メルセデス・ベンツ、2026年第2四半期のEV販売台数が50%増――欧州シェアは過去最高の26%に急上昇

2026年7月12日 16:15

印刷

記事提供元:Tech Times

メルセデス・ベンツが発表した2026年第2四半期(Q2)の販売実績によると、同社の電気自動車(EV)販売台数は前年同期比50%増と大幅な伸びを記録した。特に欧州市場では、販売された同社車両の4台に1台以上(26%)がEVとなり、過去最高のシェアに達している。この急成長の背景には、新世代の800ボルトプラットフォーム「MMA」を採用した新型モデルの投入や、欧州における規制・補助金環境の変化があるとみられる。

■グローバルでEV販売が急増、欧州が牽引役に

メルセデス・ベンツが2026年7月8日に発表した販売データによると、同社の乗用車(Cars)および商用バン(Vans)部門を合わせたバッテリー電気自動車(BEV)の第2四半期グローバル販売台数は、前年同期比50%増の6万3000台に達した。これは前四半期(2026年第1四半期)比でも25%増となる急激な伸びである。

乗用車ブランド単体でのBEV販売台数は前年同期比51%増の5万2900台を記録し、2026年上半期(1〜6月)の累計では前年同期比28%増の9万7100台となった。

この成長を牽引しているのは欧州市場だ。Q2に世界で販売されたBEV乗用車5万2900台のうち、約82%にあたる約4万3500台が欧州で販売された。欧州における同社のBEV販売台数は前年同期比で87%増加し、欧州市場におけるメルセデスのBEV販売比率(シェア)は前年同期の約2倍となる26%に達している。

■急成長を支える「800ボルト」新プラットフォーム「MMA」

この急激な販売増の技術的要因は、同社の新しい共通プラットフォームにある。新型「CLA(電気自動車仕様)」、「GLC(電気自動車仕様)」、「GLB(電気自動車仕様)」は、いずれもメルセデスが記録的な超低燃費コンセプトカー「VISION EQXX」から開発した初のEV専用プラットフォーム「メルセデス・モジュラー・アーキテクチャ(MMA)」を採用している。

MMAプラットフォームの最大の特徴は、800ボルトの電気アーキテクチャを採用している点だ。従来の一般的な400ボルト仕様のEVでは、超急速充電時に大量の発熱を伴うため、太いケーブルや高度な熱管理システムが必要だった。一方、800ボルトシステムは半分の電流で同じ電力を供給できるため、発熱を抑えつつ極めて高速な充電が可能となる。

具体的には、新型CLA(電気仕様)は対応するDC急速充電器で最大320kWの入力を受け入れ、約10分間で300km分の航続距離を充電できる。新型GLC(電気仕様)は94kWhのバッテリーを搭載し、最大330kWのピーク出力に対応、10%から80%までの充電を24分未満で完了する。新型GLB(電気仕様)は85kWhのバッテリーパックから320kWの急速充電が可能だ。これにより、欧州の高速道路での充電時間は、コーヒーブレイクと同等の短さに短縮される。

また、MMAではモデルの仕様に応じてバッテリー化学組成を使い分けている。エントリーモデルには、安価で重量はあるが熱安定性に優れたリン酸鉄リチウム(LFP)セルを採用。上位モデルには、エネルギー密度を高めるためにシリコン酸化物負極を採用している。この組み合わせにより、効率性を重視する顧客と、航続距離を最優先する顧客の両方のニーズに対応している。

■独自OS「MB.OS」の搭載とネーミングの刷新

これらのハードウェアを制御するのが、メルセデス・ベンツ独自の車載オペレーティングシステム「MB.OS」だ。これはチップからクラウドまでを統合したソフトウェアプラットフォームで、「マルチメディア」「運転支援」「ボディ&コンフォート」「走行&充電」の4つのドメインを同時に制御する。

米国市場では新型CLAとGLBが、この4ドメインすべてで同時にMB.OSを動作させる初の市販モデルとなった。これにより、運転支援機能を含む車両全般のOTA(オーバーザエアー)アップデートが可能になり、インフォテインメントの更新が中心だった前世代の「EQ」モデルから大幅に進化している。MB.OSは自動運転処理用にNVIDIAの「Orin」システム・オン・チップ(SoC)を統合し、GoogleやMicrosoftの生成AI音声アシスタントをネイティブでサポートしている。

