【にじいろの食育スクール開催レポート第7弾】栄養学博士&医学博士による一般向け第7回webセミナーを開催:「ビタミンD足りてますか?」

プレスリリース発表元企業:慶應義塾大学 SFC 健康情報コンソーシアム

配信日時: 2021-10-26 14:00:00


この度、慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアム (所在地:神奈川県藤沢市 代表:中澤 仁)は、2021年9月22日(水)・25日(土)に20代以上の一般の方々を対象とした、webセミナー(zoom)の第7弾を実施しました。各回とも大人と子ども(赤ちゃん)合わせて、約20名の方々にご参加いただきました。参加後アンケートは、【初級】満足66.7%、やや満足33.3% 、【中級】満足100%という結果となりました。

●レッスン内容
ビタミンDはビタミンの中でも特殊な栄養素です。栄養素は基本的に体の中では作ることができないので常に食事から摂取する必要がありますが、ビタミンDは体の中で作ることができます。さらにビタミンDが含まれる食品はかなり限られています。今回のセミナーでは、ビタミンDが不足している日本人の現状とその対策について詳しく説明しました。さらに、本スクールのMCである本田由佳博士より、Team BONEの紹介と、その中で研究されているビタミンDのお話がありました。

●講師  
久保 佳範
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員、博士(栄養学)、順天堂大学協力研究員、国際DOHaD学会組織日本代表、 日本DOHaD学会分科会ASTRO共同代表

●概要  
レッスン7 「ビタミンD足りてますか?~知っておきたい妊娠中のビタミンD~」  
初級編
日時:9月22日(水)20:00〜21:15(食育・初心者向け)
中級編  
日時:9月25日(土)20:00〜21:15(食育・中級者向け)
費用:無料
会場:Zoom配信


1. ビタミンDのはたらき
ビタミンDを体の中に取り入れる方法は、体の中で作る、食事から摂る、サプリメントから摂る、の三通りがあります(図1)。太陽光に含まれる紫外線B波(UVB)が皮膚にあたると、コレステロールを材料としてビタミンDが合成されます。一方で食事やサプリメントに含まれるビタミンDも腸で吸収されて血液中に入ります。ビタミンDの中間体に25(OH)D (「ニジュウゴ・オー・エイチ・ディー」と読みます。25-ヒドロキシビタミンDの略です。)というものがあり、ビタミンD栄養状態を知るために最も良い指標とされており、25(OH)Dの値が30 ng/mL以上だとビタミンDが充足していると状態と言えます。25(OH)Dはすこし形を変えて活性型となります。小腸の細胞の中には、活性型ビタミンDがくっつく場所があり、ビタミンDがくっつくことでカルシウムとリンの吸収促進をします。ビタミンDが不足すると、いくらカルシウムを摂ってもカルシウム不足状態となり、くる病(小児で発症)や骨軟化症(成人で発症)という、骨が硬くならない病気になってしまいます。そのほかにも腎臓で血圧調節や、膵臓で血糖調節をするなど、ビタミンDには様々な働きがあることも分かってきました。
(図1)


[資料: https://files.value-press.com/czMjYXJ0aWNsZSM2NjAxMCMyODI4MjcjNjYwMTBfVHVwVnRqZ3pRYS5wbmc.png ]
2.日光浴でビタミンDを作るには
紫外線はビタミンDの合成に有効ですが、同時にお肌への悪影響をもたらすことでも知られています。
したがって日光浴は「ビタミンDを生成する時間」以上、「肌への悪影響が出る時間」以内で行う必要があります。国立環境研究所のサイトでは、当日のお勧めの日光時間を知ることができます(図2のQRコードを読み取ってみてください)。特に長い時間の外出、夏に海や山などに行く、屋外でスポーツをするなどの場合は紫外線対策を行ったほうがよさそうですが、冬は肌への悪影響を引き起こすまでの時間がかなり長いので、積極的な紫外線対策はする必要はなさそうです。
(図2)


[資料: https://files.value-press.com/czMjYXJ0aWNsZSM2NjAxMCMyODI4MjcjNjYwMTBfc3hXVFRvTm1lRC5wbmc.png ]
3.ビタミンD摂取量
厚生労働省の食事摂取基準2020年版によると、成人や妊娠中のお母さんのビタミンD摂取量は、「目安量」として1日あたり8.5 μgに設定されています(図3)。「目安量」とは化学的根拠が不足していて推奨できる量の範囲が提示できない場合に設定される量なので、次回2025年の改定で変更される可能性があります。多くの日本人の場合摂取量が不足していると考えられるので、後述する「4.ビタミンD摂取方法」を参考に、食事から積極的にビタミンDを摂るよう心がけてください。一方で100 μg以上のビタミンDを習慣的に摂ると、過剰摂取となり健康に影響が出る可能性があります。この量は食事では不可能に近い量なので気にする必要が無く、主にサプリメントで摂取する場合に気を付けるようにしてください。
(図3)

[資料: https://files.value-press.com/czMjYXJ0aWNsZSM2NjAxMCMyODI4MjcjNjYwMTBfc3dtSm9kbURVcy5wbmc.png ]

