NASAの火星探査機メイブン、火星周回軌道への投入に成功

2014年9月22日 13:37

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記事提供元:sorae.jp

 米航空宇宙局(NASA)の火星探査機メイブン(MAVEN)が9月22日、打ち上げから10ヶ月間、約7億1100万kmに及ぶ航海を経て、火星を回る軌道に入った。これから約1年間に渡って、火星の大気を中心に観測を行う。

 メイブンは米東部夏時間2014年9月21日21時50分(日本時間2014年9月22日10時50分)、機体に装備している6基のスラスターに点火し、約33分後の22時24分(日本時間11時24分)に火星を回る軌道に入ったと見られる。その後、探査機からの電波を、オーストラリアのキャンベラにあるNASAの深宇宙ネットワーク(DSN)のアンテナが捉え、無事に火星を回る軌道に入っていることが確認された。今後、軌道の精密な測定が行われる予定となっている。

 メイブンはNASAゴダード宇宙飛行センターが主導するミッションで、同センターにとっては初の火星探査ミッションとなる。科学チームはコロラド大学がとりまとめを行っている。

 探査機の製造はロッキード・マーチン・スペース・システムズ社で、同社がかつて製造した2001マーズ・オデッセイや、マーズ・リコネサンス・オービターの設計を基に造られている。打ち上げ時の質量は2,550kgで、ミッション期間は約1年が予定されている。

 ちなみにメイヴン(MAVEN)という名前は、Mars Atmosphere and Volatile EvolutioNの頭文字から名付けられた。直訳すると「火星大気と、その揮発の進み方」といった意味になる。また「専門家」を意味する英単語のMavenにも掛かっている。

 メイヴンには大きく8種類の観測機器が搭載されており、火星の上層大気を中心に観測することを目的としている。それにより火星の大気と太陽風の相互作用や、火星大気の宇宙空間への流出過程についての解明が期待されている。科学的な知見を得られると同時に、将来の有人火星探査の検討にも役立つだろうとされる。

 メイブンが回る軌道は、火星にもっとも近い高度(近火点と呼ぶ)が150km、もっとも遠い高度(遠火点)が6,000kmの楕円軌道だ。また近火点を125kmまで下げ、より詳しい調査を行うことも計画されている。

 メイブンは2013年11月18日、アトラスVロケットに搭載され、ケープ・カナヴェラル空軍ステーションから打ち上げられ、火星へ向かう軌道に直接投入された。そして2013年12月と2014年2月に軌道補正を行い、観測機器の試験や校正なども行いつつ、火星を目指した。

 今後メイブンは、観測機器の立ち上げや確認などを行い、11月8日から本格的な観測を開始する予定となっている。

 NASAのチャールズ・ボウルデン長官は「メイブンは、火星の高層大気を専門的に探査する最初の火星探査機です。メイブンの活躍は、火星の気候はどのような過程を経て、どのように変わっていき、またそれが火星の地表や環境にどのような影響を及ぼしたかといった、火星の大気の歴史に関する私たちの理解を、劇的に変えてくれることでしょう。さらには、2030年代に火星に人類を送り込むという将来のミッションに向け、大事な情報をもたらしてくれることでしょう」と述べた。

 NASAは現在、2001マーズ・オデッセイ、マーズ・リコネサンス・オービターの2機の火星周回衛星と、オポチュニティとキュリオシティの、2機の火星探査車を運用している。ここにメイブンが加わったことで、NASAは計5機の火星探査機を同時に運用することになる。

 また、メイブンと同時期に打ち上げられたインドの火星探査機マーズ・オービターも、現在火星の周回軌道投入を控え、準備を行っている。マーズ・オービターは明後日の9月24日に火星周回軌道への投入に挑む。

写真=NASA。

■NASA’s Newest Mars Mission Spacecraft Enters Orbit around Red Planet | NASA
http://www.nasa.gov/press/2014/september/nasa-s-newest-mars-mission-spacecraft-enters-orbit-around-red-planet/

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