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VW発、ダウンサイジングの概念が波及する自動車エンジン 迎え撃つ日本車の対策
ダウンサイジングコンセプトを受けた最新VWゴルフ最強の“R”も従来の3.6リッターV6エンジンから2リッター直列4気筒ターボにダウンサイズ換装したが、性能は従来車を上回る[写真拡大]
ドイツ・トップの自動車メーカー、フォルクスワーゲン(VW)は、先代のVWゴルフ以降、ダウンサイジングコンセプトと称するエンジンの小排気量化、直噴化したガソリンエンジンをターボ化などで出力&トルクアップを図ってきた。排気量を小さくすることで省燃費型エンジンとしながら、性能は従来エンジン以上を目指す方式だ。
V型8気筒や12気筒などの大排気量エンジンを搭載してきた英ジャガーなども2リッター4気筒ターボを搭載するなど欧州車のトレンドとなった概念である。メルセデス・ベンツもルノー日産アライアンスと共同で小型化した2リッター4気筒ターボエンジンを開発・生産、C/Eクラスに搭載するなど力を入れ始めた。
対するトヨタや日産などの日本勢はハイブリッド車(HV)で省燃費車両開発を牽引してきた。しかしながら、日本はともかくグローバルな新車市場ではディーゼルを含む純粋な内燃機関車が9割を占める。
2013年のグローバルな自動車生産台数は約8500万台だといわれる。そのうち出力&トルクを過給器でアップさせたターボエンジン車は900万台だといわれる。一方、プラグインハイブリッド車(PHV)を含めたHVは190万台、電気自動車(EV)は10万台ほどだった。ただし、ターボ車のすべてがダウンサイジング・エンジンではない。メルセデスの最上級車にもパワーアップのためにターボエンジンが搭載されているし、先日発売されたスバルWRX STIなどはスポーツカーのためのターボエンジンだ。日産GT-Rのターボもスポーツカーとしての性能アップを狙ったセッティングだ。しかし、2018年までに省燃費を目的としたターボエンジン搭載車は2400万台にまで増えるとされ、エコカーの一角を占める大きな存在になると言われる。
そこでトヨタや日産なども欧州車のトレンドに追随、エンジンの小排気量化で燃費を改善し、従来型の大排気量エンジンに匹敵する出力を併せ持つ新型ガソリンエンジン開発を急いでいた。HVよりも価格を抑え、小型・高出力エンジンの分野で先行するドイツなどの欧州勢に対抗する。
日産は既にスカイラインでメルセデスと共同で開発した2リッターターボエンジンを採用した。出力&トルクは3リッタークラスの211ps/35.7kg.mを達成している。また、1.6リッターのガソリンターボエンジンを開発し、9月発売のクロスオーバーSUVのジュークに搭載。燃費を10%程度アップさせる。これまでの2~2.5リッターだった従来型エンジンを新型小排気量エンジンに換装するわけだ。提携先の仏ルノー車への供給についても検討に入ったという。
トヨタは、この春に新型エンジン群を発表し、小型車のヴィッツなどに搭載して大幅に燃費を改善した。また、先日発表した新型SUVであるレクサスNXにHVのほかに2リッター4気筒ターボエンジンを搭載したモデルをラインアップ。出力&トルクが238ps/35.7kg.mという3.5リッターV6エンジン並みの性能を持ちながら、車重1740kgのレクサスNXの燃費は3.5リッターV6エンジンを上回るJC08モード燃費12.8km/リッターを達成する。他のレクサス車やクラウンなどにも小型化したこのエンジンを搭載するという。
ホンダでも間もなく発表となる新型ステップワゴンで2リッターエンジンを1.5リッターのターボエンジンに換装する。ターボエンジン車は燃費でHVに劣る。しかし、バッテリーやモーター、複雑なコントロールユニットなどが要らない。そのため価格を抑えられるのがメリットだ。
国内メーカーは技術立国日本を標榜して、これまでHVやEV開発を優先してきた。が、世界的に主流であるエンジン車の燃費改善にも取り組む。
富士重は、先日発売を開始したレヴォーグで2リッターのスポーツターボエンジン以外に、1.6リッターに排気量を抑えたターボエンジンを搭載。好燃費とAWD(全輪駆動)によるスポーツ性を両立させた。
ターボチャージャーはエンジンの排ガスでタービンを高速回転させ、外部から取り込む空気を圧縮してエンジンに送り込み、燃焼効率を上げるメカニズムだ。同じ排気量のエンジンよりも出力&トルクアップが容易に図れる。エンジンの排気量を抑えて燃費を改善できるほか、排気量減は二酸化炭素(CO2)排出減にもつながる。
1980年代に日本でも一時ブームとなったが、90年代以降はWRC(世界ラリー選手権)に参戦した富士重や三菱の一部車両が搭載していただけだった。ところが、冒頭で記したように、先代VWゴルフがエンジンの排気量を抑えることを目的に、エンジン自体の軽量化にもつながるダウンサイジングという概念を発表、小型ターボエンジンを搭載。欧州車を中心に採用が広がった。
小型ターボエンジンは、HVのような高価な電池やモーター、複雑で高価なコントロールユニットが要らないため、低コストで燃費を改善できる。このため新興国に向けた車両で高コストパフォーマンスが得られるというメリットがある。ここ数年、米国や日本など欧州以外の先進国でもターボエンジン搭載車の市場が伸長している。(編集担当:吉田恒)
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