【東京五輪】招致委員会の“3兆円効果”は言い過ぎ?

2013年9月13日 10:02

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記事提供元:フィスコ


*10:02JST 【東京五輪】招致委員会の“3兆円効果”は言い過ぎ?
2020年夏季五輪大会の開催地に東京が選ばれた。安倍首相自らがブエノスアイレスに乗り込んでの招致合戦となったが、トルコとの決選投票の末、1964年以来およそ半世紀ぶりの東京五輪が実現した。

ちなみに1964年の東京五輪が決まったのは1959年で、当時の首相は安倍総理の祖父に当たる岸信介氏だった。当時の日本の経済は2ケタ成長を謳歌しており、岸首相の後継者、池田勇人氏は10年で所得を倍増させる計画を発表。実際には6年で所得倍増を達成するという高度成長期の真っ只中だった。

一方、2020年の東京五輪は“コンパクトさ”に重心を置いているとあり、経済効果は1964年とは比べ物にならないとも。野村證券の資産によると、1964年の五輪関連支出は当時の国内総生産(GDP)の3.6%だったが、2020年までの7年間の支出はGDPの1%に満たない見込みだという。

東京五輪招致委員会が発表した経済効果は、2013年から20年までの8年間で生産誘発額が約3兆円。付加価値誘発額が1.4兆円、雇用者所得誘発額は約7500億円となっている。3兆円どころか、10兆円は行くとの強気論者もいる。

先進国で開催される五輪大会の経済効果として、2012年に開催されたロンドン大会が日本にとって参考になる。英国貿易投資総省(UKTI)がまとめた報告書によると、2012年大会がもたらした経済効果は99億ポンド(約1兆2800億円=為替レートは2012年)に到達。また、UKTIが招致した海外直接投資(FDI)の流入で、五輪開催以降、約3万1000人の追加雇用が生み出されたとも指摘された。

五輪が開催された歴史をひも解くと、大会は経済全体と雇用創出に一定の効果を与えていることがわかる。ノッティンガム大学ビジネススクールが2005年5月にまとめた研究リポートでは、1984年のロサンゼルス五輪以降について経済効果の推定値が列挙されている。

なお、五輪経済効果についての研究は、政府の公式統計ではなく民間の仕事に頼る部分が大きい。このため、経済効果の算出方法など、細部では各大会によって差異が出ている。以下に1984年ロサンゼルス大会以降の経済効果と雇用創出の推計値を列挙するが、複数の民間調査によって経済効果や雇用の推定値に幅が生じる場合は最大値を採用した。ドル・円の為替レートは各大会の開催年の平均を利用。

1984年、ロサンゼルス五輪
【経済効果】23億米ドル(約5500億円)
【雇用創出】7万3375人

1988年、ソウル五輪
【経済効果】16億米ドル(約2060億円)
【雇用創出】33万6000人

1992年、バルセロナ五輪
【経済効果】直接経済効果として3000万米ドル(約38億円)
【雇用創出】29万6640人

1996年、アトランタ五輪
【経済効果】51億米ドル(約5600億円)
【雇用創出】7万7026人

2000年、シドニー五輪
【経済効果】51億米ドル(KPMG試算、約5500億円)
【雇用創出】15万6198人(KPMG試算)

2004年、アテネ五輪
【経済効果】102億米ドル(約1兆1100億円)
【雇用創出】44万5000人

繰り返しになるが、上記の数字は複数の公的・民間機関の研究が混ざっており、推計値にはバラツキがある。また、為替要因や推計の対象期間なども影響しており、あくまで“おおまかな数字の把握”にしかならない。ただ、これらから五輪効果は総じて数千億から1兆円程度の経済効果を持つと理解することができよう。この流れだと、20年東京五輪の「3兆円効果」はやや過大にも見えてくる。

最後に、五輪効果の持続性について。オックスフォード・エコノミクスでは、2012年ロンドン五輪の17年までの経済波及効果は165億ポンド(約2兆6000億円)に達すると試算。特に他国への五輪誘致を支援するサービス契約が、英国企業の間で増えているという。また、雇用関連では12年から15年の間に1万7900人の雇用が生み出されると見通されている。《RS》

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