さらに、従来の「EQC」や「EQA」といった「EQ」サブブランドから、「GLC(電気仕様)」「CLA(電気仕様)」といった統一された車名への移行も重要な変化だ。メルセデスはEVを特別なカテゴリーとして扱うのをやめ、中核ラインナップの主流として位置づけている。

■欧州でEV需要を押し上げる「3つの外部要因」

欧州での販売台数87%増という数字は、製品力だけで達成されたわけではない。その背景には、以下の3つの構造的な要因が存在する。

1つ目は「規制の圧力」だ。EU規則(2019/631)に基づき、欧州の自動車メーカーはフリート(全販売車両)平均のCO2排出目標を超過した場合、超過1グラムあたり販売1台につき95ユーロの罰金を科される。業界全体で目標を大幅に未達だった場合、2025年には約160億ユーロの罰金が発生すると試算されていたため、業界のロビー活動を受けてEUは2025〜2027年にかけて3年間の平均化措置を認める柔軟策を導入した。しかし、メーカー各社にとってBEVの販売は平均排出量を直接引き下げる最も有効な手段であることに変わりはない。クリーン交通に関する国際会議(ICCT)の2026年4月のデータによると、メルセデス・ベンツ単体では目標値を1キロメートルあたり約20グラム超過しており、現在はボルボとのプール合意によって規制をクリアしている状態だ。このギャップと潜在的な罰金リスクが、積極的なEV投入の直接的なインセンティブとなっている。

2つ目は「補助金の再開」だ。ドイツでは2023年末に突然打ち切られたEV購入補助金制度が2026年に再導入され、個人購入者やリース利用者を対象に、所得に応じて1台あたり1500〜6000ユーロ(約24万3000〜97万2000円、1ドル=162円換算)の補助金が支給されている。2026年5月から申請受付が開始され、同年1月1日以降に登録された車両に遡及適用される。2029年までに約80万台を支援するため30億ユーロが予算化されており、ドイツのバイヤーにとってEV移行の実質的な初期費用が大幅に削減された。ドイツの6月の新車登録に占めるBEVシェアは28.4%に達し、メルセデスのドイツ国内BEV販売台数はQ2に前年同期比で2倍以上に増加した。

3つ目は「燃料費の格差」だ。国際エネルギー機関(IEA)が2026年5月に発表した「Global EV Outlook 2026」によると、中東情勢に伴う原油価格の高騰により、欧州のEVドライバーの年間燃料費削減効果は2025年比で35%拡大した。IEAの試算では、年間3万キロメートルを走行する欧州のドライバーがガソリン車からEVに乗り換えた場合、年間約1900ドル(約30万7800円)を節約でき、これは2025年の原油価格水準よりも700ドル(約11万3400円)多い削減額となる。これにより、これまで経済的メリットが薄いと考えていた層の意識が変化している。

■ドイツが市場を牽引、注文は2027年まで埋まる状況に

欧州市場の中でも、ドイツの伸びは突出している。ドイツにおけるメルセデスのBEV販売台数はQ2に倍増し、同国全体のEVシェアは6月に28.4%に達した。これは2023年12月の補助金打ち切り後の低迷からの力強い回復を示している。

欧州の自動車ジャーナリストから「カー・オブ・ザ・イヤー2026」に選出された新型CLA(電気仕様)は、すでに2026年後半まで注文が埋まっている。また、2025年9月のIAAミュンヘンで世界初公開され、2026年中頃に欧州市場に投入された新型GLC(電気仕様)は、欧州市場での受注残が2027年に達していると報じられている。3列7人乗りオプションを追加した新型GLB(電気仕様)も同様の軌跡をたどっている。

メルセデスの公式発表によると、欧州における新型GLC、CLA、GLBの受注残はすでに2027年まで延びている。また、新型Cクラス(電気仕様)は2026年5月に欧州で発売され、7月末には新型GLA(電気仕様)のワールドプレミアが予定されている。

商用バン部門も貢献しており、Q2の電動バン販売台数はグローバルで前年同期比46%増の1万100台を記録。バン部門全体における電動化比率は前年同期の7%から11%に上昇した。

グループ全体では、乗用車セグメントにおけるグローバルBEV比率が前年同期の7.7%から13%に上昇し、世界で販売されたメルセデス乗用車の約8台に1台がBEVとなった。欧州市場においては、BEVとプラグインハイブリッド(PHEV)を合わせた電動化比率は43%に達している。

■中国市場での苦戦が全体の重石に

一方で、欧州以外の地域、特に中国市場では厳しい状況が続いている。中国におけるQ2の乗用車販売台数は前年同期比30%減の10万台未満に落ち込み、2026年上半期累計でも前年同期比28%減となった。

