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地球外生命の発見を目指すNASAの次世代望遠鏡「HWO」、実現に向けた研究プログラムが始動

(Nasa.gov)[写真拡大]
NASAは、地球外生命の存在を確かめる次世代宇宙望遠鏡「Habitable Worlds Observatory(HWO)」の実現に向け、科学的な知識のギャップを埋めるための先行研究プログラム「HWO-PSI」の資金公募を開始した。本プログラムは、望遠鏡の設計や限られた観測時間の割り当てを決める上で不可欠な取り組みとなる。研究者による必須の意向表明(NOI)は2026年9月10日、提案書の提出は同年10月26日が期限となっている。
■HWO-PSIプログラムの概要
NASAは、地球外生命が存在するかどうかという問いに答えるための具体的な一歩を踏み出した。現在の天文学と、実用に耐える生命検出望遠鏡との間にある知識のギャップを埋めるため、科学界を対象に資金提供を伴う研究公募を開始したのだ。NASAは2026年7月27日、「ROSES-2025 Amendment 68」を公開し、「宇宙・地球科学研究機会(ROSES)」の新たな助成カテゴリーとして「Habitable Worlds Observatory Precursor Science Investigations(HWO-PSI)」プログラムを設立した。必須となる意向表明(NOI)の提出期限は2026年9月10日、提案書の提出期限は2026年10月26日である。すべての提案は、申請者と査読者の双方を匿名にする査読を受ける。
HWO(Habitable Worlds Observatory)は、NASAの次期大型天体物理学ミッションである。米国の国家的な科学の優先順位を正式に示す「2020年天文学・天体物理学10年計画(Decadal Survey)」で最優先事項として推奨されており、別の惑星に存在する生命の検出を明確な目的として設計される初の宇宙望遠鏡となる。その主なミッション目標は、近隣にある太陽に似た恒星のハビタブルゾーン内で、少なくとも25個の地球型惑星を直接撮像し、その大気を分析して化学的なバイオシグネチャー(生命の兆候)を探すことだ。酸素とメタンのように、組み合わせた状態では生物学的プロセスによってのみ維持され得るガスが対象となる。今から蓄積する先行研究の成果は、望遠鏡をどのように設計するか、限られた観測時間をどのように割り当てるか、そして天文学者が検出結果にどの程度の確信を持てるかを左右する。そのため、HWO-PSIプログラムは副次的な研究ではなく、実質的にはこの望遠鏡を実現可能にする科学そのものだ。
■コロナグラフの技術的ギャップが先行研究を急務に
HWOによる生命探査を可能にする主要機器は、恒星コロナグラフである。これは望遠鏡の内部で観測対象となる恒星の光を遮り、その周囲を公転する惑星が反射する微弱な光を分離して調べられるようにする装置だ。求められる性能は極めて厳しい。地球のような惑星が反射する光は、主星の光のおよそ100億分の1にすぎない。この信号を検出するため、HWOのコロナグラフは恒星光を100億倍、科学的記数法では10^10の割合で抑制する必要がある。
これまでに製造された中で最高性能の恒星コロナグラフは、2026年8月30日に打ち上げが予定されている「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」のコロナグラフ装置(CGI)である。CGIは、HWOに向けた技術実証を明確な目的の一つとしている。HWOの技術成熟化に関する文献によると、ローマン宇宙望遠鏡のCGIは、最良の動作モードで約1億〜2億倍、すなわち10^8〜10^8.3の恒星光抑制性能を実現する。HWOには、そのさらに50倍の性能が必要だ。地上か宇宙かを問わず、既存のコロナグラフでこの性能を達成したものはない。
このギャップを埋めるには、より優れたマスク設計だけでなく、望遠鏡をどれほど精密に安定させられるかという点で飛躍的な進歩が必要となる。HWOの光学波面は、各制御サイクルを通じて10ピコメートル以内の安定性を保たなければならない。これは水素原子の直径のおよそ10分の1で、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が実証した安定性の約1000倍に相当する。HWOのコンセプト成熟化に関する論文と技術開発計画で詳述されているように、この安定性を実現するには多層的な制御アーキテクチャが必要だ。具体的には、望遠鏡を宇宙機の擾乱から物理的に切り離す防振システム、Corning ULEやSchott Zerodurのような低熱膨張ガラスセラミック製のミラー材料、ミラーセグメントの位置をリアルタイムで測定するピコメートル精度のレーザー計測器、そして毎秒最大1000回のフィードバック補正を実行できる高次波面センシング・制御ループなどが求められる。
■先行研究が望遠鏡の完成を待てない理由
