社移転投資の7%程度といわれている。地方で人員採用を増やしたケースではその増加人員分の税額控除を認める見込み――。

 何だかすっきりしない。サプライズがない。もう少し目を見張るような優遇策を取るべきではないか。チマチマした本社移転支援策では、誰も重い腰を上げないに違いない。

 要するに「本社を地方に移転するチャンスだ」、というお得感や訴求感がない。いかにも優秀な事務方が手堅くつくった案といった感じが拭えない。

■「地方分権」=「うちの県は税金が安い」という競争意識を醸成せよ

 それに「地方創生」というのに、中央政府が音頭を取っている。地方は、あくまで受身の立場というか、参加している気配がほとんどない。当事者なのに当事者ではない。これはちょっと奇妙なことである。

 首都圏以外の地方にはおカネがない。おカネがないのだからアイディアも何も出しようがないというか出てこない。「地方創生」戦略でも、中央政府にお任せということになる。

 財源=税源を地方に移管し、「地方分権」を進めなければ「地方創生」といっても、仏つくって魂が入らず、になりかねない。地方におカネや権限を渡さなければ、地方同士の「競争」も生まれない。

 本来は、「うちの県は法人税が安い」「うちの県は県民・市民税が安い」「うちの県は固定資産税、相続税が安い」という競争のなかで企業も個人も居住するところを選んでくれ、ということになるべきである。

 首都圏、すなわち東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県などにも危機意識は薄い。他の地方と競争している意識は少ないから、これまで通りに税金を取れるだけ取ればいいという立場に安住している。「地方分権」とは、地方VS地方の競争を意味するのだがそれが希薄。

■企業のみならず個人にも地方移転を誘導せよ

 企業の本社移転のみならず、個人にも地方に移転する「選択の自由」を与える政策も必要ではないか。

 例えば、60歳を超えたら、1回だけ不動産などの譲渡益に課税しないというような優遇策を行うとする――。譲渡損が出るようなケースは少し補填する――。仮に譲渡益が出れば、老後の資金にしてくれ、ということだ。

 となれば首都圏のマンション、戸建て住宅を売却して、地方に引き払うことになる。

 首都圏に名門大学、有力高校などが集中し、大病院、あるいは大型店舗、大劇場なども集中している。首都圏に膨大な市民生活のインフラの集積があり、地方にはない。

 こうなると「地方創生」といっても、もうほとんど無理かな、と思うほどである。だがともあれ、「地方創生」というキーフレーズを表明したのだから、少なくともこれに本気で取り組む端緒にするべきである。もう遅い、ではなく「地方創生」といい始めたことは間違いでないベクトル(方向性・視点)というべきではないか。

(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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