うなぎの腸内環境改善による感染症の減少と成長促進

プレスリリース発表元企業:藤田医科大学

配信日時: 2023-10-04 15:00:00

腸内環境改善の医学的知見を養鰻産業へ応用

藤田医科大学(愛知県豊明市、学長:湯澤由紀夫)消化器内科学講座、医科プレ・プロバイオティクス講座は、静岡県水産・海洋技術研究所(所長:萩原快次)浜名湖分場(静岡県浜松市)、ウェルネオシュガー株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:山本貢司)、株式会社農(みのり)(本社:岡山県岡山市、代表取締役社長:朝比奈学之)と共同で、鰻(うなぎ)の腸内環境を研究し、うなぎの養殖(養鰻、ようまん)効率を向上させる技術の一部を開発しました。本技術により、これまで課題であった養殖うなぎの感染症の罹患率低下および効率的な成長の促進が可能になります。この研究結果は、当該グループでの特許申請済の技術であり、今後は、様々な学会や専門研究雑誌での発表を予定しています。


■研究方法・成果
今回、同研究グループがうなぎの腸内を調べたところ、健康なうなぎの腸内にもEdwardsiella(エドワジエラ)注1が存在することを確認。ヒトにおいて様々な医学的疾患改善が報告されているプレバイオティクスであるケストースをうなぎに投与すると、エドワジエラをはじめとする腸内に存在する感染症関連菌が減少することがわかりました。詳細なメカニズムを調べたところ、腸内の有害菌を減らす代謝物である酢酸を大量に生成するRomboutsia(ロンバウツィア)注2という菌がケストースを分解し、増殖していることを確認。さらに研究を進めると、腸内環境が改善されたうなぎは、改善されていないうなぎと比較して、同じ量のエサでも成長量が増えることがわかりました。
現在、同研究グループでは、静岡県内の複数の養鰻会社と協力し、実際の養殖現場においてどのような効果を発揮するかという実用化試験を行っています。また、静岡県と協力し「腸活うなぎ」としてブランド化を進めていきます。将来的には、うなぎだけでなく複数の魚種に対し検討を行い、効率的な養殖技術の開発へつなげていく予定です。


■養鰻産業の課題
養殖のうなぎは一定の割合で感染症にかかってしまい死亡することがわかっています。特に有名なのは、エドワジエラという感染症の病原菌で、エドワジエラが増えると腸をはじめとする消化器官で炎症が発生し、多くの場合死に至ります。感染症罹患うなぎの被害推定総額は10億円以上にものぼると推定されていることから、生産コストの節減対応策として、感染症に罹患するうなぎの被害を最小限に食い止めることが課題とされています。また、近年では稚魚の漁獲量減少による稚魚価格、輸送コスト、エサ代の高騰が重なり、流通するうなぎの価格は年々高騰しており、効率的な養鰻技術の開発が求められています。


■腸内フローラの働きと医学的治療を組み合わせた新治療法の開発をめざして
これまでの様々な研究で、腸内細菌叢(腸内フローラ)に代表される細菌叢は、健康と密接に関係しており、細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)が 、炎症性腸疾患、癌、糖尿病、動脈硬化症、リウマチ、アレルギー疾患、パーキンソン病、うつ病など、様々な疾病に関連してくることが明らかになっています
藤田医科大学 医科プレ・プロバイオティクス講座では、ディスバイオシス改善が疾病やQOL(生活の質)にどのような効果をもたらすかを調査・研究。プレバイオティクス注3・プロバイオティクス注4を組み合わせた本学オリジナルのシンバイオティクス注5を開発し、疾患に応じた治療メソッドの確立にも着手しています。
これらの研究を通じてヒトのヘルスケアを改善し、QOLの向上へ貢献できる新治療法の開発をめざしています。


≪用語説明≫
注1)Edwardsiella(エドワジエラ):
うなぎのパラコロ病の原因菌。感染すると外部所見はひれや体表の発赤、肝臓や腎臓の腫大に伴う外観の腫脹を伴い死亡する。

注2)Romboutsia(ロンバウツィア):
多糖類などの糖質を分解し酢酸をはじめとする短鎖脂肪酸を生成。抗炎症作用や代謝の向上などの機能が報告されている。

注3)プレバイオティクス:
体に存在する良い効果を発揮する菌を選択的に増やす食品成分。オリゴ糖・食物繊維など。

注4)プロバイオティクス:
体に良い効果を発揮する生きた菌。ビフィズス菌や乳酸菌など。

注5)シンバイオティクス:
プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせた食品、または同時に摂取すること 



本件に関するお問合わせ先
学校法人 藤田学園 広報部 TEL:0562-93-2868 e-mail:koho-pr@fujita-hu.ac.jp

プレスリリース情報提供元:Digital PR Platform