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定番なのに、なぜリニューアル? 時代とともに進化し続ける「あの」商品
企業が打ち出す戦略の一つが定番商品のリニューアル販売だ[写真拡大]
消費者の欲求が目まぐるしく変化する時代。常に「新しいもの」「より良いもの」を求める消費者心理を満足させ続けるのは至難の業だ。定番商品やヒット商品でも、いつまでも売れ続けるとは限らない。そんな中で、常に選ばれ続けるブランドであるためにはどうすればいいのだろう。
そこで企業が打ち出す戦略の一つが定番商品のリニューアル販売だ。ヒット商品やロングセラー商品をリニューアルすることで消費者に再認識してもらい、新しい顧客や一度離れてしまった顧客層をもう一度掘り起こす機会も生まれる。消費者がブランドに抱いている絶対的な安心感や懐かしさに目新しさも加わるので訴求力は絶大だ。
最近の例を挙げると、清酒業界のトップメーカーである白鶴酒造が、同社の看板商品の一つである「白鶴 まる」のパッケージデザインをリニューアルしている。「白鶴 まる」といえば、真っ赤なパックに筆文字の白い大きな丸印が印象的なパック酒。全国のスーパーやコンビニなどで見かけるので、普段はあまり日本酒を飲まないという人でもよく知っているのではないだろうか。大衆向けのリーズナブルな日本酒というイメージしか持っていない人も多いかもしれないが、兵庫県の灘を代表する老舗酒蔵の看板商品だけあって、実は製法へのこだわりが凄い。「白鶴 まる」は、その唯一無二の味わいを実現するために醸造方法が異なる6種類の原酒をブレンドして造られている。使用している米にもこだわり、1984年の発売当初からずっと、国産米100%はもちろんのこと、農産物検査で等級がついた米しか使っていないという。さらに、原酒の状態から出荷前まで、テイスティングの専門家たちによる白鶴酒造独自の官能評価試験を計6回も実施しているというから驚きだ。リーズナブルでありながら、徹底した品質へのこだわりがあり、日本酒ファンの支持を受け続けるのも納得だ。日経POSの紙パック入り清酒(900mL相当)カテゴリーでは、20年連続で売上No.1を達成しており、2023年には「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2023 SAKE部門 普通酒カテゴリー」でシルバーメダルも受賞している。
これだけのこだわりと完成度の高い商品なら、リニューアルする必要はなさそうにも思えるが、意外にも「白鶴 まる」はこれまでに4回もリニューアルしている。2017年のリニューアルで一度だけ、さらにうまみを増すために「白鶴オリジナル酵母」と「麹四段製法」を新たに採用して酒質のリニューアルを行っているが、それ以外は中身ではなく、パッケージデザインのリニューアルだ。それぞれの時代に合ったデザインにブラッシュアップしているのだという。今回のリニューアルでは、これまで斜めに配置されていた「まる」の文字が縦に揃えられている。すっきりとスタイリッシュで、若い世代にも好まれそうだ。
また、非常にユニークなリニューアルで話題となったのが、亀田製菓の「柿の種」だ。1966年の発売以来、日本のお酒のおつまみの定番として親しまれ続け、米菓売上No.1を誇る「柿の種」も、時代の変化に合わせて何度もリニューアルされており、パッケージだけでなく味も、わさび味や梅しそ味、チョコなどをラインナップに加えるなど、飲酒しない人や子どものおやつとしても需要を伸ばしている。
そんなが亀田製菓が行ったのが、「柿の種」で約40年間守り続けたこだわりの「柿の種6:ピーナッツ4」の黄金比率についての是非を「国民投票」するというものだった。その結果、投票全体の約30%を占めたのが「柿の種7:ピーナッツ3」だったことから、翌2020年5月から黄金比率を変更し、リニューアルしている。
とはいえ、定番商品のリニューアルはメリットも大きい反面、リスクも高い。愛されている商品であればあるほど、それを崩してほしくないというファンも多いだろう。「柿の種」の場合、新しいファンが増えた半面、以前の黄金比率を求める声も根強いようだ。リニューアルは、ともすれば、これまでのファンが一気に離れてしまうことにもなりかねない諸刃の剣だ。味はもちろん、パッケージデザイン一つで売り上げが変わることもあり得るだろう。しかし、そんなリスクを冒してまでもメーカーがリニューアルに踏み切るところに、時代に合わせた消費者の要求に寄り添おうとする、メーカー側の真摯な姿勢が見て取れる。これこそが、定番商品が常に時代のトップブランドであり続けている大きな理由ではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)
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