「便利さ」「楽しさ」「他者との交流」が求められている民間オンラインサービスの一方、行政オンラインサービスに求められているのは「個人情報保護」や「サポート体制」

プレスリリース発表元企業:国際大学グローバル・コミュニケーション・センター

配信日時: 2022-10-18 12:00:00

第二弾:デジタル社会における人々の意識を探る、全体分析編国際大学グローバル・コミュニケーション・センター、サイバーエージェント、セールスフォース・ジャパンの3者共同調査

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)のレジリエントシティ研究ラボ(東京都港区、所長:松山良一、ラボ代表:櫻井美穂子)は、株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋、東証プライム市場:証券コード4751)の官公庁・自治体への DX 推進支援を行う「デジタル・ガバメント推進室」およびセールスフォース・ジャパン(本社:東京都千代田区、代表取締役会長 兼 社長:小出 伸一、以下「セールスフォース・ジャパン」)と共に、社会のデジタル化に対する人々の意識について、全国15~80歳代までの4,128名を対象に調査し、その調査結果を踏まえて様々な統計分析および機械学習を用いた共同調査研究を実施いたしました。

全2回でお伝えする本調査発表の第一弾では、人々の社会のデジタル化に対する姿勢を「デジタル積極層」「中立層」「置き去り層」「反デジタル層」の4分類に分け調査研究を行う「意識別クラスター分析編」についてお伝えしました。
このたびの第二弾では「全体分析編」として、社会のデジタル化への意識について単純集計に基づく調査結果をお伝えいたします。



[画像1: https://prtimes.jp/i/31709/30/resize/d31709-30-51a34df2439c54777ff8-0.jpg ]

なお本調査研究は、国際大学GLOCOMの30周年記念事業の一環として実施し、サイバーエージェントは利用者にとって使いやすい行政サービスを追求する観点から、セールスフォース・ジャパンは行政が住民一人ひとりのニーズに合ったサービスを再構築するのを支援する観点から、3者共同の調査実施に至りました。


<調査結果報告イベントのご案内>
本調査の結果に基づき、「誰一人取り残されないデジタル社会」の実現に向け必要な方策について議論を交わす公開イベントを、10月31日(月)16:00~17:30にYouTubeにてライブ配信いたします。
当日は、前デジタル副大臣・衆議院議員の小林史明氏や磐梯町長の佐藤淳一氏を迎えてのパネルディスカッションを予定しております。
ライブ配信の視聴には事前申込みが必要となります。
詳細はこちら(https://peatix.com/event/3361853/view)をご覧ください


■本調査研究の目的と概要
本調査研究は、デジタル社会に対する人々の考え方やイメージ、またどのような生活の価値観がデジタル技術でサポートされてほしいかというニーズの把握を目的として、インターネット調査による結果をもとに、様々な統計分析および機械学習を用いて回答傾向の分析を行いました。分析手法の詳細は後述の注釈(※1)にて説明いたします。

意識別クラスターとして、 デジタル化の進展に対する人々の姿勢を「デジタル積極層」「中立層」「置き去り層」「反デジタル層」の4つの層(クラスター)に分類し、デジタル技術に対して各層がどのようなニーズや暮らしの価値観を持っているのかについて深掘りしました。


■調査結果から見えたトピックス:全体分析編
社会のデジタル化の有意義な点は、「いつでもどこでも自分が欲しい情報やサービスにアクセスできる」「知らなかった知識や世界に触れられる」「様々なデータがつながることで利便性が高まる」「直接人と会わなくても用事を済ませられる」。
社会のデジタル化の懸念点は、「自分の情報を盗まれるのではないかという不安がある」「何か問題が発生した時のサポート体制に不安がある」。
民間オンラインサービスと行政オンラインサービスの利用意向には明確な違いがあった。民間オンラインサービスに求められているのは「便利さ」「楽しさ」「他の人との交流」。行政オンラインサービスに求められているのは「個人情報保護」や「サポート体制」であり、「楽しさ」「他の人との交流」は行政オンラインサービスに求められていない。
「理想の暮らしと現状の暮らし」について、「防災・減災」「犯罪対策」「医療・介護」「分かりやすく使い勝手の良い行政サービス」といった項目が、理想の暮らしに関しては高く、現状の暮らしに関しては低い結果であった。
行政オンラインサービスの利用意向は高いが、サービスの改善点として「オンライン完結」が求められている。



