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「ケイスケ ヨシダ」2025春夏コレクション オーセンティックとアバンギャルドの共存
「ケイスケ ヨシダ(KEISUKE YOSHIDA)」は、2024年9月9日、東京・西五反田のTOCビルで2025年春夏コレクションを開催した。デザイナー吉田圭佑自身の身体感覚に直結する服に焦点を当てた今回。テーラードジャケットの表地と裏地の間に鋏を入れ、体を通す空間を作り出すことで、外側はオーセンティックなシルエットを保ちながら、内側の裏地はボディラインに密着するデザインなどを発表。淑女と少年が同居するような妖しい緊張感を持つエレガンスを表現した。
前回のコレクションでは、デザイナーの母校である立教大学の制服から、学位授与式のガウン、教授を思わせるデザインまで、原点に立ち返り、私小説や記憶の風景を辿るようなコレクションを発表した「ケイスケ ヨシダ」。次にどのようなデザインを打ち出すのかが注目された。
コレクションは、クラシックな客室乗務員の制服や、そのモデルとなった米空軍の婦人服などを彷彿とさせる、裏地で作られたようなシワのあるトップスとひざ丈スカート、帽子からスタートした。マニッシュなジャケットの裏地にもぐり込んだようなデザインや、裏地のようなドレスとジャケットをドッキングしたアバンギャルドなデザイン、チェック柄を使ったクラシックなアイテムと、裏地で作られたようなアイテムとのコーディネートが続いた。基本的なアイテムや制服のような雰囲気は残っているが、今シーズンは、クラシックなエレガンスやボーイッシュなムードに加えて、アバンギャルドな要素が加わっている。
鮮やかな赤や、メンズの裏地のような柄、花をプリントしたデザインなど、裏地の素材や色、柄を変えたり、ほつれた糸を残したり、レースを付けて下着のようなムードをプラスしたりすることで、アイテムや素材を変えてバリエーションを広げた。しかし、裏地を服にしてしまったようなアイデアや、裏地に切れ目を入れてデフォルメし、裏地とアウターの境界線を無くすというアバンギャルドなアプローチ、さらには「裏地を着る」という発想、脇役であるはずの裏地が主役となり、主役のはずのジャケットやコートがバッグやアクセサリーのように見えるなど、本体と影が入れ替わるようなデザインは一貫している。
グランジやフラジル、フルイド、洗いざらし、インサイドアウト、薄い生地と厚い生地の信じられないような組み合わせ、性差の無いデザイン、フュージョンなど、1990年代前半に見られたデザインや当時のトレンド、キーワードをリミックスし、それらを共存させながら、クラシックと裏地、絵画作品から飛び出すアートのように、服の裏地に潜り込むというアバンギャルドな発想で、ノスタルジックでストレートな制服スタイルに次ぐ新たな表現を見せた。
取材・文:樋口真一
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※この記事はアパレルウェブより提供を受けて配信しています。
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