【映画で学ぶ英語】『暴力脱獄』の映画史に残る名言

2024年3月19日 14:56

印刷

 1967年に公開された『暴力脱獄』は、1950年代前半のフロリダ州の刑務所を舞台にしたヒューマンドラマだ。囚人に対する非人間的な仕打ちにも屈しない、不思議な魅力を持つ主人公の男をポール・ニューマンが演じた。

【こちらも】【映画で学ぶ英語】『オッペンハイマー』、トルーマン大統領のセリフを解説

 今回はこの映画史に残る作品の、名言の意味や、関連する表現を紹介したい。

■映画『暴力脱獄』のあらすじ

 主人公のルークは、戦争で手柄を立てて軍曹にまで出世したものの、規則に従うことができない性格のため、一兵卒に降格されて除隊となった変わり者だ。ある夜ルークは、酒に酔ってパーキングメーターの頭を切り落としているところを逮捕され、懲役2年に処せられた。

 ルークが収監された刑務所では、些細な規則違反でも即座に独房入りが命じられるなど、冷厳な支配が行われていた。

 しかしルークは、負けず嫌いの根性を発揮して、次第に仲間の囚人や看守から一目置かれるようになっていくのだった。

■映画『暴力脱獄』の名言

 ある日、ルークのもとに病気の母の訃報が届く。所長は何もしていないルークに、脱走を防ぐという名目で独房入りを命じた。

 この仕打ちに堪忍袋の緒が切れたルークは、独立記念日のお祭り騒ぎを利用して脱走を決行したが、すぐに捕まって刑務所に連れ戻された。

 ルークは囚人たちの前に引き出され、重い足かせをつけられる。それでも反抗的な態度を示すルークに怒り狂った所長は、思わず彼を殴ったあとで、体面を保つため次のセリフを放つ。

 What we've got here is failure to communicate.
 - ここにいるのは言葉の分からん男だ。

■表現解説

 最初になぜこのセリフが、「ここにいるのは言葉の分からん男だ」と訳されるか考えてみたい。

 ”What we’ve got here”は「ここに私たちが持っているもの」ということで、眼前の状況や物事に注意を引くために使われている。

 ”Failure to communicate”は「コミュニケーションの失敗」という意味で、意思疎通に失敗している状況を指す、どちらかというと改まった表現だ。

 そこでこのセリフを素直に翻訳すれば、「これはコミュニケーションの失敗だ」ということになる。「ここにいるのは言葉の分からん男だ」という訳においては、続くセリフも含めてルークとコミュニケーションができないことに焦点が置かれている。

 ところでこの名言は、英語を母語とする人には、刑務所の看守にしては改まった表現に聞こえるようだ。脚本家のひとりは、これはフロリダ州の看守が昇進のために大学で犯罪学などを受講する必要があるからだ、と解説している。

 ともあれ、このセリフは映画が公開されたときから、ベトナム戦争や若者の反抗、さらには企業文化との関連で引き合いに出される名言となった。

 そういったこともあって、このセリフに使われている表現も、日常やビジネスで応用することができる。

 まず、このセリフは組織内でコミュニケーションに問題がある状況を指摘する場合に使える。映画のセリフそのままではなく、”What we've got here is a misunderstanding.(これは誤解だ)”などと言い換えるとよいだろう。

 さらに”what we’ve got here”だけでも、興味深いことや驚くべきことに注意を引くために、「ちょっとここを見て」というような意味で、”Look what we’ve got here.”と用いられる。(記事:ベルリン・リポート・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事