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本に載らない現場のノウハウ-中小企業の人事制度の作り方:第4回 中小企業の人事制度の目的-まとめ(1/3)
今回は人事制度の目的についてのまとめとして、必要な視点や考え方についてご説明していこうと思います。
■ルールで縛らないと動かない?
私が人事制度構築や制度改訂のお話を頂く時、「誰がやっても同じになるように、できるだけ細かく詳細に作ってほしい」と依頼されることがあります。「うちのマネージャーたちは意識が低いから、制度で決めないと動けないんだよ」などとおっしゃいます。
確かに制度化する目的として「標準化」「基準作り」という要件はありますが、細かく規定すれば果たしてそれが達成されるのでしょうか。
私の経験でいえば、答えは残念ながらNoです。変化が激しい今の時代に、ビジネス上で起こり得ることを、すべてパターン化することは不可能だからです。
これはある大手企業でのお話ですが、「公正な評価のためには仕事内容を具体的で詳細に記述した職務基準書が必要である」との考えのもと、社内で詳細な職務調査を実施し、全精力を傾けて職務基準書の整備を行ったそうです。ドキュメントの量も膨大になり、結果として3年近くの歳月を要してようやく日の目を見たそうですが、実際に使おうとすると、組織変更やシステム変更で仕事のやり方が変わっていたり、業務自体が無くなっていたり、新たな仕事が増えていたりと、すでに実態と乖離してしまっていたそうです。
何とか実態に合わせて職務基準書を直そうとしますが、限られた人員での作業で、なおかつドキュメント量も多いので、そう簡単にはいきません。またそうこうしているうちにも、現場の職務内容は変わっていきます。
結局その会社では、会社として普遍的と見られる職務内容についてのみ、共通理解ができる範囲で職務基準を定め、変化していく部分は制度を運用する中で、関係者同士がその都度調整していくことにしました。せっかく精力を傾けて作成した膨大な職務基準書は、あまり活かすことができない結果となってしまいました。
これは極端なケースですが、人事制度作りにおいて、このような事例は往々にしてあります。よくスポーツの世界で「個人か?組織か?」という事が言われ、結局はこのバランスが大事でどちらかに偏り過ぎてはダメだと言われますが、人事制度もこれと同じような事がいえます。
例えば野球やアメフトのように、ワンプレー毎にベンチから指示が出せるような競技であればまだしも、サッカーやラグビーのように、ゲームが始まったら多くの部分を選手自身が判断しなければならない競技では、すべてをパターン化して事前に教え込もうとしてもそれは難しいことでしょう。
業種や仕事内容によって差はありますが、ビジネスの世界では圧倒的に後者のケースが多いはずです。人事制度を作る上での認識として、こういう部分は理解しておく必要があるでしょう。
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