シュローダー 2025年市場見通し グローバル債券
配信日時: 2024-12-13 13:36:12
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当レポートでは、シュローダー・グループの3人の債券運用スペシャリストが、2025年のグローバル債券市場、クレジット市場、エマージング債券市場の見通しをご紹介します。
現在のグローバル債券市場は、魅力的なインカムゲインを創出する投資機会が多く存在しており、分散投資を通じてポートフォリオの下方耐性を高めることが可能であると考えます。
グローバル債券市場の見通し
2024年は市場を揺るがすイベントが数多く発生しましたが、2025年の市場のダイナミクスは大きく変化しないでしょう。つまり、マクロ経済ファンダメンタルズ、およびファンダメンタルズに影響を与えうる政策変更の影響が引き続き極めて重要となる投資環境が続くと考えます。
来年初に予定されている米国の政権移行が市場に対して大きな影響を与え得ることは疑いの余地がありません。しかし、欧州、英国、中国における財政政策の行方も、経済サイクル全体の形成および金融政策運営に対して重要な意味を持つでしょう。
上述のファクターは、景気サイクルおよび利回りの観点から、債券投資環境に追い風をもたらす可能性が高いと言えます。債券は、魅力的なインカム創出期待の観点だけでなく、(利回り低下による)価格上昇期待、および景気循環性が高い資産に対する分散効果を発揮する資産クラスとして、投資家のポートフォリオにおける役割が高まると考えます。
ここで、米国大統領選を終えたばかりの米国経済について触れたいと思います。選挙前の時点で経済は堅調、インフレ率は改善(≒中央銀行の目標物価を上回るインフレが改善傾向)しており、労働市場は均衡状態に近い状態となっていました。マクロ経済全体も均衡状態に戻り、市場では経済の「ソフトランディング(経済成長は鈍化するものの後退はせずインフレ圧力も緩やかとなる経済状態)」のシナリオがコンセンサスとなっていました。2025年を迎えるにあたり、「このモメンタムは維持されうるのか?」という点が分析事項と言えます。
現時点では、今後の政策面における高い不確実性が存在しています。米国トランプ新政権が実行する可能性がある不法移民の強制送還、財政出動、企業に対する規制緩和、通商政策における関税の引き上げ等が、現状のモメンタムを変えうるファクターと言えるでしょう。
このようなファクターは、これまで進んできたコアインフレ率の改善を停止させる可能性があり、結果として米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に開始した利下げサイクルが市場予想よりも早く終了する可能性が高まっています。これは換言すると、「ノーランディング(インフレ率が高止まりし、政策金利が長期に高止まりを強いられる経済状態)」のシナリオが発現する可能性が高まるということですが、これは運用チームのメインシナリオではありません。
加えて、トランプ新政権が経済成長に与えうるインパクトはそれほど明確とは言えません。上述の通り、既に経済は極めて良好と言えます。今後更に良好な環境が訪れる可能性はあるものの、既に発射台が高い位置にあることは無視できません。新政権の施策は、インフラ、教育、ヘルスケア等の分野に対する賢明な投資活動の実施を含み、経済成長、雇用創出、および公的資金を国民の利益を最大化する形で活用すること繋がる期待が高まります。しかし、厳格な移民政策による働き手の減少や、関税引き上げが経済成長の阻害を引き起こす等の懸念も残ります。
政策の実現スピード、規模、そして政策実行の順序が市場の方向性を決定する上で極めて重要になるでしょう。運用チームでは、「ノーランディング」の実現可能性が高まっていると考えていますが、投資の観点では、現在債券自体のバリュエーションが改善し、利回りを通じたクッション効果が期待できる環境にあると考えます。
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加えて、政策金利が低下傾向となることにより、過去数年にわたり債券投資に対して強い逆風となっていたネガティブ・キャリー(債券利回りが資金調達コストを下回る状態)がほぼ解消している点は、債券投資への強力な追い風となっています。
また、インフレ率の低下に伴い、債券は景気循環性の高い資産クラスが軟調となる環境において効率的なヘッジ手段を提供することが期待され、分散ポートフォリオ構築の上での債券の役割向上が考えられます。債券のバリュエーションはその他資産対比で割安とみており、現在の債券利回りは益回り対比で高い水準にあります。
