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二足歩行ロボット同士の卓球試合、外部カメラなしの完全自律で11点マッチを完走

(Hku.hk)[写真拡大]
香港大学とChaowei Motionの研究チームは、二足歩行ヒューマノイドロボット2台が、遠隔操作や人間による球出し、外部カメラを使わず、卓球の11点ゲームを自律的に完了したと発表した。チームは、ヒューマノイド同士による完全自律の卓球ゲームとして初の事例だとしている。
実証には、全身運動と機体搭載カメラによる知覚を組み合わせたシステム「SMASH 2.0」が使われた。2台はサーブと返球を繰り返し、得点を積み上げてゲームの勝敗を決めた。映像は、2026年8月22日に北京で開幕する第2回World Humanoid Robot Gamesを前に公開された。
■固定式ロボットアームとは異なる制御課題
ロボットによる卓球では、飛来する球の位置や速度を短時間で推定し、適切な位置と角度へラケットを動かす必要がある。二足歩行型の場合は、これに加えて姿勢と重心を保ちながら、脚、腰、体幹、腕、手首を連動させる全身制御が求められる。
固定台座に設置されたロボットアームは、機体全体の転倒を防ぐためのバランス制御を必要としない。一方、二足歩行ロボットは、打球位置に合わせて上半身を移動させつつ、支持脚や関節を調整し、ラケットを狙った位置へ運ばなければならない。香港大学のポスドク研究員でモーション制御を担当するYinghui Li氏は、全身のバランスを維持しながら手首とラケットを細かく調整することが、ヒューマノイドに特有の複雑な制御課題になると説明している。
SMASHは、上半身の打球動作と下半身の姿勢制御を個別に扱うのではなく、腕、体幹、脚をまとめて協調させる。これにより、体幹を使ったスマッシュや、腰と膝を曲げて低い球へ対応する動作を生成できる。
今回の対戦では、人間がロボットに返しやすい球を送る形式ではなく、2台が互いの打球に対応した。香港大学コンピューティング・データサイエンス学部のPing Luo氏は、ロボット同士の対戦では攻撃しながらゲームを継続する必要があり、要求される能力が高くなると説明している。
■機体搭載カメラで知覚を完結
SMASHは、人間の動作を基にしたモーションライブラリ、強化学習による全身コントローラー、機体搭載ハードウェアで動く知覚システムの3要素で構成される。
知覚システムでは、頭部に搭載したステレオカメラ「ZED X」が毎秒60フレームで球を撮影する。YOLOによる物体検出で球のおおまかな領域を見つけ、HSV色空間を使った画像処理で中心位置を絞り込んだ後、左右のカメラ画像から3次元位置を推定する。
下向きに取り付けた「ZED X Mini」は、卓球台に配置したAprilTagマーカーを追跡し、台に対するロボットの位置を推定する。適応型拡張カルマンフィルターがカメラから得た情報を統合し、球の速度と軌道を計算する。チームによると、一連の処理は機体に搭載されたJetson Orin上で50Hz以上で動作する。
外部のモーションキャプチャー装置やコート周辺の固定カメラに頼らず、知覚と演算を機体側で完結させる構成は、設置環境を変えて運用するうえで重要になる。SMASHについて2026年4月に公開されたプレプリントでは、機体搭載センサーだけを使った連続打球と、屋外環境での対人ラリーも報告されている。
■人間の動作を生成モデルで拡張
モーションライブラリの基礎には、モーションキャプチャー機器を装着したコーチから収集した約400件の全身打球動作が使われた。収録は1~2カ月にわたり、1日4~8時間行われたという。
実際の球は卓球台上のさまざまな位置に飛んでくるため、収録した動作だけでは必要な打点を網羅できない。そこでチームは、変分オートエンコーダーを使った生成モデル「Motion VAE」で追加の打球動作を生成した。生成後には、ロボットの関節可動域や動力学的な条件に合わない動作を取り除き、利用可能な打点の範囲を広げた。
全身コントローラーの学習には、強化学習アルゴリズムのPPOを採用した。予測した球の到達位置に近い動作をライブラリから選び、それを固定的な命令ではなく参照動作として用いる。
手首については参照動作への追従を強制せず、実際に飛んでくる球に合わせてラケットの角度と速度を調整できるようにした。体幹や脚が打球に適した一連の動作を作り、その中で手首が接触条件を微調整する構造である。
訓練時には、ロボットが対応しにくい領域を重点的に学習させる手法や、センサーのノイズ、摩擦、外乱などをシミュレーション上で変化させるドメインランダム化も使われた。こうした処理により、シミュレーションで学習した制御を実機へ移す際の環境差に対応する。
■11点ゲームを完了、次の焦点はスピン
