本に載らない現場のノウハウ-中小企業の人事制度の作り方:第5回 人事制度のコンセプトを考える (3/4)

2012年8月8日 10:41

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■「人事制度のコンセプト」が考えられない理由
 ただそうは言っても、特に中小企業では、この「人事制度のコンセプト」がなかなか考えられない事態が往々にしてあります。これは経営理念や事業計画など、上位の理念や計画が抽象的だったり、もしくは無かったりして、そこから連鎖するべき「人事制度のコンセプト」が作れないという状態です。担当の方から「うちの経営者は・・・」「うちの管理職は・・・」といったお話を聞くことがあります。

 もちろん経営者や管理職が、上位の理念をみんなで共有できるように打ち出してくれるのが一番良いのでしょうが、他人に言われて「ハイそうですか」と作れるほど、そう簡単には行きません。

 そんな時どうするか・・・。
 私は「人事の理念だけでも自分たちで打ち出してしまえばよい」と言っています。経営者に話を聞くなり、提示されているものがあればそれを読み込んでみるなり、上位の理念を理解する努力をした上で、そこからのつながりで、自分たちで「人事理念」「人事制度のコンセプト」を考えれば良いということです。

 本来の順序、あるべき姿とは違っても、「人事理念」「人事制度のコンセプト」をまとめることで、“経営理念”がより明確に捉えられるようになったり、人材のタイプと事業の方向性の整合が図られたりと、全社的な認識共有が促進されたり、上位理念を見直すきっかけになったりというケースもあります。

 「うちの経営理念は抽象的でわからん」などと批判せず、今あるものをベースにまとめてみると良いと思います。

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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