「改正動物愛護法」数値基準案が及ぼすペット業界への影響 犬の繁殖業者32.3%、猫の繁殖業者18.9%が廃業も視野 環境省令 数値基準案を受け、13万頭以上の犬・猫の譲渡が必要に

プレスリリース発表元企業:犬猫適正飼養推進協議会、一般社団法人 ペットパーク流通協会

配信日時: 2020-09-25 14:37:00

―全国の犬猫繁殖業者対象 緊急アンケート調査発表―

 犬猫適正飼養推進協議会(所在地:東京都千代田区 会長:石山 恒)と、一般社団法人 ペットパーク流通協会(所在地:埼玉県児玉郡 会長:上原 勝三)は、2020年7月10日に開催された環境省の第6回「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会(以下「検討会」)」で示された数値基準案が導入された場合のペット業界への影響を測るため、犬・猫の繁殖に従事する全国の事業者を対象に、緊急アンケートを実施し、1,113事業者の回答を得ました。

 「動物の愛護及び管理に関する法律(以下「法律」)」が2019年に改正され、動物取扱業者による適正飼養等の促進のため、環境省令で数値等をともなう遵守基準が定められます。その一つとして、動物の飼養又は保管に従事する従業者の員数について「1人当たり繁殖犬15頭、繁殖猫25頭まで」とする基準案が示されました。法律が施行される2021年6月以降、遵守基準に抵触し、事業者が改善に至らなければ、業務取消処分となり、相応の罰則が科せられることになります。

【調査結果】
●犬の繁殖業者の64.8%が、基準案(1人あたり繁殖犬15頭まで)を超過すると回答 <図1>
これらの事業者は、平均28.9頭の繁殖犬を飼養。2021年6月の法律施行時に基準案を超える13.9頭の譲渡が必要になった場合、全国で105,790頭の受入先を確保する必要があると推計。 

●猫の繁殖業者の31.7%が、基準案(1人あたり繁殖猫25頭まで)を超過すると回答 <図1>
これらの事業者は、平均42.6頭の繁殖猫を飼養。2021年6月の法律施行時に基準案を超える17.6頭の譲渡が必要になった場合、全国で25,509頭の受入先を確保する必要があると推計。 

●犬の繁殖業者32.3%、猫の繁殖業者18.9%が廃業も視野に <図2>
基準案への対応策を尋ねたところ、犬の繁殖業者の32.3%、猫の繁殖業者の18.9%が、廃業も視野に入れていると回答し、事業継続が難しいと判断していることが推測されます。この結果を、全国推計すると、廃業にともない、140,156頭の繁殖犬と、17,218頭の繁殖猫の譲渡が必要になると推計。 






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●行政の年間譲渡実績に対し、犬では6倍、猫では1倍に相当する譲渡先が必要 <図1,3>
環境省の統計「犬・猫の引取り及び処分の状況に関するデータ(2018年度)」によると、引取りされた犬のうち11,338頭が返還、16,694頭が譲渡され、猫では287頭が返還、25,347頭が譲渡されています。犬と猫を合わせて、行政による1年間の譲渡実績は42,041頭となります。2021年6月の法律施行時に、基準を超える犬猫に対し飼育禁止が命じられた場合、行政の年間譲渡実績に対し、犬では6倍、猫では1倍に相当する譲渡先(または一時的な保管先)を直ちに確保しなければならないと推計されます。






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●職員を増やすことは困難。基準案の対応策は、飼養頭数を減らす方向に <図4>

基準案を超過していると回答した事業者を対象に、対応策を尋ねたところ、昨今の雇用状況から、人を増やすことは簡単ではないことから、現実的に、頭数を減らすという対応が迫られる様子が伺えました。さらに、頭数減(収入減)と職員増(経費増)から事業収支の悪化も予見されるためか、超過していると回答した事業者の半数(犬の繁殖業者49.8%、猫の繁殖業者59.5%)が廃業も視野に入れています。 

 


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●第一種動物取扱業のうち、犬猫の繁殖に従事する事業者は、全国で12,730の施設が登録 <図5>
犬の繁殖を行う事業者は92%で、11,743施設。猫の繁殖を行う事業者は36%で、4,557施設と推計されます。




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第一種動物取扱業:動物の販売、保管、貸出、訓練、展示、競りあっせん、譲受飼養を営利目的で業として行う

第二種動物取扱業:動物の譲渡、保管、貸出、訓練、展示を非営利で業として行う


【調査概要】
調査手法:調査用紙 記入式
調査地域:全国47都道府県
調査対象:犬猫のブリーダー(ペットパーク流通協会の会員)
調査期間:2020 年7月13日~24日
回収:1,113 〔有効:1,109 犬:1,023(92%) 猫:397(36%) 無回答:4〕


改正動物愛護法「数値規制」に向けて

 環境省は、動物愛護議員連盟(超党派議連)の要望を受け、基準案を作成する要点として「悪質な事業者を排除するため、事業者に対して自治体がレッドカードを出しやすい明確な基準とする」ことを掲げています。この基準案を設定したことは、悪質な事業者が大半を占めると認識していることの証左であり、そのことを大変残念に思います。

 本アンケート結果では、従業員1人当たりが飼育できる頭数が削減されることを契機に、廃業を検討する事業者も多く存在することが明らかになりました。国内の需給バランスが崩れることで、子犬・子猫の価格が高騰する可能性もあります。

 来年の6月1日の法律施行後、法律を守るために、手元で飼い続けることができない繁殖犬と繁殖猫が一時期に13万頭以上にのぼることが明らかになりました。法律施行時に向け、業界各団体においても譲渡先、一時的な保管先について検討を続けていますが、その確保については極めて困難な状況となっています。これは、法改正に基づき  発生する問題であり、行き場を失う犬猫が生じないよう、環境省ならびに地方自治体には、事前に対応策と準備計画を提示いただきたいと考えます。

 欧州先進国では、犬ブリーダーの8割以上は、年間の譲渡しが10頭以下の小規模なホビー目的です。彼らは、 他に本業を持ち、繁殖で生計を立てているわけではありません。一方、法改正を重ね事業者への規制が強化されて きた日本ですが、2005年の法改正以降、年間2頭ないし2回以上の動物の取引は営利性があるとみなし、事業者 登録が必要という指導がされてきました。その結果、国内の小規模ブリーダーは、行政による監視指導や書類整備の煩雑さなどから、徐々に廃業して行きました。規制を強化するというお題目が、欧州先進国では主流のホビーブリーダーを消滅させたという皮肉な結果になったと思います。欧州先進国とは違った形に発達した日本の繁殖供給体制に、 欧州先進国の基準を単純に当てはめることは正しいのでしょうか? 副業で行っている欧州先進国のホビーブリーダーと違い、本業として、犬猫の世話に多くの時間を割くことができる日本のブリーダーであれば、繁殖用の犬猫を30頭程度飼育することは、十分に可能と考えます。

犬猫適正飼養推進協議会
一般社団法人 ペットパーク流通協会



出典1:SANCO 2013/12364. Study on the welfare of dogs and cats involved in commercial practices
https://ec.europa.eu/food/sites/food/files/animals/docs/aw_eu-strategy_study_dogs-cats-commercial-practices_en.pdf
出典2:改正動物愛護管理法Q&A. 大成出版, 2006年.



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