このような環境において、債券はインカム創出手段の提供と分散効果という2つの役割が期待できる資産クラスであると言えます。
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その他地域に目を向けると、貿易環境の悪化が中国と欧州の産業セクター主導の景気悪化を助長させる可能性があるでしょう。もし、サービス・セクターにおいて更なる減速の兆候が見られた場合、これらを相殺するためにより積極的な政策支援が必要になる可能性があります。財政出動に対して消極的となれば、金融緩和がより求められることとなるでしょう。
現状、中国・欧州の両地域においても政策反応は鈍いものとなっています。しかし今後ドイツで予定されている選挙を契機に欧州における財政政策の役割が大きく見直される可能性は残ります。
英国でも、労働党主導の予算編成を中心とした政策運営に大きな注目が集まっています。予期せぬ積極的な財政拡張方針は中央銀行であるイングランド銀行の政策運営をより複雑なものとし、インフレ率が中央銀行の目標値まで低下する道筋および時期が先送りとなる可能性を高めます。とはいえ、既に市場では織り込みが進んでおり、利下げ観測は直近大幅に後退しています。投資家視点では、マクロ経済環境が不安定な中で、英国債の妙味は高まっているとも言えます。
このような財政政策の相違は、債券、通貨、およびアセットアロケーションにおいて相対的な価値創出の機会が増えることに繋がりますが、相対価値の投資機会を捉え超過収益を獲得するためには、より柔軟で機動的なアプローチが求められます。
クレジット資産全般には警戒感も、証券化商品には投資機会
2024年は、妥当と言えるバリュエーション、経済成長期待、中央銀行の利下げサイクル入りの3点が出発点となり、社債市場のような景気循環性の高い資産クラスにとっては良好な投資環境となりました。パフォーマンスは良好であり、社債市場では特にハイイールド(HY)市場のパフォーマンスが堅調となりました。
2024年を通じて、投資家はクレジット・スプレッドの縮小を目の当たりにしました。米国投資適格(IG)社債市場やHY市場を含む多くの市場において、現在のスプレッド水準はパンデミック以来最も縮小した水準にあります。これは、投資家が自信を深め、よりリスクの高い資産クラスへの投資に積極的になっていることを示唆しています。直近のスプレッド縮小は、堅調な経済成長、債券資産クラスへの需要、そして今後の経済環境に対する楽観の組み合わせによって起きたと言えます。
運用チームでは、2025年も堅調なクレジット・ファンダメンタルズが持続すると考えます。名目利回りの上昇とイールドカーブのスティープ化が重なり、クレジット資産へのインフローは持続しやすいと言えるでしょう。
バリュエーション面でも良好な環境は続くと考えられますが、スプレッドが割高な水準にあることから、今後さらなるスプレッドの縮小余地は限定的とみています。そのため、運用チームでは様々な債券セクターへの投資が可能なマルチセクター運用では、年限の短い社債を選好しています。年限が短い社債は、金利感応度が低い一方で相対的に高いインカム獲得が見込めるためです。
業種セクター別に市場を見ると、銀行セクターに妙味があると考えます。理由は、当セクターのバリュエーションが産業セクター対比で妙味があることに注目していることに加え、財務ファンダメンタルズは依然強固であり、市場におけるイールドカーブのスティープ化が銀行の収益改善に寄与すると考えるためです。
エージェンシーMBS市場などの証券化商品市場には、魅力的な投資機会が存在すると考えます。バリュエーションは過去水準対比で見ても魅力的な水準にあり、米国の規制緩和が進み、米国銀行が証券化商品を保有することが容易になっており、当市場への需要も増加する可能性が高いと考えます。
加えて、FRBが政策金利を引き下げるにつれて、7兆米ドルという記録的な水準にまで到達した米国のマネー・マーケット・ファンド(MMF)残高の一部が、証券化商品市場に流入することも予想されます。運用チームでは、当資産の価格上昇期待が大きい一方、個別要因の価格下落リスクは相対的に低位と考えており、アセット・アロケーションの中で好ましい選択肢だと認識しています。
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最後に、現在の市場環境では、ポートフォリオにおいて一定程度の流動性を確保しておくことが賢明であると考えます。クレジット市場においてバリュエーションが史上最も割高な水準にある中、政策の不確実性が極めて高くなっており、高ボラティリティ環境到来時に魅力的な投資機会が到来する可能性が高いと考えます。運用チームでは、年限の短い国債/社債、格付が高位の資産担保証券等が有力な投資対象と認識しています。