■本調査研究の主なFINDINGS

FINDINGS1.:「いつでもどこでも自分が欲しい情報やサービスにアクセスできること」がデジタル化のメリット

社会のデジタル化の有意義な点として過半数の人が挙げたのは、「いつでもどこでも自分が欲しい情報やサービスにアクセスできる」(66.4%)、「知らなかった知識や世界に触れられる」(56.9%)、「様々なデータがつながることで利便性が高まる」(53.4%)、「直接人と会わなくても用事を済ませられる」(50.3%)、という項目だった(図)。

一方で、他の項目に比べて少なかった項目は、「生活費の節約」や「精神的な幸福度が高まる」「知らなかった人とつながりやすくなる」であった。
「幸福度=生活への満足度」はデジタル社会への意識形成に影響を与える項目であることが分かっており(第一弾リリースの意識別クラスター分析編を参照)、今後注視すべき観点だと考えられる。2021年に実施した「デジタルガバメントに関するニーズ調査」(https://www.glocom.ac.jp/activities/project/6864)(※2)では、住民の生活の価値観として、「近隣住民とのつながりやコミュニティづくり」「いいまちに住んでいる満足感」「利便性のある行政サービス」との回答項目が、自分の暮らしの状況に応じたパーソナライズサービス(オンラインサービス)の利用意向にプラスの影響を与えていることが分かった。「人とのつながり」についても、今後の社会のデジタル化において重視したい項目である。
[画像2: https://prtimes.jp/i/31709/30/resize/d31709-30-25f3f50c312e972ffafd-1.png ]

図:デジタル化の有意義な点


FINDINGS2.:情報を盗まれるのではないかという不安と、問題発生時におけるサポート体制への不安がデジタル化の大きな懸念点

社会のデジタル化の懸念点について、過半数の人が挙げたのは「自分の情報を盗まれるのではないかという不安」だった。次いで多かった回答は「何か問題が発生した時のサポート体制に不安」だった(図)。
第一弾の調査リリースにおける「意識別クラスター分析編」で、「置き去り層=デジタル化の進展にポジティブな意見を持っているがついていけていないと答えた人々」が、行政のオンラインサービスに対する改善点として「分からないことがあった場合のサポート体制」を重視していることも分かっている。利用者を多面的にサポートできる環境の構築が求められている。
[画像3: https://prtimes.jp/i/31709/30/resize/d31709-30-e970220a01aea70b85fb-2.png ]

図:デジタル化の懸念点


FINDINGS3.:民間オンラインサービスと行政オンラインサービスの利用目的は異なる

民間オンラインサービスを利用する理由および、行政オンラインサービスを利用する際に重視する目的を尋ねた。
民間・行政のオンラインサービス共に重視されている項目は、「利便性」や「使いやすさ」であった(図)。
民間と行政のオンラインサービスの利用理由や重視する目的において、回答に顕著な違いが見られたのは、「楽しいから」「他の人と交流したいから」「困ったときに丁寧にサポートしてもらえるから」「個人情報保護など安全性に信頼がおけるから」といった項目だった(民間と行政のポイントが10%以上開いたもの)。
民間オンラインサービスの利用理由で、「楽しさ」や「社会性(他の人との交流)」が重視されているのに対し、行政オンラインサービスではこれらを重視する回答は少なかった。
一方、行政オンラインサービスで重視する項目で回答の多かった「サポート体制」「個人情報保護」は、民間オンラインサービスの利用理由としては5%前後の回答に留まった。
[画像4: https://prtimes.jp/i/31709/30/resize/d31709-30-275752fdcea0e9addf74-3.png ]

図:オンラインサービスを使う理由と重視する目的(民間サービス・行政サービス別―青枠の項目が、民間サービスが行政サービスよりも10ポイント以上多く回答されたもの。緑枠の項目が、行政サービスが民間サービスよりも10ポイント以上多く回答されたもの。)


サポート体制と個人情報保護は社会のデジタル化の懸念点においてよく挙げられる項目でもある。行政のオンラインサービスは、一度間違えてしまうと元に戻れないのではないか?という不安を利用者が抱えているとも考えられ、“何かあった時に対応してもらえる”という心理的安全性が必要であることが推測できる。


FINDINGS4.:「防災・減災」「犯罪対策」「医療・介護」「分かりやすく使い勝手の良い行政サービス」に関連する項目で、“理想の暮らし”としての回答率が高く、一方で“現実の暮らし”としては満足度が低い状態