公開された映像では、赤と青の帽子を着けた2台のロボットがサーブと返球を行い、得点を重ねている。チームは、11回連続でラリーしたという意味ではなく、サーブを交代しながら11点制のゲームを最後まで進め、勝敗を決めた点を成果としている。
一方、現在のSMASHは、トップスピン、バックスピン、サイドスピンといった球の回転を安定して識別し、それに応じた返球を行う段階には達していない。回転は飛行中の軌道や卓球台でのバウンド、ラケットに当たった後の方向に影響するため、競技性の高い対戦に向けた重要な知覚要素となる。
チームの開発計画では、SMASH 1.0で知覚から打球までの閉ループ制御を構築し、2.0で対応できる打点の拡大と自律サーブを追加した。開発中のSMASH 3.0では、スピンの検出と回転に応じた返球を主な課題に据えている。
Luo氏は、今後2~3年を見据えて、熟練した人間の選手と競える水準を目標に挙げる。卓球は、知覚、軌道予測、判断、全身運動を短い時間内に接続する必要があり、ヒューマノイドの感覚運動ループを継続的に評価する課題として位置付けられている。
■ソニーAIの「Ace」とは異なる研究課題
卓球ロボットを巡っては、ソニーAIが2026年4月、自律型システム「Ace」の研究成果を英科学誌Natureに発表した。Aceは固定式の8関節ロボットアームと複数のカメラを使い、国内大会などへの出場経験を持つ選手5人との試合で3勝した。プロ選手2人との試合には敗れたものの、そのうち1試合では1ゲームを獲得した。
Aceは高速な球やスピンを認識し、競技性の高い対人戦を行う能力に重点を置く。SMASHは現段階で競技レベルのスピン対応や打球速度を追求するよりも、二足でバランスを取りながら全身を協調させ、搭載センサーだけで対戦を継続する仕組みに重点を置いている。
両者は、知覚した球の状態を予測し、ロボットの動作へ変換する情報処理構造を共有する一方、対象とする身体構造と制御課題が異なる。固定アームと二足歩行ヒューマノイドの成果を単純な優劣として比べるのではなく、高速知覚と競技能力、全身協調と自律性という異なる方向から卓球ロボットを前進させる研究と捉えられる。
■北京大会は51種目、666チームが登録
第2回World Humanoid Robot Gamesは、2026年8月22日から26日まで、北京の国家速滑館「アイスリボン」で開催される。大会の公式案内によると、16カ国・地域から666チーム、計2,056台のロボットが登録している。
競技は30の競技系種目と21のシナリオ系種目を合わせた51種目で構成され、陸上、サッカー、重量挙げ、綱引き、卓球などのほか、工場、ホテル、家庭、物流、緊急対応といった場面を想定した課題が用意される。第1回大会の280チームから、参加チーム数は138%増加した。
卓球は今回新たに加わった競技の一つである。SMASHの実証は、機体に搭載された視覚と演算装置を使い、球の検出から動作生成、打球までを閉ループで処理できることを示す機会となった。北京大会では、実験室で個別に測られてきた知覚や運動制御が、共通の会場と競技条件の下でどこまで機能するかが試される。
■注目ポイントQ&A
●今回の実証は、これまでの卓球ロボットと何が違うのですか?
二足歩行ロボット2台が、姿勢を保ちながら全身を協調させ、機体搭載カメラだけで互いの球に対応した点です。チームは、遠隔操作や人間による球出しを使わず、サーブを含む11点ゲームを完了したと説明しています。
●外部カメラなしで、どのように球を追跡するのですか?
頭部のZED Xステレオカメラで球を検出し、画像処理とステレオ三角測量で3次元位置を求めます。別のカメラで卓球台のマーカーを読み取って自己位置を推定し、Jetson Orin上で球の速度と軌道を計算します。
●現在のシステムは球のスピンに対応していますか?
安定したスピン検出と、回転に応じた返球にはまだ対応していません。チームは、開発中のSMASH 3.0でスピンの検出とスピン適応型の返球に取り組むとしています。
●ソニーAIのAceより高性能なのですか?
単純には比較できません。Aceは固定式ロボットアームで、高速な球やスピンに対応し、人間の上級選手やプロ選手との対戦を行いました。SMASHは、二足でバランスを維持しながら全身を協調させ、搭載センサーだけでロボット同士のゲームを進めることに重点を置いています。
●北京大会はいつ開催されますか?
2026年8月22日から26日まで、北京の国家速滑館で開催されます。公式案内では、666チーム、2,056台のロボットが51種目に登録しています。
元記事: Bipedal Robots Play First Fully Autonomous Table Tennis Game Before Beijing Games
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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