大麦摂取による脂質代謝改善効果には個人差 機械学習により効果が期待できる人の腸内細菌叢も明らかに

プレスリリース発表元企業:株式会社はくばく

配信日時: 2022-06-07 11:00:00

-200名規模の腸内環境コホート調査-

 穀物のリーディングカンパニー株式会社はくばく(本社:山梨県中央市、代表取締役社長:長澤 重俊)は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・アジュバント研究センターの國澤純センター長(ヘルス・メディカル連携研究センター併任)および山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座山縣然太朗教授との共同研究により、大麦摂取による脂質異常症リスク低減効果が期待できる人、期待できない人が存在する「個人差」に、腸内細菌が関係していることを明らかにしました。さらに、大麦摂取による脂質異常症リスク低減効果が得られる人を腸内細菌から予測する、機械学習を用いたモデルを構築することに成功しました。
 構築したレスポンダー予測モデルは、脂質異常症に対する大麦の効果の有無を腸内細菌の組成から事前に予測し、パーソナライズされた食事指導戦略を立てるなど新しい栄養指導方法として将来的につなげていくことが今後期待できます。
本研究成果は2022年3月24日、科学雑誌『Frontiers in Nutrition』(Front Nutr. 2022 Mar 24;9:812469)に掲載されました。




[画像1: https://prtimes.jp/i/45708/89/resize/d45708-89-e8c5ba388462e331c08b-0.jpg ]

<研究のポイント>
・大麦摂取による脂質異常症が期待できる人(レスポンダー)、期待できない人(ノンレスポンダー)の個人差には腸内細菌が関係していた。
⇒レスポンダーは腸内細菌叢の多様性が高く、8つの属の腸内細菌が特徴的であることが判明。
・レスポンダーを腸内細菌から予測した。

<研究背景と目的>
 大麦には水溶性食物繊維β-グルカン(1)が豊富に含まれており、脂質異常症などの疾病リスク低減効果があることが明らかにされてきました。しかしながら、大麦摂取による脂質異常症リスクの低減効果には個人差があることもわかっています。そこで、日常的に大麦を食べていると考えられる当社社員236名の健康診断の結果や腸内細菌叢、大麦を含む食事習慣や居住環境、疾患などのデータを調査・追跡したコホート研究のデータを用いて、脂質異常症に対する大麦摂取の影響の個人差が腸内細菌で説明できるかどうか検討することを目的としました。


<研究方法>
 精麦商品を取り扱う株式会社はくばくの社員272名を対象とし、腸内細菌叢の16S rRNA解析(2)を行い、身体測定値、血圧、生化学的マーカーなどの健康診断結果、質問票を用いた大麦の摂取量や摂取頻度および簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いた食習慣のデータを収集しました。コンプライアンスなどの理由から36名を除外した対象者236名から、40歳以上の対象者130名を抽出し、大麦の摂取が3.68 g/1000kcal超の対象者を高大麦群、それ以下の対象者を低大麦群として65名ずつに分けました。
 さらに、高大麦群のうち脂質異常症ではなかった人(※)を「大麦摂取による脂質異常症リスク低減効果に応答する人」=レスポンダーとし(22名)、脂質異常症の人をノンレスポンダー(43名)と定義しました。
※1. 血中トリグリセリド150 mg/dL未満 2. HDL-コレステロールが40 mg/dL超 3. LDL-コレステロールが120 mg/dL未満、かつ 4. 治療薬の服薬なし

