勢いが加速するインドの鉄鋼需要

2010年12月3日 12:00

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記事提供元:エコノミックニュース

 リーマンショックによる世界的な経済危機から抜け出し、今年に入って順調な回復を見せていた世界の鉄鋼需要。しかし、ここにきて、その拡大のスピードが少し遅くなってきているようだ。世界鉄鋼協会が10月に発表した2011年の世界の鋼材需要見通しによると、これまでの世界の鉄鋼需要を先頭になって引っ張ってきた最大市場の中国でさえ、前年予想比3.5%増の5億9900万トンになり、伸び率は2010年予想の6.7%からほぼ半減している。

 その中国から世界の鉄鋼市場においての主役の座を奪おうとしているのが、未だ前年対比で2ケタの伸び率を維持し続けている、世界第3位の鉄鋼需要国インドの存在だ。インドの鋼材消費量は09年の5530万トンから10年に6300万トン、11年には7160万トンにまで膨らみ、前年比伸び率では10年は13.7%、11年には13.9%となる見通しだ(世界鉄鋼協会「世界の鋼材需要見通し」より)。今後も自動車産業などによる国内需要の急増が予測され、インドの鉄鋼各社は更なる増産を計画しているという。

 そんな中、日本の大手鉄鋼メーカー各社も、成長著しいインド市場への参入に向けて本格的に動き出している。JFEスチールは、7月にインドの鉄鋼大手JSWスチールに資本参加。筆頭株主となり自動車向けなど鋼材需要が急増するインドの市場に対応する戦略を打ち出している。また、先月の29日には、住友金属工業 <5405> がインド最大の自動車用スチールホイール・メーカーであるSteel Strips Wheels社(SSWL社)に出資することを発表。さらに、その翌日の30日には、神戸製鋼所 <5406> がインド国営の鉄鋼大手スティール・オーソリティ・オブ・インディア(SAIL)と包括提携したと正式発表している。

 日本の自動車メーカー各社も国内需要が急増しているインドでの生産能力の増強を進めている中、鉄鋼メーカー各社による現地企業との相次ぐ資本提携は、急成長するインド需要のスピードに乗り遅れないためであり、大きな可能性を秘めたアジア市場において鉄鋼メーカーとしての存在感を高めていく狙いがあると考えられる。
(編集担当:北尾準)

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

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