會澤高圧コンクリート、自己治癒コンクリート材の量産技術を確立 カプセルから粉末へ抜本改良、16日より国内生産開始

プレスリリース発表元企業:會澤高圧コンクリート株式会社、アイザワ技術研究所株式会社

配信日時: 2020-11-17 09:30:00

會澤高圧コンクリート株式会社(本社:苫小牧市、代表取締役社長:會澤 祥弘)、並びに同社のR&D部門であるアイザワ技術研究所株式会社(札幌市)は、2017年4月より、オランダのデルフト工科大学とバクテリアの代謝機能を活用した自己治癒コンクリート技術を共同開発してまいりましたが、およそ2年半に及ぶ実証試験を経て、このほどバクテリアとその餌となるポリ乳酸を配合したコンクリートの自己治癒化材料の新たな量産技術を確立いたしました。

第一弾として、年間70万立米分に相当する自己治癒コンクリートの供給を可能にするバイオマテリアル(商標:Basilisk)の製造プラントを札幌市内に設置、16日より本格稼働を開始しました。本量産技術の確立、並びに製造プラントの新設は、世界に先駆けて自己治癒コンクリートの大量供給に道を拓くものとなります。脱炭素化の流れを追い風に、当社では今後、関東圏、関西圏にも同様のプラントを追加設置し、社会インフラ関係を中心に国や自治体、建設業界等に本テクノロジーの本格採用を働きかけてまいります。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/235413/LL_img_235413_1.jpg
製造工場にて操業安全祈願祭の様子

■開発の経緯
自己治癒(Self-Healing)とは、ひび割れに代表されるコンクリートの損傷をコンクリート自体が自動的に修復してしまう機能のこと。デルフト工科大学のヘンドリック・M・ヨンカース准教授率いる研究チームは、アルカリ耐性の強いバクテリアとバクテリアの餌となるポリ乳酸をカプセル化したものをコンクリート製造時に配合、コンクリートにひび割れが生じた際に、餌を食べて炭酸カルシウムを排出するバクテリアの代謝機能を活用し、自動的にひび割れを埋めてしまうという画期的な手法を考案しました。

人体に傷が生じた場合、出血した後にかさぶたが出来て、自然と治癒します。同じようにバクテリアという生物の代謝でコンクリート表層の傷が絶えず治癒される状態をつくり出せれば、構造クラック等の遠因になる劣化因子の侵入を阻止し続け、コンクリートを実質的に永久構造物にすることができます。

当社は、デルフト工科大学が設立したバジリスク・コントラクティングBV(Basilisk Contracting BV、本社デルフト市)と同技術の国内における独占的な事業化で契約締結し、ヨンカース准教授らがプロトタイピング(試作)したバイオマテリアルをベースに、カプセルの小型化と量産技術の確立を進めてまいりました。


■プロトタイプの課題
ヨンカース准教授らのプロトタイプは、生分解性プラスチックを約80℃で溶解させて糸状に押出成形し、これに培養したバクテリアを等間隔で注入した後、2 mm程度の間隔で裁断、これらを水中で冷やして乾燥させ、カプセル化するという製法を用いました。

しかし、当社の実証実験では、(1) カプセルのサイズが大き過ぎてコンクリート内部で安定しづらい、(2) それが原因みられるコンクリート製造時のポリ乳酸の過剰分解(乳酸カルシウムの過剰生成)が生じ、小さな白い斑点がコンクリート表面に発生する、(3) 製造工程が複雑でコストが高止まりするうえ大量量産に向いていない――等々の課題が浮上、製法そのものの抜本的改良に取り組むことといたしました。

量産化のポイントは、胞子状の殻をまとって休眠しているバクテリアを、ポリ乳酸の中に極めて均等に分散させて封じ込めることにより、コンクリート混練時の高アルカリにさらされてもバクテリアが一定の生存率を保つようにすることにあります。

バクテリアの個体サイズは1.5~2.5マイクロメートルですが、培養の過程で増殖を繰り返し100マイクロメートル程度の集合体をつくります。一方のポリ乳酸は1mm程度まで事前に粉砕加工します。バクテリア集合体とポリ乳酸の粒子サイズが大きく異なることに着目。サイズの異なる粒子を極めて均等に混合して製造する化粧品や医薬品の特殊ミキシング措置に改良を加えてバイオマテリアルを製造することとし、ドイツの機械メーカーMIXACO(本社ノイエンラーデ)と装置の共同開発を開始しました。


