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白物家電がもたらす、日本の家電業界の未来
近頃、テレビを見ていると「家電芸人」なるタレントが活躍しているのを頻繁に見かけるようになった。家電芸人とは文字通り、おすすめの家電製品に対して熱く語る家電マニアの芸人のことだ。家電を語られて何が楽しいのかと思ってしまう人も多いだろうが、これが意外に面白い。とくに彼らが熱く語るのは、エアコンや冷蔵庫、洗濯機などのいわゆる白物家電だが、芸人の話術もさることながら、家電自体が独自の進化や工夫が凝らされていて、実に面白いのだ。
経済産業省が2013年5月に公表した「小型白物家電に関する新事業戦略研究会」報告書によると、日本の白物家電市場は約2兆5千億円、このうち、電子レンジやヘアアイロン、コーヒーメーカーなどの小型白物家電は約3千6百億円程度と見られている。景気による需要の増減は見られるものの、比較的安定した推移を見せ、テレビなどの黒物家電の低迷による家電業界の危機を下支えしているのは紛れもなくこの白物家電だ。
昨今、日本の家電メーカーは積極的に白物家電事業の拡大に取り組んでいるが、中でも熱心なのがこれまで薄型テレビをコア事業に掲げてきて、度重なるテレビ市場の不況をもろに食らったパナソニック<6752>とシャープ<6753>の2社だ。
パナソニックでは、これまでにも度々、同社の技術開発によって世界初、業界初となる白物家電を送り出してきた。例えば、斜めドラム洗濯機にヒートポンプ技術を採用したのもパナソニックが最初だし、コンプレッサーを小型化し冷蔵庫上部に配したトップユニット方式の冷蔵庫を考案したのもパナソニックだ。今では当たり前となった省エネ家電にもいち早く取り組んだのも同社で、09年からは家電が自分でエコするエコナビ機能を搭載したり、12年にはスマホと連動するスマート家電など、意欲的な製品を世に送り出している。
白物家電市場が比較的安定している理由は大きく二つ考えられる。1つは多様化による新市場の開拓が容易であることだ。その典型的なものが、美容分野の商品だ。最近では女性だけでなく男性も、美容やアンチエイジングに関心を見せる傾向が強く、この分野でもまだまだ伸びシロがあると考えられる。黒物家電には、その柔軟性はない。
2つめは、機能追求することで既存市場の活性化を図れることだ。アイデアと工夫する技術があれば、これらの市場を成長させ、高収益を確保できる。日本の家電市場はこれまでも、そうやって成長を遂げてきた。日本人の得意分野ともいえるだろう。
そして今、もう1つの大きな動きが「海外進出」だ。欧米諸国への日本家電の普及率は意外にもそれほど高くはない。その原因は、これまで現地ブランドが強かったからだ。しかし、世界的な不況などもあり、現地メーカーの支配力が弱まってきている。そこに、日本製品の付け入る隙が見えてきた。黒物家電や自動車などで培った、メイドインジャパンの信頼が今、白物家電で活かされようとしているのだ。
欧州ではすでにサムスン電子などの韓国企業も積極的に売り込みを行っているが、パナソニックでは競合するとの認識はないという。パナソニックの製品は、かの地では高品質で知られていることもあり、高収入層に顧客ターゲットを置いている。対するサムスンは、ミドルレンジの安価な商品を展開しており、同じ家電でも市場が異なるのだ。また、欧州だけでなく、中国やインド、インドネシア、ベトナム等、アジア新興国の白物家電市場も急速に拡大しており、今後の重要なマーケットに成長することが期待されている。
日本の電化製品は度々、ガラパゴス化などと揶揄されることがある。しかし、ガラパゴス化は何も悪いことや恥ずかしいことではなく、創意工夫を凝らす日本人の長所ともいえる。日本人の生活に根ざした商品開発の結果がガラパゴスなのだ。そして今、家電芸人というアナログなマーケティングも手伝って、白物家電が大きく注目されている。とくに今年と来年は、消費税率の引き上げもあいまって、買い替え需要も促進されることだろう。
また、昨今の世界の家電業界は中国や韓国企業の台頭が目覚しいが、日本の家電製品が日本国内のみならず、海外でもその国々の生活に根ざしてガラパゴス化を果たせば、シェアを獲得することは容易だろう。家電業界の未来には、少し明るい兆しが見えはじめているのではないだろうか。(編集担当:石井絢子)
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