「犬の耳のような」とは? 犬の英語イディオム (13)

2025年3月20日 11:07

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 「dog-eared」という言葉を聞いて、すぐに意味が浮かぶだろうか?直訳すると「犬の耳のような」だが、実はこの表現は本や紙の状態を表す英語のイディオムだ。

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 古くから使われてきたこの言葉には、英語ならではの面白い歴史が隠されている。今回は、この表現がどのように生まれ、どのように使われてきたのかを詳しく見ていこう。

■dog-earedの語源

 「dog-eared」は見た目に由来する表現だ。しおり代わりに本のページの角を折り曲げることがあるが、それが犬の折れ曲がって垂れた耳に似ていることから、書籍やノートのページの角を折り曲げる行為、または、その折り曲げられた状態を「dog-eared」と呼ぶようになった。

 この表現は意外と歴史が古く、記録上最も古い例として確認できるのは、William Hawkinsという劇作家の1627年の作品『Apollo Shroving』に登場する以下の一節である。

 "For one whole yeere thou must smooth out the dogs eares of all thy fellowes bookes."
 (お前は丸一年、仲間たちの本についた「犬の耳」を伸ばさなければならない。)

 当時の読者がこの表現をすぐに理解できたとすれば、それ以前から口語的に使われていた可能性は高い。つまり、17世紀にはすでにこの表現が定着していたと考えられる。

■dog-earedの使われ方

 「dog-eared」は形容詞として使われることが多いが、名詞や動詞の形でも用いられることがある。

 形容詞として使われる場合、「dog-eared」は「角が折れた」「使い込まれた」といった意味を持ち、本や紙の状態を表すのが一般的だ。たとえば、「I love reading old, dog-eared books.(私は使い込まれた古い本を読むのが好きだ)」 のように使われる。

 一方、「dog ear」という形で名詞として使われることもある。この場合、ページの折れた部分そのものを指し、"The book was full of dog ears."(その本にはたくさんの折り目がついていた。) のように使われる。

 また「dog-ear」を、動詞として使うこともできる。これは「ページの端を折る」という行為を表し、「She always dog-ears pages when she finds something interesting.(彼女は面白い部分を見つけると、いつもページの端を折る)」 のように用いられる。

 ただし、形容詞としての使用が圧倒的に一般的であり、名詞や動詞としての使用はそれほど多くない。

 なお「dog-ear」の対象は、本だけではない。「dog-eared reports(使い込まれて折れ目がついた報告書)」、「a couple of dog-eared tickets(角が折れたチケット数枚)」のようにも使える。紙類の劣化した状態を表すときには便利な表現だ。(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る

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