政治の季節を前にアベノミクスの賃上げ協力銘柄は株上げ協力銘柄でリスタートは秒読み=浅妻昭治

2013年5月20日 09:39

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

  5月も半ばを過ぎ、いよいよ6月、「政治の季節」の到来目前となっている。7月の参議院選挙の前哨戦と位置付けられる東京都議会議員選挙が、6月14日に告示され、23日に投票日を迎えるからだ。前回の2009年の東京都議員選挙では、自民党が、民主党に敗退して第一党から滑り落ち、次の国政選挙での「政権交代」ムードがさらに盛り上がって、8月の衆議院議員選挙では、本当に自民党が惨敗、民主党が大勝して「政権交代」の一敗地にまみれた。

  都議会議員選挙後に当時の石原慎太郎都知事が、「衆議院選挙の前相撲をとらされて、大迷惑な結果となった」と辛らつなコメントを明らかにしたが、今回は、「木から落ちた議員」たちが、この落下の恐怖、失権の二の舞を踏まないためにも、政権与党の政権運営には、最大限の事前運動が続く。

  安倍晋三首相は、5月17日の講演で「アベノミクス」の効果の自己採点と第二弾の発動を明らかにしたが、歴史認識と憲法改正とが、今後の内外の進展状況次第では、政権のアキレス腱にならないとも限らないだけに、経済政策のウエートは増し、デフレ不況脱却、経済政策の積極化が、次の東京都議会議員選挙、参議院選挙の争点になるとのスタンスを鮮明にした。成長戦略の第2弾として企業の設備投資の喚起策と、農家所得を10年間で倍増させる農の業成長産業化を打ち出すとともに、衆議院・参議院の多数派が異なる「ねじれ国会」を解消する政治の安定化が、「強い経済を取り戻す」大前提だと訴えた。

  政治ジャーナリズムによれば、これは都議会選挙、参議院選挙を前にした企業関係者と農家という大票田のいわば固定票固めというところらしく、となればこれに続いては、選挙の結果を大きく左右する浮動票の取り込みを図る政策アピールは欠かせないことになる。株価の上昇に伴う資産効果、高額商品の販売拡大だけでは、逆に格差が拡大する富裕層向け優遇政策としてバブルを再燃させるだけとの拒否反応を心配しなくてはならなくなる。一般の家計の収入が潤い、食料品、光熱費などの輸入価格の上昇をカバーして初めて景気回復の実感が高まることになり、浮動票の投票行動を誘導できることになる。「政治の季節」を前にした今夏のボーナス・シーズンでこうした家計の収入増をアピールできれば、安倍政権の選挙対策は万全となるわけである。

  安倍首相は、今年3月の春闘を前にしても、経済団体に賃金引き上げを要請し、企業側も、ローソン <2651> を筆頭に相次いでこの要請に応えて賃金引き上げ、一時金要求の満額回答などを打ち出し政策協力を強めた。このあと企業業績は、急速な円高修正を背景に大きく回復し、さらに増益率を高めているだけに、ボーナス・シーズンを前にこの賃上げ要請の第2弾、第3弾も予想されることになる。

  そこでである。今春に賃上げ要請に応えた銘柄に再度の注目が当たり、リスタートする展開を想定したいのである。今春に賃上げを公表した主な銘柄は、ザッと15社にのぼる。この賃上げ公表銘柄は、公表日を起算日にその後の高値までの平均株価上昇率を計算すると、33.2%と同時期の日経平均株価の上昇率33.4%とほぼイーブンである。ただ個別銘柄ごとの上昇率はかなり明暗を分けており、日経平均株価の上昇率をオーバー・パフォーム(勝ち)したか、アンダー・パフォーム(負け)したかみると、意外なことに6勝9敗と負け越しとなっている。

  この勝ち越し銘柄が今後、実際の特別賞与支給などでさらに上値を追うとみて順張りを強めるか、それとも負け越し銘柄が、そのアンダー・パフォーム分を取り戻すと判断して逆張り指向するかは、個々の投資家の相場観の問題となるが、少なくとも「賃上げ協力」が「株上げ協力」につながった今春の歓迎高の再現だけは期待できるはずである。15銘柄への再アタックは、十分に有効な投資スタンスとなってくる。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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