メルセデスはこの要因について「激しい競争、冷え込む消費者マインド、モデル移行期であること、および戦略的な販売調整」と説明している。中国の現地ブランドが、ソフトウェア主導でEVファーストの車両を競争力のある価格で投入し、広い後席スペースやAI搭載コックピットを提供しているのに対し、欧米の既存自動車メーカーが直面している構造的な課題が浮き彫りになっている。

メルセデスは2026年後半に、中国市場の好みに合わせて設計されたロングホイールベース仕様の「GLC L SUV(電気仕様)」など、中国専用モデルを複数投入する予定だ。同社は2026年を、本格的なEV攻勢に向けた「移行の年」と位置づけている。

■2026年後半の展望と既存オーナーへの注意点

欧州で新型MMAプラットフォーム搭載モデルの購入を検討している顧客にとって、Q2のデータが示す実態は、需要が供給能力を上回っているということだ。ドイツ・ブレーメンにある新型GLC(電気仕様)の生産ラインは、需要に対応するため3交代制に加え土曜日の特別操業も実施している。注文から納車までの期間が2027年まで延びていることは、ドイツの補助金適用期限や現在のリースの満了時期を考慮する上で重要な要素となる。

2026年後半には、7月末に新型GLA(電気仕様)のワールドプレミア、年末には新型Cクラス(電気仕様)の欧州市場投入が控えている。これらもすべてMB.OSを搭載し、800V急速充電に対応する。

なお、既存のメルセデスEVオーナー向けに1点注意喚起がある。2026年2月に発表されたリコール(NHTSA届出番号:26V073)において、2021年12月から2024年5月までに製造された電動SUV「EQB」約1万1900台を対象に、高電圧バッテリーの火災リスクが指摘されている。原因はバッテリーサプライヤーであるFarasis Energy社の製造プロセスのばらつきによるもので、対策として無償での高電圧バッテリー丸ごと交換が実施される。対象車両のオーナーは、交換が完了するまで車両を屋外に駐車し、充電を80%までに制限することが推奨されている。なお、このリコールは前世代のEQプラットフォームを採用したEQBに限定されたものであり、バッテリーのサプライチェーンや製造プロセスが異なる新型MMAプラットフォーム車(CLA、GLC、GLB)には影響しない。

■注目ポイントQ&A

●2026年第2四半期にメルセデス・ベンツのEV販売が欧州で急増した理由は何ですか?

主に3つの要因が重なったためです。第1に、800V対応の新型「MMA」プラットフォームを採用した新型CLA、GLC、GLBの納車が本格化したこと。第2に、ドイツで再導入されたEV購入補助金(1台あたり1500〜6000ユーロ)により実質的な購入コストが下がったこと。第3に、原油価格の高騰により、ガソリン車からEVに乗り換えた場合の年間燃料費の節約効果が前年比で35%拡大したことです。

●新しいEVに採用されている「800ボルト・アーキテクチャ」のメリットは何ですか?

従来の400ボルトシステムに比べ、半分の電流で同じ電力を供給できるため、発熱が抑えられ、充電ケーブルを細くすることができます。これにより、熱管理の複雑化を避けながら極めて高速な充電が可能になります。例えば、新型CLA(電気仕様)は対応する急速充電器を使用することで、約10分間で300km走行分の充電が可能です。

●「MB.OS」とは何ですか?新型EVにおいてどのような役割を果たしますか?

メルセデス・ベンツが独自に開発した、チップからクラウドまでを統合する車載オペレーティングシステムです。インフォテインメントだけでなく、運転支援、ボディ制御、走行・充電システムなど車両全体を統合管理し、安全機能を含むシステム全体のOTA(無線)アップデートを可能にします。また、GoogleやMicrosoftの生成AI音声アシスタントなどもネイティブで統合されています。

●新型の電動CLAやGLBは米国でも販売されていますか?

はい、米国でも販売が開始されています。ただし、2026年春より前に製造された初期のCLAモデルには、テスラのスーパーチャージャー(NACSポート)や米国の多くの公共急速充電器を利用するために必要な「400Vコンバーター」が搭載されていません。2026年春以降の製造車両には標準搭載されていますが、初期車両への後付けはできないとされています。

元記事: Mercedes-Benz EV Sales Rose 50% in Q2, Fueled by a Record 26% European Share

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード

関連記事