生活の価値観を探るため、同じ項目に対して、現在実現できていると思う暮らしと理想の暮らしについて尋ねた。現在実現できていると思う暮らし、理想の暮らしともに「快適な住環境」の回答が最も多かった(図)。
現実と理想の暮らしの差が開いた(現実と理想のポイントが10%以上開いたもの)のは、「犯罪から守られた安心できる毎日」「家族みんなが幸せな暮らし」「医療・介護サービスへのアクセスがしっかりしている暮らし」「防災・減災対応が十分になされている暮らし」「経済的支援による安心感のある暮らし」「信頼できる自治体に住んでいる安心感のある暮らし」「分かりやすく使い勝手の良い行政サービスのある暮らし」だった。
ここに挙げられたような生活の価値観をいかにデジタル活用でサポートできるかが、生活の満足感を上げることにつながると考えられる。
[画像5: https://prtimes.jp/i/31709/30/resize/d31709-30-be898ed273d1c96a2ca3-4.png ]

図:現実と理想の暮らし(赤下線の項目が、現実と理想のポイントが10%以上開いたもの)


FINDINGS5.:行政オンラインサービスに求める改善点は「オンライン完結」と「情報セキュリティ」

自分が住んでいる自治体の行政サービスをオンライン上で使いたいかどうか尋ねた質問では、約6割の人が「とても使いたい」「どちらかといえば使いたい」と答えた[1]。

オンラインサービスの利用意向に加えて今後充実するべき点あるいは改善点についても尋ねたところ、「オンラインで(手続きが)完結する」、「情報セキュリティ」の2つが各々約過半数の回答となり、次いで「分からないことがあった場合のサポート体制」であった(図)。

[画像6: https://prtimes.jp/i/31709/30/resize/d31709-30-43029bc634120f60eb95-5.png ]


オンラインサービスに限らず、国や自治体が提供するサービスの満足度を尋ねたところ、「とても満足している」「満足している」が合わせて23%、「普通」62%、「満足していない」「全く満足していない」が合わせて15%との結果となった[2]。

「満足していない」「全く満足していない」と回答した人を対象に、その理由について自由回答で尋ねたところ、以下のような結果となった(※3)。
[画像7: https://prtimes.jp/i/31709/30/resize/d31709-30-4a019a90ec6cc899054e-6.png ]

図:行政サービスに満足していない理由(大きな文字ほど多くの回答者が回答したもの)

[1] 「自分が住んでいる自治体の行政サービスをオンライン上で使いたいかどうか」の質問に対する単純集計結果グラフについては、GLOCOMウェブサイト(https://www.glocom.ac.jp/activities/project/8317)で公開。
[2] 「国や自治体が提供するサービスの満足度」の質問に対する単純集計結果グラフについては、GLOCOMウェブサイト(https://www.glocom.ac.jp/activities/project/8317)で公開。


最も多くの人が回答した「情報」は、「情報が遅い」「情報が多くどこを見ればよいのか分からない、たどりつけない」「情報を積極的に発信してほしい」「情報共有が不十分」「情報が少ない」「情報を見てもよく理解できない」「情報が縦割り」「情報を探しに行かないとどんなサービスがあるのかが分からない」といった文脈で言及されていた。

「対応」「手続き」「窓口」のキーワードについては、手続きがオンラインで完結しないことに起因する意見が多く寄せられた。加えて、手続きが難しい、処理状況が分からない、時間がかかるといった意見があった。デジタル化に全く対応していない、あるいはデジタル上で完結しないという、中途半端なオンラインサービスに満足していない層が一定数いることが分かった。


<行政サービスに満足していない理由(自由回答)で多く挙げられた意見>
対応:「対応が悪い、遅い」「それぞれの窓口で手続きしないといけない」「デジタル化・オンライン化に対応していない」
手続き:「二重三重の入力を要求される」「手続きの進捗状況が分からない」「窓口に行かないとできない手続きが多い」「手続きがオンラインで完結しない」「昭和の時代と手続きに変化がない」「手続きが簡単ではない、煩わしい」「手続きの時間が長い」
窓口:「窓口が一つで済まない」「窓口に行かなければ目的が済まない」「窓口での受付時間が長い」「窓口が遠い、時間が合わない」「窓口での手続きをなくしてほしい」



