理研、マウスを丸ごと透明化する技術を開発

2014年11月8日 20:28

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研究グループが開発した灌流(CB-Perfusion)プロトコールで、マウスの全身を丸ごと透明化した様子。左は幼児マウス、右は成体マウス(理化学研究所の発表資料より)

研究グループが開発した灌流(CB-Perfusion)プロトコールで、マウスの全身を丸ごと透明化した様子。左は幼児マウス、右は成体マウス(理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]

  • 細胞に蛍光タンパク質(黄色:心臓-mKate、幼生マウス-EGFP)が発現している成体マウスの心臓と幼生マウス全身を、細胞核が染まる蛍光色素(青色:心臓-SYTO 16、幼生マウス-Propidium Iodide)で染色し、2色の臓器・全身丸ごとイメージングを行った様子(理化学研究所の発表資料より)
  • 健常マウスと糖尿病モデルマウス由来の膵臓におけるランゲルハンス島の三次元病理解析(理化学研究所の発表資料より)

 理化学研究所の上田泰己コア長・田井中一貴元研究員らによる研究グループは、マウスの全身を丸ごと透明化し、細胞一つ一つを識別する新しい技術を開発することに成功した。

 マウス個体は約300億個の細胞から構成されており、全身に複雑な細胞ネットワークが張り巡らされている。免疫疾患やがんなどは、わずか1個の細胞の変化が生命システム全体に重大な結果をもたらすことになるため、全身を1細胞解像度で解析できる技術の確立が望まれていた。

 今回の研究では、全脳イメージング・解析技術として開発したCUBICで用いた透明化試薬(ScaleCUBIC試薬、以下CUBIC試薬)を用いて、血管や臓器を始めとする個体全身を丸ごと透明化できることを発見した。さらに、透明化したマウスを用いて、膵臓に島状に散在する内分泌機能を有する細胞群「ランゲルハンス島」の体積と総数を解析し、糖尿病モデルマウスにおいてランゲルハンス島の総数が大きく減少していることを明らかにした。

 今後は、遺伝学的に組み込んだ蛍光タンパク質検出、免疫組織化学的な解析、医学分野への応用などが期待されている。

 なお、この内容は11月6日に「Cell」に掲載された。

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