【立教大学】初めて解明!東京都23区内に所在する災害用井戸制度の発達プロセス
配信日時: 2026-06-19 17:20:59

立教大学(東京都豊島区、総長:西原廉太)環境学部の遠藤崇浩教授は、日本工営株式会社基盤技術事業本部地質部、NPO法人小平井戸の会、名古屋大学工学部のメンバーと共に、東京都23区内における災害用井戸制度の発達プロセスを英文誌Frontiers in Waterに発表しました。
東京都の地下水管理の歴史に関する論考は数多く報告されていますが、いずれも工場による地下水採取といった平時の水利用に焦点を当てたものでした。これに対し本論文は非常時の水利用という全く別の視点に着眼することで、これまで未解明であった災害用井戸制度の発達プロセスを初めて明らかにしました。さらに東京都では平時の地下水利用と非常時の地下水利用の推移が、社会水文学における「振り子現象」の新たな適用事例として説明できることを示しました。
【1.発見の概要 】
都市の水政策における重要性にもかかわらず、非常時の水供給を検討した研究はごく限られています。本論文では、東京都発行の報告書やアンケート調査、東京都区部の地方議会議事録、新聞記事データベースといった多彩な資料を用いて、東京における地下水利用システムの長期的な歴史を再構築しました。
東京都では工業利用を目的とした地下水開発が活発化し、1910年代には一部地域で地盤沈下が発生していました。この問題は1950年代に入り地下水採取の法的規制と工業用水道の整備を通して鎮静化しました。しかし1960年代になると、地震リスクに対する認識が高まり、災害時の水供給を確保すべく、応急給水拠点や災害用井戸が東京全域に拡大しました。さらに近年では地球温暖化対策の一つとして地下水の熱利用への関心が高まりつつあります。
本研究は東京における人と地下水環境の相互作用のプロセスを、社会水文学の「振り子現象」の一形態として整理しました。振り子現象とはもともと社会における水の配分の変遷が農業セクターと環境セクター間の間で揺れ動く様子を説明する用語として提唱されました。これに対し本論文は地下水に対する関心が平時と有事の想定の間で揺れ動く現象にも適用できることを示しました。
【2.発見の意義 】
社会水文学(socio-hydrology)は、水分野における世界最大級の学会である国際水文科学会(International Association of Hydrological Sciences /IAHS)が推進する学術領域で、人間社会と水循環の相互作用の解明を目的にしています。しかしその研究は治水対策に偏っており、災害時に社会と水循環が織りなす他の側面、たとえば災害時の水供給などの課題は見落とされてきました。本研究は非常時の地下水利用という新たな視点を取り入れつつ、東京都における地下水利用の変遷を再構築し、社会水文学の研究分野に災害時の水供給という新たな研究領域があることを提示しました。さらに本研究は東京都という世界最大級のメガシティにおける災害用井戸制度の詳細を説明することで、地下水が産業資源のみならず減災資源としての機能を持つことを示しました。
【3.今後の展望 】
災害とそれに続く断水は、被災者の生活の質を著しく低下させるだけでなく、迅速な復興の妨げになります。これまで国を始めとする公共部門は水道施設の耐震化や多重化といったハードなインフラ整備に加え、自治体間プッシュ支援の充実といったソフトな制度作りに力を注いできました。これに対して災害用井戸は地域にある様々な私有井戸(一般家庭、工場、商業施設などの井戸)を断水被害の軽減に活用する共助の取り組みで、いわば民間部門主導の対策と位置付けられています。今後は災害時の断水被害をさらに軽減すべく、これら公共部門と民間部門の連携のありかたについて考察する必要があります。
【4.謝辞 】
本研究は公益財団法人旭硝子財団2024年度サステイナブルな未来への研究助成「災害用井戸の研究-日本の応急給水政策の拡充に向けて-」の一部として行われました。ここに記して感謝申し上げます。
【5.論文掲載情報 】
本研究論文は、2026年5月28日、英文誌「Frontiers in Water」に受理され刊行されました。
■掲載論文題名:
Socio-hydrological analysis of disaster emergency wells in Tokyo: a novel application of the pendulum-swing framework
■DOI : 10.3389/frwa.2026.1777830
■掲載誌:Frontiers in Water(刊行済)
■著 者:
Takahiro Endo, Masahiro Takahashi, Naoki Kohara, Takashi Kaneko, Shinichiro Nakamura
▼本件に関する問い合わせ先
立教学院企画部広報課
メール:koho@rikkyo.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/
プレスリリース情報提供元:Digital PR Platform
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