※1 社会のオンライン化・デジタル化の進展に対する意見を尋ねた質問(Q1)と、社会のデジタル化の有意義な点を尋ねた質問(Q3)の回答によってクラスター分けを行った。
 デジタル積極層:Q1の3つの問いに1もしくは2と回答した人からQ3の12にチェックを入れた人を除外
 置き去り層:(Q1のS1に1もしくは2と回答した人、もしくはS3に1もしくは2と回答した人)+(Q1のS2に4もしくは5と回答した人)からQ3の12にチェックを入れた人を除外
 反デジタル層:Q1のS1に4もしくは5と回答した人もしくはS3に4もしくは5と回答した人、または Q3で12にチェックを入れた人
 中立層:デジタル積極層、置き去り層、反デジタル層に入らなかった人

Q1:現在のオンライン化・デジタル化の進展についてどう思いますか。
 Q1S1:良いと思いますか
 Q1S2:自分はついていけていると思いますか
 Q1S3:関心がありますか
(選択肢リスト)
1.そう思う 2.少しそう思う 3.どちらでもない 4.そう思わない 5.全くそう思わない

Q3:社会のデジタル化に対してあなたが有意義だと思うことを教えてください。
 12. 有意義だと思うことはない

※2 2020年12月から2021年1月にかけて国際大学グローバル・コミュニケーション・センターおよび株式会社サイバーエージェントが共同で実施したデジタルガバメントに関する住民ニーズについてのアンケート調査(https://www.glocom.ac.jp/activities/project/6864)。

※3 各資料に収まりきらないデータは、国際大学GLOCOMのウェブサイト(https://www.glocom.ac.jp/activities/project/8317)で公開しております。

本調査票(インターネットパネル調査:デジタル社会意識調査)の全質問項目および回答項目の一覧情報をご要望の方には、本情報をPDF形式にてお渡しいたしますので下記「本リリースに関するお問い合わせ」の「国際大学グローバル・コミュニケーション・センター」宛にご連絡ください 。回答項目の一覧についてはご相談の上の対応となることご了承ください。


共同研究について
◆共同研究主体
・国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) レジリエントシティ研究ラボ
https://www.glocom.ac.jp/activities/project/6864
GLOCOMは国際大学付属の研究所として1991年に設立され、学際的日本研究や情報通信技術の発展・普及に根ざした情報社会の研究と実践を活動の中心におき、産官学民の結節の場として、常に新しい社会動向に関する先端研究所であることを目指す研究所です。当ラボは、持続可能な社会や街づくりを目指し、地域課題の解決策の実践や、レジリエントでスマートな街づくりのデザインについて、デジタル活用の観点から研究しています。

研究代表者:櫻井美穂子
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授/レジリエントシティ研究ラボ代表
ノルウェーにあるUniversity of AgderのDepartment of Information Systems准教授を経て2018年より現職。専門は経営情報システム学。スマートシティ、DX、レジリエンス、サスティナビリティなどをキーワードに自治体や地域コミュニティにおけるデジタル活用について研究している。Hawaii International Conference on System Sciences (2016)およびITU Kaleidoscope academic conference (2013)にて最優秀論文賞受賞。実践研究活動として、ヨーロッパ7か国の大学や自治体が参加するEU Horizon2020「Smart Mature Resilience」プロジェクトに参画。日本では、自治体や企業との協働による「災害時コミュニケーションを促進するICT利活用に関する首長研究会」や「DX街づくり/ビジネスデザイン勉強会」を主宰。


・株式会社サイバーエージェント デジタルガバメント推進室
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=24592
官公庁・自治体向けに、行政の推進するデジタル化支援全般を行う専門組織です。


・株式会社セールスフォース・ジャパン
Salesforceは顧客関係管理(CRM)のグローバルリーダーであり、あらゆる規模や業種の企業がデジタルトランスフォーメーションを行い、顧客を360度で見られるよう支援しています。公共部門においても、市民中心の行政サービスの基盤を世界で提供し、住民、行政機関、ステークホルダー、パートナーのニーズに対応し、デジタルファーストの世界において、行政機関のDXの推進を支援しています。Salesforceの詳細については、https://www.salesforce.com/jp/ をご覧ください。


調査概要
◆インターネットパネル調査
・調査主体:国際大学GLOCOM、株式会社サイバーエージェント、株式会社セールスフォース・ジャパン
・調査委託先:株式会社マクロミル
・調査時期:2022年6月24日~6月27日
・調査方法:インターネットリサーチ
・調査対象:全国15歳~89歳 4,128人(マクロミルのパネル30,875人を対象として、全国15歳~89歳の4,128人を人口構成比に基づく割当法により抽出。)

※以下内訳
15-19才:220人
20代 :466人
30代 :537人
40代 :700人
50代 :636人
60代 :598人
70代 :621人
80代 :350人

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