8月倒産件数は805件、4カ月連続で前年下回る

2025年9月9日 08:52

印刷

 東京商工リサーチが8月度の「全国企業倒産」状況を発表。小規模企業の倒産件数こそ一段落したものの、人件費増や物価高などの既存のリスク要因に加えて、新たにトランプ関税の影響が加わることで、年末の資金需要に対応できない企業が倒産に至る可能性が高いことが分かった。

【前月は】7月の倒産件数は961件、9カ月ぶりに900件超え

■企業倒産件数は3カ月連続で前年上回る

 8日、東京商工リサーチが8月の「全国企業倒産」を発表した。全国企業倒産件数(負債額1,000万円以上)は、前年同月比11.3%増の805件となり、3カ月連続で前年同月を上回った。8月に800件を超えたのは2013年(819件)以来、12年ぶりのこと。

 負債総額は同12.82%増の1,143億7,300万円。主な大型企業倒産は、脱毛サロンを経営するMPH(負債総額:260億円、以下同じ)、服飾・雑貨小売りのN企画(46億7,800万円)、金属製造業のアール工業(22億5,800万円)、コスチューム販売のNCITL(18億3,500万円)、戸建住宅事業のやまぜんホームズ(18億円)など。

 物価高や人件費上昇、金利上昇、トランプ関税などのリスク要因により、年末の資金需要に対応できない企業が増加する危険性も高まっている。

■10産業中4産業で前年上回る

 産業別の倒産件数は、10産業中4産業で前年同月を上回った。倒産件数が最も多かった産業はサービス業他の242件(前年同月比:変わらず)。次いで建設業が175件(同44.6%増)、卸売業が106件(同変わらず)で、この3つが倒産件数で100件超え。

 以下は小売業が94件(同19.0%増)、製造業が76件(同3.8%減)、情報通信業が37件(同9.8%減)、運輸業が34件(同36.0%増)、不動産業が31件(同72.2%増)、農・林・漁・鉱業が10件(同16.7%減)。金融・保険業は0件(同変わらず)だった。

 またサービス業他の中では、飲食業が56件(同24.3%減)、老人福祉・介護事業が14件(同7.7%増)、理美容業が14件(同40.0%増)、エステティッス業が7件(同22.2%減)、宿泊業が6件(同2倍)となっている。

 都道府県別で最も倒産件数が多かったのは東京都の165件で、唯一の100件超え。次いで大阪府が80件、愛知県が56件、神奈川県が43件、兵庫県が40件、京都府が37件、福岡県が35件、千葉県が32件と続く。反対に倒産件数が少なかったのは高知県が1件、鳥取県と沖縄県が各2件、岩手県、秋田県、山梨県、島根県、佐賀県が各3件となっている。

■小規模倒産は一段落も年末に向けて増加の可能性

 8月の「負債1,000万円未満」の企業倒産件数は、前年同月比20.4%減の35件となり、2カ月連続で前年同月を下回った。月の倒産件数が30件台に収まったのは4月(38件)以来のこと。また1月から8月までの累計倒産件数は342件で、前年同期比7.5%減となった。

 倒産件数こそ前年同月を下回ったものの、物価高や人件費の高騰、金利上昇など収益を圧迫する要因は変わらず、トランプ関税などの不透明要因や年末の資金需要期を控えて、中小企業には厳しい時期が続くため、今後は倒産件数が増加する可能性がある。(記事:県田勢・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事