 
4.ビタミンDの摂取方法
ビタミンDは、食材の中では特に魚に多く含まれており、日本人はほとんどのビタミンDを魚から摂っています(1)。魚の中でも特にしろさけ(別名あきさけ)にビタミンDが多く含まれていますのでお勧めです(図4)。魚は干物やふり塩をしている物は食塩を摂り過ぎてしまうので、味付けされていないものをお勧めします。魚のほかにもきのこ類、卵、牛乳にも少しだけ含まれています。
(図4)


[資料: https://files.value-press.com/czMjYXJ0aWNsZSM2NjAxMCMyODI4MjcjNjYwMTBfQ2lXSW1peXdqby5wbmc.png ]

5.妊娠とビタミンD
ビタミンDは骨の健康以外にも様々な働きがあることが明らかになってきており(図1)、妊娠中のビタミンDの欠乏や不足はお母さんご自身や生まれてくるお子さんの様々なリスクと関係しているという報告があります(2)。ところが、日本人の妊娠中の女性のビタミンD状態を調べた研究では、ビタミンD欠乏者(血中25(OH)D濃度が20ng/mL以下)の割合が4月で約9割、10月で約5割と、非常に多くの方がビタミンD欠乏状態であることが示されました(3)。したがって、ビタミンDは妊娠時に注意が必要な栄養素であると言えます。

様々な研究結果をまとめてみると、妊娠中にビタミンDをサプリメントで補給することにより、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、低出生体重児(体重が2500g未満の出生児)のリスク低減があるなど、ビタミンDには様々な効果が期待できることがわかってきました(4)。ただし、サプリメントをどのくらい摂ったらよいかはまだ明らかになっておらず、今後の研究結果に注目したいところです。

以上をまとめますと、日本人の妊娠中のお母さんの多くはビタミンDが不足しており、食事からのビタミンD摂取や適度な日光浴を積極的に行う必要があります。食事や日光浴にも限界がありますので、不足分をサプリメントで補うとよいと思います。ママと赤ちゃんの健康のためにビタミンDを気にしてみてください。ただし、ビタミンDだけとっていれば健康になれるわけではありません。主食(ごはん・パン・麺)、主菜(肉・魚・卵・大豆製品)、副菜(野菜料理)を基本にしていただければと思います(図5)。
 (図5)

[資料: https://files.value-press.com/czMjYXJ0aWNsZSM2NjAxMCMyODI4MjcjNjYwMTBfblZHQ1FQQk5rSS5wbmc.png ]

<引用文献>
(1)      Mona S Calvo. et al. J Nutr . 2005 Feb;135(2):310-6.
(2)      Elvira Larqué et al, Ann Nutr Metab . 2018;72(3):179-192. 
(3)      Kumiko T Kanatani et al, PLoS One . 2019 Mar 4;14(3):e0213264.
(4)      Cristina Palacios et al, Cochrane Database Syst Rev . 2019 26;7(7):CD008873.
 

●Team BONEのお話
本スクールのMCでもある本田由佳博士より、ビタミンDに関する活動をしているTeam BONEの紹介とそこでの研究についてご紹介いたしました。
高緯度に住んでいる人・肌の色が黒い人ほどビタミンD欠乏の割合が多いというお話、完全母乳の方や乳製品・卵の摂取不足、日光浴不足の人ほどビタミンD不足になりやすいこと、ガラス越しの日光浴ではビタミンDは生成されないので、窓を開けて赤ちゃんのお尻や脚に日光を当てていただくとよいこと、大人は両てのひらを広げた程度の面積で必要時間日光を浴びることが重要、などのお話がありました。

 
●参加者アンケートの結果
セミナーの総合満足度について、【初級】満足66.7%、やや満足33.3% 、【中級】満足100%という結果でした。いずれも参加者の方にご満足いただけたようです。

 
参加者からは下記のようなコメントをいただきました。(アンケート回答文のまま掲載)
・日本人のビタミン欠乏の多さに驚きました。
・  ビタミンDはいろんな病気と関係していることを知れてよかったです。ビタミンDの濃度を測ってみたくなりました!
・  しいたけに日光浴させるとビタミンD上昇することは驚きでした。
・ ビタミンDを摂ったほうが良いと最近耳にしていましたが具体的なことがわからないのでなぜとる必要があるのかとても関心がある内容だった。

にじいろの食育スクールは、今後も継続して、科学的根拠・データを示しながら、正しい情報をわかりやすく・楽しく解説するwebセミナーを開催してまいりますので、どうぞお気軽にご参加いただけますようお願いいたします。

●総括
日本では国民の健康のために、生涯を通じた心身の健康を支える食育が推進されています。しかし、食育基本法が施行され、本格的に食育が始まったのは2005年からであり、20代の女性は食育を十分に受けられていません。逆に言えば今からでも栄養学の基礎や科学的根拠に基づいた情報を知っておけば、食事を楽しみつつ病気になる確率も下がるので、今後の人生がHAPPYになるはずです。今後も科学的根拠に基づいた栄養学を、にじいろの食育スクールで一緒に学んでいきましょう。

●今後のウェブセミナー :お申し込みはこちらから↓
 https://forms.gle/cQdcHHoH1LYUCFFfA
●「にじいろの食育スクール」に関するプレスリリース
https://www.value-press.com/pressrelease/274592

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■主催:慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアム 
              TeamROSE・産後ママSOSプロジェクト
■共催:産科婦人科舘出張 佐藤病院
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