<研究結果>
1.レスポンダーの腸内細菌叢の組成は特徴的であり、一部の腸内細菌が大麦摂取の脂質異常症リスク低減効果に関与している可能性が示唆
 レスポンダーとノンレスポンダーの腸内細菌叢のα多様性(3)を比較したところ、レスポンダーはノンレスポンダーに比べてα多様性の指数であるChao1が有意に高く、Shannonも高い傾向があり、レスポンダーの方が腸内細菌叢の多様性が高いことがわかりました。(図1)
 さらに、腸内細菌の相対存在比(%)はレスポンダーにおいて科レベルではBifidobacteriaceaeとRuminococcaceaeが、属レベルでは相対存在比で上位50属のうち、Bifidobacterium、Faecalibacterium、Eubacterium hallii group、Ruminococcus 1、Subdoligranulun、Ruminococcaceae UCG-013、Lachnospiraがノンレスポンダーに比べて有意に高く、Doreaは有意に低くなりました。(図2)これらの結果から、レスポンダーで特徴的だった8つの属の腸内細菌が大麦摂取の脂質異常症リスク低減効果に関与している可能性が示唆されました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/45708/89/resize/d45708-89-a0e2d53fccf32fee0b46-1.jpg ]



2.ランダムフォレスト(4)を用いた機械学習によるレスポンダー予測モデルの作成に成功
 相対存在比上位50属の腸内細菌においてレスポンダーとノンレスポンダーで腸内細菌の組成の違いが見られたことから、これら50属のデータを用いてランダムフォレストによるレスポンダー予測モデルを構築しました(AUC(5)=0.79、正解率72%)。(図3)
[画像3: https://prtimes.jp/i/45708/89/resize/d45708-89-87cb2f648a0cd65b68ed-2.jpg ]



<今後の展望>
 本研究により、大麦を摂取している人の中での脂質異常症の有無は腸内細菌によって特徴づけられていることがわかりました。また、構築したレスポンダー予測モデルを活用することで、脂質異常症に対する大麦の効果の有無を腸内細菌の組成から事前に予測し、パーソナライズされた食事指導戦略を立てるなど新しい栄養指導方法の構築につなげていくことが期待できます。本研究は横断研究という一時的なデータに基づく結果のため、今後は長期的かつ縦断的な調査を行い、さらに検証していく予定です。

【用語解説】
(1) β-グルカン:水溶性食物繊維。水に溶けてゲル状になる食物繊維。腸内環境を整える機能を持つ。
(2) 16S rRNA解析:腸内細菌が持つ16S rRNA遺伝子をPCRで増幅し、次世代シークエンサーを用いて解析する。サンプル中の細菌の種類や構成比を解析する。
(3)α多様性:ある一つの環境における種の数や均等度に基づいて計算した値で、高いほど多様性が高いことを表す。種の数をベースにして計算するChao1、数だけでなく均等度も考慮したShannonなどが用いられる。
(4)ランダムフォレスト:機械学習のアルゴリズム。カテゴリー変数の分類や連続変数の予測に用いられる。
(5)AUC:感度と特異度から算出される推定能力。最大値は1.0。



はくばくについて


[画像4: https://prtimes.jp/i/45708/89/resize/d45708-89-9725ed4c4d84b314cfcb-3.png ]

当社の社名「はくばく」は白い大麦という意味です。創業社長である祖父が「もっと麦ご飯を喜んで食べてもらいたい。」という思いから、大麦を一粒一粒半分に割って黒い筋を目立たなくした製品を開発しました。
以来、我々はくばくは穀物とともに歩み、精麦の他、雑穀、和麺、麦茶、穀粉、米を事業として手がけるようになりました。
人類を太古から支えてきた大切な「穀物」を、現代の食卓へもっと多く登場させ、もっと楽しんで食べてもらうこと。それは家族の笑顔が増えること。またそれは家族が健康になることだと考えています。これを実現するために、我々はくばくは「穀物の感動的価値を創造する」ことを社員一丸となって本気で目指して参ります。
(株式会社はくばく 代表取締役社長 長澤 重俊)

社名 : 株式会社はくばく
所在地 : 〒409-3843 山梨県中央市西花輪4629
代表 : 代表取締役社長 長澤 重俊
設立 : 昭和16年4月15日
資本金 : 98,000,000円
事業内容: 食品製造および販売
URL : https://www.hakubaku.co.jp/

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