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『風立ちぬ』、米専門誌で好評価 “戦争賛美”批判は筋違いとも指摘
宮崎駿監督の11番目にして最後の作品となる『風立ちぬ』が、米アカデミー賞の長編アニメーション部門にノミネートされた。宮崎監督は、『千と千尋の神隠し』で同賞を受賞している。
【物議をかもしだした問題作?】
『風立ちぬ』は、三菱A6M零戦の設計者である堀越二郎氏と、小説『風立ちぬ』の作者である堀辰夫氏の自叙伝を合わせた話である。第二次世界大戦のきっかけをつくった真珠湾攻撃で使用された零戦の設計者を描いていたため、日本で上映されると瞬く間に論争が起きた。左翼系は、軍国主義を称賛しているという非難の声をあげ、右翼系は、非国家主義的だと非難した。
また、海外でも戦争中の残虐行為が淡々と描かれていると不満を表す国もあった。韓国では、強制労働者に零戦を作らせたことを描いていないと、怒りをあらわにする向きもあったという。
しかし、革新的な戦闘機がもたらした悲しい歴史を深く掘り下げていないかもしれないが、この映画には戦時中のトラウマや生き残った者の罪悪感という、戦争の負の部分がきちんと描かれている、と評する声もある。
またある評論家は、現実世界の設定に幻想の世界を埋め込み、普遍的な理論を展開するという宮崎監督の手法には、道徳をはかる独特な尺度がある、と論じている。つまり、一般的な道徳観では理解しにくいものが存在しており、表面的な内容だけでは、論じられる作品ではないようだ。
【宮崎監督が描きたかったものとは】
本作品で宮崎監督が描きたかったのは、堀越氏が目指した美しいものをつくる、という姿勢だったと複数の映画評論家が述べている。監督自身も、戦闘機うんぬんではなく、堀越氏は美しい飛行機をつくることを目指しており、そこを描きたかったとコメントしている。
美しいものを追い求める堀越氏の姿に自分の姿を重ね合わせたのではないか、とする評論もある。多くの評論家が、農村の風景、苔に覆われた森や、水の色を丁寧に描いていると評しているように、同監督も美しさ、特に自然の美しさに重きを置いていた。
いずれの評論家も、宮崎駿監督を高く評価し、アニメーション映画にとどまらず、日本映画界の巨匠だ、と称賛している。
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