HWOは、工学技術だけでは完全には解決できない「時間」という制約に直面している。すべての技術が要求性能を達成したとしても、望遠鏡の観測時間は限られており、それを限られた数の候補恒星に配分しなければならない。「HWO Target Stars and Systems 2025」の優先順位リストによると、現在、近隣にある明るく太陽に似た恒星のうち、最有力候補とみなされているのは約100個である。適切でない恒星、波長、あるいはバイオシグネチャー信号の探索に費やした時間は取り戻せない。
これが、バイオシグネチャーの偽陽性問題が科学的に緊急性を持つ理由であり、先行研究が達成すべき内容を直接左右する要因でもある。惑星の大気中から酸素のような単一のガスを検出しただけでは、生命を検出したとする信頼できる根拠にはならない。火星に似た太陽系外惑星の大気における偽陽性バイオシグネチャーの最近のモデル研究でも示されているように、酸素は特定の恒星放射環境下における二酸化炭素の光分解など、非生物学的なプロセスでも生成され、生物由来の兆候と誤認されかねない量に達する可能性がある。信頼できる主張を行うには、HWOは酸素とメタン、またはオゾンとほかの化学的非平衡の指標など、複数のガスを同時に検出し、考え得る非生物学的な説明をすべて排除する必要がある。バイオシグネチャー検出に必要なスペクトル分解能についての最近の研究で分析されているように、そのためには各観測対象を、オゾンが特徴的な痕跡を残す近紫外域から可視域、近赤外域に至る広いスペクトル範囲で観測し、すべての帯域で十分なS/N比(信号対雑音比)を同時に得られるだけの長い積分時間を確保しなければならない。
HWO-PSIが資金提供する先行研究は、望遠鏡が建造される前に、相互に関連する2つの問いに答えるよう設計されている。すなわち、「太陽系近傍で最も有望な観測対象の恒星はどれか」、そして「各恒星で信頼できる検出を実現するために、HWOは現実的にどの程度の観測時間を必要とするか」である。望遠鏡の設計が確定する前にこの2つの答えを正しく導き出せるかどうかが、バイオシグネチャーを発見するミッションになるか、観測時間を使い果たすミッションになるかを分ける。
■HWO-PSI公募で研究者に求められること
新たなHWO-PSIプログラムは、HWOのアーキテクチャを最終決定する前に解消しなければならない知識のギャップに取り組む提案を研究者から募っている。対象は大きく「恒星の特性評価」と「大気科学」の2つのカテゴリーに分かれる。
恒星の特性評価には、数十時間から数百時間にわたる観測を始める前に、天文学者がHWOの候補恒星について把握しておくべきあらゆる情報が含まれる。磁気フレア、彩層の変動、デブリ円盤の構造などの恒星活動はすべて、HWOが扱うコントラスト水準では惑星の信号を模倣したり、覆い隠したりする可能性がある。地上観測では静かに見える恒星でも、惑星大気の信号をかき消すほどの変動を起こすことが判明するかもしれない。打ち上げ前の段階でそのような恒星を特定し、優先順位を下げておけば、ミッションの観測効率を維持できる。「SPORES-HWO」と呼ばれるコミュニティー主導の取り組みは、すでに優先度が最も高い164個の候補恒星について、元素存在量、変動性、高エネルギー放射、伴う惑星に対する視線速度観測上の質量上限などを収録した特性カタログを公開している。HWO-PSIプログラムは、より広範な候補リストを対象に、この作業を加速、深化させることを目的としている。
大気科学では、初期の地球、現在の地球、無酸素大気を持つ地球、あるいは活動がより穏やかな恒星や、より活発な恒星を公転する地球型惑星のスペクトルを、HWOの機器が実際にはどのように捉えるかをモデル化する。これらのモデルは、HWOの機器に必要なスペクトル分解能と波長範囲を決めるとともに、ミッションが将来得る検出結果を科学者がどの程度の確信を持って解釈できるかを左右する。
HWO-PSIに関する質問は、NASAのプログラムサイエンティストであるMegan Ansdell氏(Megan.C.Ansdell@nasa.gov)に問い合わせることができる。公募要項の全文はsolicitation.nasaprs.com/ROSES2025に掲載されている。
■すでに稼働中の技術テストベッド
NASAのゴダード宇宙飛行センターにジェット推進研究所(JPL)と共同で2024年8月に設立されたHWO技術成熟化プロジェクトオフィスは、先行研究プログラムと並行してコロナグラフと望遠鏡の技術成熟化に取り組んできた。同プロジェクトオフィスは2025年4月、コロナグラフシステム技術、超安定望遠鏡システム技術、高感度の紫外・可視光観測機器という3つの分野で構成される、100ページを超える包括的な技術開発計画をNASA本部に提出した。