■カプセルから粉体へ
今回開発したミキシング装置は、材料攪拌容器内を密閉して減圧した後、容器を上部に180度反転させ、内羽と外羽をインバーター制御によりそれぞれ異なる速度で回転させることが可能です。密閉減圧することで、バクテリアやポリ乳酸の各粒子にかかる重力を軽減し、材料の分散効果を飛躍的に高めました。

この間、試験製造したバイオマテリアルをデルフト工科大学に幾度となく持ち込み、バクテリアの生存率を確認しながら、最適な内羽・外羽の形状、回転数や練り混ぜ時間を絞り込み、およそ2年半かけて量産技術を確立いたしました。

今回、札幌に導入したプラントは、インバーターにより制御された内羽を1分間に2,000回転、外羽を1分間に40回転の速度で駆動させ、一度に600 kgのバイオマテリアルを5分間で製造する能力を有します。完成したバイオマテリアルはパッカーにより自動計量し袋詰めされて、使用するコンクリート工場に送られます。計量から袋詰めまでの工程は約30分。日産約10トンもの連続製造が可能となり、生コンクリートの量に換算すると約2,000立米、年間では70万立米相当分のコンクリートを自己治癒化できる計算です。


■専用サイトでコンサルを受付
本事業は、バイオマテリアルを処方することを通じて、通常のコンクリートを可能な限り自己治癒コンクリートという『インテリジェントマテリアル』(賢い素材)に転換していく取り組みであり、当社製品の自己治癒化のみならず、同業社とのコラボレーションで全国的な普及を図り、社会インフラのライフサイクルコスト削減や脱炭素化に貢献して行く狙いがあります。

ユーザー登録を終えた顧客との間で、実際に使用する物件を特定した後、場所によっては当社グループ以外のコンクリート工場を製造委託先とするケースも増えるものとみられます。全国からの問い合わせに対応できるよう商談用のBasilisk専用サイト( https://www.basilisk.co.jp )を開設し、リモート面談の予約機能やチャットボットによる顧客支援などを通じて、完全リモート型の営業手法を確立してまいります。
また、バイオマテリアルの技術を応用した液体タイプの補修材やモルタル系補修材も併せて市場に投入し、これらの補修材については、一般の消費者がサイトで注文決済できるようにします。このため、専用サイトにはECプラットフォームの「Shopify」を採用し、メーカーと顧客が直接つながり顧客の意見等を商品づくりに反映するD2C 型の事業モデルを構築してまいります。


■脱炭素を最優先に
当社の會澤 祥弘社長は、自己治癒コンクリート事業の開始にあたり、以下のコメントを発表しました。

「当社はこれまで、安全第一(Safety First)、品質第二(Quality Second)、生産第三(Products Third)という少し風変わりなモットーを掲げて来た。3 つの重要事項に敢えて序列をつけることで、判断に迷ったときの基準を社員に明確に示すためだ。自己治癒コンクリート事業の開始にあたり、約20 年ぶりにこれを見直し、3つの重要事項のさらなる上位価値として、脱炭素第一(Decarbonization First)を掲げることにした。

コンクリートの原料となるセメントを1トン生産することで排出される二酸化炭素(CO2)の量は、およそ0.8トンに達する。セメントの主原料は多量のCO2 をその中に固定化している石灰石。それらが焼成、溶融、加熱されることによって、大気中に温室効果ガスを放出する。我々の産業にとって不都合な真実だが、地球環境が悠久の時間をかけて固定化したCO2 を、文明社会はあっという間に大気に放出してしまうわけだ。

日本のセメント消費量は年間で約4,300万トンなので、年間で約3,400万トンものCO2が大気中に放出されることになる。これは国内の全産業が放出するCO2の5~7%に相当し、サプライチェーンを含めればセメント・コンクリート由来のCO2は、優に二桁に達するだろう。
文明の維持にコンクリートは欠かせない。しかし、気候変動により地球が壊れてしまったら元も子もない。将来の需要を奪うかもしれない“壊れないプロダクツ”を供給することは、どのメーカーにとっても覚悟の要ることなのだ。コンクリートの自己治癒化とは、つくっては壊しを繰り返す20 世紀モデルと決別することと同義である」


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