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アンガラロケット、飛行試験に成功 苦節20年、ロシア独自の新型ロケット誕生
アンガラロケット、飛行試験に成功 苦節20年、ロシア独自の新型ロケット誕生(Image credit: Ministry of Defence of the Russian Federation)[写真拡大]
ロシア航空宇宙防衛軍は9日、新型のアンガラロケットの初号機アンガラ1.2PPの飛行試験に成功した。開発決定から20年余り、ロシア連邦が初めて自力で設計し、製造されたロケットがついに誕生した。
アンガラ1.2PPはモスクワ時間2014年7月9日16時00分(日本時間2014年7月9日21時00分)、ロシア北西部アルハンゲリスク州にあるプレセツク宇宙基地の35/1発射台から離昇した。ロケットは順調に飛行を始め、2分後にはモスクワのクラスノズナメンスクにあるチトフ宇宙センターが追跡を開始した。
ロケットの第1段は3分42秒後に燃焼を終えて分離、その2秒後には第2段に点火、続いてフェアリングを分離した。離昇から8分11秒後に第2段の燃焼が終了。第2段と衛星を模した重りは結合されたまま放物線を描いて落下を始め、離昇から21分後に、プレセツク宇宙基地から約5,700km離れた、カムチャツカ半島にあるクラー試験場に予定通り着弾した。
今回の打ち上げはアンガラロケットにとって初めての打ち上げとなった。アンガラはフルーニチェフ社が開発したロケットで、現在運用されているロコットやプロトン、ゼニートといったロケットの後継機になる予定だ。
今回使われた機体はアンガラ1.2PPと呼ばれ、何種類かあるアンガラ・シリーズ中でもっとも打ち上げ能力が小さい構成だ。PPとはロシア語で「初打ち上げ」を意味するПервого Пускаの頭文字から取られた。
また今回、第2段には、通常のアンガラ1.2で使われるブロックIではなく、URM-2と呼ばれる、アンガラA3やA5などのより大きな構成で使われるものが搭載されている。その理由については明らかにされていないが、おそらくURM-2の飛行データを取りたいのではないか。したがって今回のアンガラ1.2は、試験打ち上げ用の特別仕様機であり、今後この姿を見ることはないだろう。
アンガラという名前は、ロシア中東部を流れるアンガラ川に由来している。アンガラ川は総延長が1,779kmもあり、日本一長い川である信濃川の実に5倍近い長さを持つ。そして名は体を表すかのごとく、アンガラロケットの開発もまた、長きに渡るものになった。
ソ連時代に開発されたロケットは、現在のウクライナとなる地域で、いくつかの部品の生産を行っていた。そのため1991年のソ連崩壊後は、ロシアがウクライナから購入することで、なんとかロケットや宇宙船の運用を続けてきている。だが、こうした他国に依存する体制は良いとは言えず、実際ウクライナはロシアに対して、そうした部品の金額を吊り上げるようになってきた。そこでロシアではソユーズロケットの電子機器をロシア製にしたソユーズ2や、同じくプロトンロケットの電子機器をロシア製にしたプロトンMなどを開発したが、エンジン以外はウクライナで製造されるゼニートではそうした小細工も効かず、またそもそも各ロケットの設計が古く、まったく新しい新世代のロケットも求められていた。
ロシアが独自に運用できるロケットを開発するとの決定が下されたのは意外に早く1992年のことであった。この年の9月15日に、ロシア政府はアンガラ開発の決定を下している。1994年8月12日には開発業者にフルーニチェフ社が選ばれた。
1999年のパリ航空ショーには、フルーニチェフ社はアンガラの実物大モックアップを持ち込んで展示し、2001年にはRD-191ロケットエンジンの初の燃焼試験も行われたが、資金難と技術力の低迷から、実際のところ計画はほとんど進んでいなかった。
2004年には開発資金を得るため韓国に接近、アンガラを基に、羅老ロケット(KSLV-1)の第1段を製造し、供給した。羅老は3機が造られ、1号機と2号機は失敗に終わり、最後の3号機で成功している。また2回の失敗も、1号機においては第1段は正常に飛行したため、つまりアンガラはアンガラとして打ち上げられたことはないが、第1段に限っては羅老を通じて3度の飛行経験と、2度の成功経験があることになる。
またロシア経済の回復も手伝い、2000年代後半になってようやく開発は本格化した。ここにきても、まだ毎年1年ずつデビューが先送りされるような有様ではあったが、ようやく今回、打ち上げにこぎつけることができた。
アンガラはモジュール式であることを最大の特長で、ユニバーサル・ロケット・モジュール(URM-1)と呼ばれるアンガラの第1段を何基も束ねたり、あるいは第2段(URM-2)を共有しつつ第3段を追加したりすることで、打ち上げ能力が様々なロケットを簡単に構築でき、多種多様な大きさ、質量の人工衛星の打ち上げに対応できる仕組みになっている。言い換えれば、アンガラと名の付くロケットは、小型ロケットであり、中型ロケットでもあり、また大型ロケットでもあり、そして超大型ロケットにもなれるというわけだ。これによりロコット、ゼニート、プロトンといったロケットを代替することが目指されている。また第1段、第2段にはケロシンと液体酸素の組み合わせを使用するエンジンを装備しており、毒性の高い推進剤を使うロコットやプロトンよりも、環境や人体に優しいという利点も持つ。
アンガラ・シリーズの中でもっとも打ち上げ能力が小さいのはアンガラ1.2と呼ばれる構成で、地球低軌道(高度200km、軌道傾斜角63.1度、以下同)の軌道に3.8tの衛星を投入することができる。またかつては、第2段にブリーズKMを搭載した、さらに打ち上げ能力が小さいアンガラ1.1と呼ばれる構成も提案されていたが、現在では中止されている。
次に打ち上げ能力が大きいのはアンガラA3で、こちらは地球低軌道に14.6t、静止トランスファー軌道(近地点高度5,500km、軌道傾斜角25度、以下同)には、ブリーズMを搭載した場合2.4t、KVTKと呼ばれる新開発の上段であれば3.6tの衛星を投入できる。
さらに大きなアンガラA5では低軌道に24.5t、静止トランスファー軌道には最大7.5t、そして最強型アンガラA7では低軌道に35t、静止軌道には7.6tの衛星を直接投入することも可能だ。また有人宇宙船打ち上げ用に改修が施された、アンガラA5Pの開発も行われている。これらはプレセツク宇宙基地の他、ゆくゆくは極東に建設中のヴォストーチヌィ宇宙基地からも打ち上げられる予定だ。
今回のアンガラ1.2PPの打ち上げは、あくまで試験であったため、衛星を軌道に投入することはせず、弾道ミサイルの発射試験と同じような経路での飛行であった。したがって、厳密には衛星打ち上げロケットとしての性能が証明されたわけではない。また、昨今のプロトンの打ち上げ失敗などからするに、今度アンガラの運用が無事に軌道に乗るかもまだ未知数だ。
それでも、ロシアが自力で設計して開発したロケットの打ち上げに成功したことは、独自の宇宙アクセス手段を確立するための、大きな一歩となったことは間違いない。
■Министр обороны РФ генерал армии Сергей Шойгу доложил Президенту России об успешном проведении первого испытательного пуска ракеты-носителя «Ангара-1.2ПП» : Министерство обороны Российской Федерации
http://structure.mil.ru/structure/forces/cosmic/news/more.htm?id=11968384@egNews
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