HWO技術開発計画によると、すべての重要技術について、2029年までに技術成熟度レベル(TRL)5、すなわち関連する実験室環境で検証済みの段階に到達することが目標となっている。これは、ミッションコンセプト審査を開始し、2030年までにフェーズAへ移行するための前提条件である。この目標を実現するため、ゴダードの超安定構造研究所と付属機器Mini-MUST、ならびにJPLの大型12メートル真空チャンバー内で稼働するDecadal Survey Testbed 2という2つのテストベッド施設の開発が進められている。Mini-MUSTの熱真空チャンバーは2025年7月にゴダードへ納入された。
現在、「エンジニアリング・アーキテクチャ・コンセプト(EAC)」と呼ばれる3つの望遠鏡設計案が並行して評価されている。EAC-1は口径6メートル(20フィート)の分割鏡を用いたオフアキシス(軸外し)望遠鏡である。EAC-2は類似する設計だが、円形のキーストーン型ミラー配列を採用する。EAC-3は口径8メートル(26フィート)の主鏡とオンアキシス(軸上)の副鏡を備える。HWO技術開発計画に詳述されているように、3つの設計案はいずれも、微小隕石の衝突から主鏡を守るための伸展式バレル(鏡筒)を備えている。望遠鏡の最終設計はまだ選ばれておらず、決定はミッションコンセプト審査を待つことになる。
SpaceNewsによる契約報道によると、NASAは2026年1月5日、これらの設計案に関連する技術を前進させるため、Astroscale U.S.、BAE Systems Space and Mission Systems、Busek、L3Harris Technologies、Lockheed Martin、Northrop Grumman、Zecoatの7社に、期間3年の固定価格契約を発注した。NASAは個々の契約額を公表していない。
■大幅な予算削減の危機を乗り越えた資金
HWOの現在の進展は、一時は実現しない可能性もあった。2025年初頭に公表された政府の2026会計年度予算案では、NASAの天体物理学予算全体を約3分の2削減する計画の一環として、HWOの技術開発費にわずか330万ドル(約5億4120万円、1ドル=164円換算)しか要求されていなかった。従来の資金水準から81%の削減となる。しかし議会は、2026年1月5日のミニバス歳出法案でこの削減を退け、HWOに1億5000万ドル(約246億円、同換算)を配分した。NASAの科学者Giada Arney氏は当時、この金額が状況を一変させるものだとして、「ついに、実質的な資金によってミッションの進展を加速できることが分かった」と述べた。NASA長官のJared Isaacman氏は、同局が「緊急性を持って行動し、可能な限りスケジュールを前倒しする」方針だと述べた。
2026年4月3日に公表された2027会計年度の政府予算案では、HWO予算を再び500万ドル(約8億2000万円、同換算)に削減することが提案された。一方、2026年5月14日に公表された下院歳出委員会の法案審議案は、HWOに2026会計年度と同水準の1億5000万ドル(約246億円、同換算)以上を配分するよう指示している。この予算をめぐる議論は現在も続いている。
Astro2020 Decadal Surveyに示された数字に基づくと、HWOプログラムの開発ライフサイクル全体の推定コストは少なくとも110億ドル(約1兆8040億円、同換算)に上る。NASAは現時点の公式なコスト見積もりを公表していない。
■生命探査ミッションにとどまらない役割
HWOは、生命検出専用の機器ではなく、より広範な天体物理学コミュニティーのための汎用観測所として設計されている。4つの科学ワーキンググループが作成し、2026年2月にHWO25会議録の一部として公表した約73件のサイエンスケース文書は、銀河の進化、恒星内部で作られた元素の起源と分布、銀河間物質の研究、精密位置天文学などを扱っている。この観測所は、ハッブル宇宙望遠鏡やJWSTが調査してきたのと同じ深宇宙領域を、遠紫外域まで拡張した、より広い波長範囲でマッピングすることになる。遠紫外域は、近年ハッブルの紫外線分光器が能力を制限された状態で運用されるようになって以降、観測が難しくなっているスペクトル領域である。
こうした天体物理学上の幅広い役割は、HWO-PSIプログラムにとっても重要だ。先行研究の提案は生命検出の目標だけでなく、これらの科学目標のいずれを扱うこともできるためである。恒星集団、銀河間物質、高エネルギー紫外線天体物理学などを研究する研究者も、それぞれの分野でHWOの科学的準備を前進させる提案を提出できる。
■重要な日程
HWO-PSIに関心のある研究者は、以下の2つの厳格な期限を守る必要がある。
・2026年9月10日:意向表明(NOI)の提出期限(必須)
・2026年10月26日:提案書の提出期限
公募要項の全文は、NASAの研究公募サイト(solicitation.nasaprs.com/ROSES2025)に掲載されている。質問はMegan Ansdell氏(Megan.C.Ansdell@nasa.gov)に問い合わせることができる。
■注目ポイントQ&A
●HWOはどのように生命の兆候を検出するのですか?また、なぜ1種類のガスだけでは不十分なのですか?
