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理研、経験による脳回路変化を説明する新しい理論を構築
ヘッブ型可塑性のイメージ図。人の姿とその声によって活動した神経細胞が同時に活動することが繰り返されると、声を聞いただけで、その人の姿を連想することができるようになる。このような連想を支えているのがヘッブ型可塑性と考えられている(理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]
理化学研究所の豊泉太郎チームリーダーらによる研究グループは、脳回路の変化を担う2つのメカニズムが相互に調節し合いながら働く仕組みを組み込んだ新しい理論モデルを確立した。
私たちは経験を生かして様々なことを学習することができる。これは、脳回路内のシナプス結合の強さが変化する「可塑性」によるものだが、これまでの研究では、脳回路の中で頻繁に使われたシナプス結合がより強くなり、あまり使われなかったシナプス結合がより弱くなる「ヘッブ型可塑性」と、神経活動が極端に弱まったり強まったりするのをシナプス結合の強さを調節して防ぐ「整調型可塑性」という仕組みが存在しており、これら2種類の可塑性がどのように相互作用をして学習が成立するのかは、明らかになっていなかった。
今回の研究では、シナプス結合強度はヘッブ型の変数と整調型の変数の積によって表される新モデルを構築した。実際に、「ヘッブ型可塑性」は短い時間スケールで、「整調型可塑性」は長い時間スケールで、それぞれ独立に安定状態に達すると仮定すると、実験結果を非常によく再現できることが分かった。また、「従来仮定されていたように、2つの可塑性の影響が釣り合うことによってではなく、2つの可塑性がそれぞれストップすることで学習が終了する」こと、そして「しばらく閉じた眼を再び開くと、2つの可塑性の時間スケールの違いから、それまで閉じられていた眼の応答は一時的に過剰な回復を見せる」ことについても、生理的な検証実験によって正しいことが示された。
今後は、脳の成長や記憶のメカニズムの理解が進み、薬剤が脳の発達障害や学習障害に与える影響をコンピューターを使って予測し、医療現場などにフィードバックしていくことが可能になると期待されている。
なお、この内容は10月22日に「Neuron」に掲載された。
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