能登半島地震で表面化した水道インフラの危機、日本全体が他人事ではない!

2024年3月29日 15:30

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 2024年1月1日午後4時10分に石川県の能登半島を襲った地震は、気象庁によるとマグニチュード7.6だった。能登半島の地下16kmで発生したこの内陸地殻内地震は、地震の多い日本でも「内陸部」に発生した地震としては稀なくらいの大きな規模だったと言われる。

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 内閣府の非常災害対策本部がまとめた3月12日午後2時現在の被害状況(以下の数値も同)は、人的被害では死者が241人、負傷者が1299人、住家被害では全壊が8010戸、半壊その他が7万6966戸という悲惨なものだ。発生から2カ月以上を経過した今なお、452カ所の避難所に9766人が避難生活を続けている。

 ライフラインのうち、水道は1万5950戸で断水が継続し、停電は240戸となっている。生活する上で欠かせないと言われる「水」の供給は概ね3月中に仮復旧するするようだが、珠洲市と輪島市の一部では4月以降(5月?)になると見込まれている。

 水は地中に埋設された水道管を通して各戸に供給されている。地震の後に隆起と陥没した道路の状況が報道されていた。復旧作業にかかっても水漏れ等の箇所を特定するためには、配管の全てを調査する必要がある。アナログでしかできないこの作業がとてつもなく高い壁になっている。

 通常、市町村で水道事業に関わる職員は多くないから、地震のように広範囲で被害が発生すると近隣の市町村が協力して人繰りを行うことすら、困難になってしまう。そんな訳で珠洲市と輪島市の一部では、断水が解消するまでに(早くとも)5月まで待たなければならない。

 日本に敷設された水道管の総延長は74万キロに及び、地球を周回させると18.5周、地球から月までの距離が38万キロだから、月まで行って目の前まで戻ってこれるくらいの膨大な長さになる。問題は、地球を4周回する以上の長さの水道管が法定耐用年数の40年を経過していることだ。

 こんな背景があるから、近年の日本では1年間に水道の漏水や破損事故が2万件以上発生している。18年7月には東京都北区で50年前の水道管が破損。19年2月には静岡県浜松市で老朽化により撤去予定だった水道管が破損、同年3月には千葉県旭市で市内の7割以上で断水、同市では22年2月にも水道管破損で小中学校が休校した。

 20年1月には横浜市で約3万戸が断水。21年10月には和歌山市の水管橋が崩落して約6万戸が断水した。22年6月には札幌市の老朽化した水道管が破裂、同年7月には北九州市で老朽化水道管が破裂している。

 地震がなくとも、こうした事故が毎日平均で50件以上発生している計算になる。

 今までの都市計画は抜本的に変える時期が迫っていることを、能登半島地震が教えてくれたようだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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