HWOは恒星コロナグラフを使って観測対象の恒星の光を遮り、その周囲を公転する惑星が反射する微弱な光を分析します。紫外域、可視域、近赤外域を観測する機器によって、その惑星の大気中にある特定のガスの特徴を探します。酸素など、1種類のガスを検出しただけでは、生命を検出したと主張するには不十分です。特定の地質学的プロセスや光化学的プロセスによって、生物が存在しなくても酸素が生成される可能性があるためです。信頼できるバイオシグネチャーの検出には、活発な生物学的プロセスが継続的に補充していると考えなければ説明できない組み合わせ、例えば酸素とメタン、またはオゾンとほかの化学的非平衡の指標など、複数のガスを同時に見つける必要があります。そのためには複数のスペクトル帯域にわたる観測が必要で、観測対象となる恒星ごとの積分時間は非常に長くなります。先行研究を通じて適切な観測対象を事前に選ぶことが、ミッションの成否を左右する課題となるのはこのためです。
●Habitable Worlds Observatoryは、JWSTやハッブル宇宙望遠鏡とどう違うのですか?
JWSTは主にトランジット分光観測を行う望遠鏡です。惑星が恒星の前を横切る際に、その大気を通過した恒星光を分析します。この手法を利用できるのは、地球から見て恒星の前を通過する惑星であり、特に小型で低温の恒星を公転する大型惑星に対して高い感度を持ちます。一方、HWOは直接撮像を行う観測所です。コロナグラフで恒星の光を物理的に遮り、惑星が反射する光を直接捉えます。これにより、地球から見てトランジットを起こすかどうかにかかわらず、近隣にある太陽に似た恒星を公転する惑星を研究できます。また、太陽に似た恒星のハビタブルゾーンにある地球型惑星を探索できる唯一の計画中の観測装置となります。必要なコロナグラフのコントラスト比は100億対1で、現在の最先端に当たるローマン宇宙望遠鏡のコロナグラフが実証する性能より、約50倍厳しい技術的課題です。
●Habitable Worlds Observatoryの推定コストと打ち上げ時期はいつですか?
Astro2020 Decadal Surveyは、HWOの開発コストを最低110億ドル(約1兆8040億円、1ドル=164円換算)と見積もっています。NASAは現時点の公式なコスト見積もりを公表していません。プログラムは2029年末までのミッションコンセプト審査、2030年までのフェーズA開始、2040年代初頭の打ち上げを目標としています。スケジュールとコスト見積もりは、技術が成熟し、ミッションのアーキテクチャが最終決定される過程で、さらに具体化される予定です。
●HWOの予算が再び削減された場合、生命探査研究はどうなりますか?
HWOは、議会が配分した水準から81%以上の予算削減を求める連邦政府の予算案に、2会計年度連続で直面しました。議会はいずれの年度でも資金を回復する方向に動き、直近では2027会計年度について、成立済みの2026会計年度予算と同じ少なくとも1億5000万ドル(約246億円、1ドル=164円換算)をHWOに配分するよう指示しています。ただし、フェーズAの開始目標が2030年、打ち上げ目標が2040年代初頭という長期の開発計画であるため、複数の政権と議会会期にわたる継続的な予算措置が必要です。現在進行中の先行研究公募と企業との契約は、成立済みの2026会計年度予算で資金が確保されており、すでに進められています。観測所そのものが現在のスケジュール通りに技術成熟化から本格開発へ移行できるかどうかは、2027会計年度以降に議会が配分する予算に左右されます。
元記事: NASA Opens Funded Research Call for Life-Hunting Habitable Worlds Observatory
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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