エマージング債券
2024年、エマージング債券市場は、先進国債券利回りの上昇、地政学的に不安定な状況の継続、米国大統領選挙をめぐる不確実性、中国経済成長懸念などの圧力に直面しながらも、相対的に底堅いパフォーマンスを示しました。一方、外貨建てエマージング債市場と現地通貨建てエマージング債市場のパフォーマンスを比較すると、パフォーマンスに大きな乖離が生じた1年でもありました。
外貨建てエマージング債市場は、ソブリン債市場、社債市場を問わず、堅調なリターンを創出しました。相対的に高い利回り提供する発行体(ハイイールド)の銘柄のリターンが良好だったことが背景にあります。外貨建てハイイールド・エマージング債市場は、外貨建て投資適格エマージング債市場に比べて信用格付けが低くデフォルト・リスクが高いものの、現在の市場環境ではリターンのけん引役となりました。
対照的に、2023年に堅調なパフォーマンスとなった現地通貨建てエマージング債市場は、エマージング通貨安と各国国債利回りの上昇、特に財政政策への懸念が投資家の投資センチメントに悪影響を与えたブラジルとメキシコの国債利回りの上昇により、大幅な調整局面を迎えました。一方、外国人投資家の現地通貨建てエマージング債への投資が既に低位であること等を考慮すると、市場の反応はやや行き過ぎの可能性があると考えられます。
2025年は、世界的な不確実性が継続し、一部の国が固有の課題を抱えているにもかかわらず、外貨建て市場ではソブリン債や社債のスプレッドの縮小トレンドが続くと予想しています。つまり、エマージング国が発行する国債と、安全資産として認識されている先進国国債の利回り格差が縮小することを見込んでおり、エマージング債券に対する投資家の確信度が高まっていることを意味しています。
この楽観的な見方の背景には、エマージング経済の成長に対する明るい兆しがあることや、多くのエマージング国において発行体の財務が健全であることがあります。また、エマージング国では外貨準備の増加が見られていることもポジティブな点と言えます。
外貨建て社債市場も、10年以上ぶりに格上げされた銘柄が格下げされた銘柄を上回り、健全なファンダメンタルズをもって2025年を迎えようとしています。同セクターは、2025年の米国経済の回復、緩和的な国際・国内資本市場環境、依然として健全な企業財務ファンダメンタルズに対する期待感に支えられ、信用状況がコロナショック以前対比でも良好にあります。デフォルト率は改善を続け、2025年には現在の3.6%、長期平均の4.4%を下回る2.7%に低下し、健全な水準となると予想されます。
一方で、トランプ次期政権は、エマージング社債市場の雲行きを不透明にしています。この環境ではセクター配分が重要であり、自動車、電気自動車バッテリー製造関連、チップメーカー、中国テック企業等は逆風を受ける可能性があります。その反面、ニアショアリング(ビジネスやサービスを近隣国に移転すること)への投資は、一部の国の企業に引き続き恩恵をもたらす可能性があると言えます。
最後に、現地通貨建てエマージング債市場は、2025年に向けて魅力的な再エントリーの機会を提供し始めていると考えます。エマージング諸国の実質利回り(インフレの影響を差し引いた各国国債利回り)は歴史的な高水準を維持しており、バリュエーションの観点からは魅力が高まっているように見えます。
現在の市場環境で第一の懸念と言えるインフレについては、特に中国発のデフレ圧力と、コモディティ市場における供給過剰が要因となり、エネルギーと農産物価格の下落が予想されます。よって、エマージング諸国のインフレ率は抑制された状態が継続すると見込まれます。次なる懸念として挙げられる一部のエマージング国における財政についても、政策金利および市場において織り込み済みと考えます。
ただし、金利については魅力的と考える一方、現地通貨建てエマージング債への投資においてもう一つの重要な要素である通貨の影響については積極的かつ機動的なヘッジが必要と考えます。エマージング通貨は米国トランプ新政権発足後の貿易戦争リスクからの影響を受けやすいと考えるためです。
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関連リンク
2025市場の見通し
https://www.schroders.com/ja-jp/jp/intermediary/insights/outlook2025/
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