芸術がつなぐ台日の縁 黄土水の作品が里帰りへ
配信日時: 2020-11-04 11:49:04
日本で美術を学び、台湾から初めて日本の帝国美術院展覧会(帝展)に入選した芸術家・黄土水の作品『山本悌二郎胸像』の石膏による原作について、台北駐日経済文化代表処台湾文化センターと新潟県佐渡市在住の台湾出身の舞踊家・若林素子氏の仲介により、文化部(省)、国立台湾美術館(国美館)、佐渡市の三者が今年5月に協議書に調印し、山本悌二郎胸像を台湾に一時帰国させることに合意した。謝長廷・駐日代表は10月23日に渡辺竜五・佐渡市長を訪問し、佐渡市から黄土水の作品が台湾に里帰りすることに感謝の意を表した。
謝代表一行は渡辺市長を表敬訪問した際、佐渡市役所の職員らの熱烈な歓迎を受けた。謝代表は日本側が山本悌二郎先生の胸像の台湾への里帰り実現のために積極的にサポートしていただいたことに感謝の意を表すとともに、台湾と日本が今後、文化や観光などの交流において、より密接な協力ができるよう期待した。渡辺市長は、文化部と国美館における文化資産の保存・修復の計画や心遣いを高く評価し、今回のことが台湾とのさまざまな交流の契機となることに期待した。
台湾芸術史の再建は文化部の重要な文化プロジェクトであり、海外に点在する台湾の重要な芸術資産の里帰りを推進することにより、台湾文化の記憶のイメージを構築していく。日本統治時代における台湾美術の発展を研究している鈴木恵可氏によると、黄土水が生前に残した日本の人物の彫像作品は計4件ある。そのうち高木友枝氏の銅像と安部幸兵衛氏の胸像は彰化高校に寄贈され、残り2つの山本悌二郎氏の銅像と胸像が佐渡市に現存している。そのうち胸像については、もともと高雄の橋仔頭製糖工場に設置されていたが、第二次大戦後に日本へ移送された。今後、胸像は台湾に里帰りした後、国美館で修復し、レプリカを制作し、それを国美館に収蔵し、オリジナルを佐渡市に返却する。
黄土水は台湾の近代における重要な彫塑家であり、台湾から初めて東京美術学校(東京藝術大学の前身)で学び、在学中に『蕃童(山童吹笛)』と題する作品で台湾人として初めて帝展に入選した。その後、3回連続で帝展に入選し、その作風には彫塑の緻密な専門的技能と郷土への深い思いが見てとれる。当時の台湾と日本の芸術・文化界の逸材となり、日本の皇室や政財界からも高く評価され、人物彫像の依頼も多く受けた。『山本悌二郎胸像』もその中の一つである。山本悌二郎氏は佐渡市(旧佐渡郡)出身の政治家で、農林大臣を務めた。また、台湾製糖株式会社(台糖の前身)の設立に参与し、同社社長を務めたことから、台湾にも深い縁がある。同作品は細やかに生き生きとした表情が表現されており、黄土水の卓越した創作力が感じられる。
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