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名デザイナー:山下泰樹が率いるドラフトに、いま求められているものは何か
ドラフト(東証グロース)。オフィスや商業施設、都市開発などの空間設計・施工の大手。「Best of Year」(米)「SBID(英)」「INSIDE Award(独)」など、世界的なデザイン賞を幾多受賞しているデザイナー:山下泰樹氏により2008年に設立された。そんなドラフトのCFO:熊川久貴氏を、Zoomミーティングで取材する機会を得た。
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参加者の一人から「山下さんの名前ばかりが走りすぎ、それが逆に株価の頭を押さえているという感じを持つが・・・」という質問が出た。エリートデザイナー⇔率いる企業の株価への影響。興味深いと感じた。が私抱いていた興味とはいささか意味合いが異なる。
ドラフトは2021年度から12月期決算に移行している。移行2年目の前22年12月期は「3.2%増収(82億8000万円)、88.7%営業減益(1億800万円)、96.3%最終減益(2100万円)」と不振。期中に下方修正している。が正直、決算後にドラフトが発信した総括に触れ唖然とした。
「提供するデザインのニーズは引き続き堅調だった。が翌連結会計年度以降の引き渡し予定案件、あるいは当連結会計年度引き渡し予定が期ずれとなってしまった案件が多く、増収継続も3.2%増にとどまった。各段階の利益も若干下回るも修正計画水準となった」。期ずれは顧客の事情から発生するばかりとは限らない!
対して今期は期初予想「24.5%増収、0.5%営業増益、4.4%最終増益」計画で立ち上がったが、8月14日の引け後に上方修正を実施した。新たな計画は「26.7%の増収(105億円)、7.2倍の営業利益(7億8000万円)、21.4倍の最終増益(4億5000万円)、1円増配6円配」。期初の積算をどんな市場環境と捉え行ったのか。ドラフトでは理由を、こう発信した。
「コロナ禍からの回復基調が鮮明となるなか、高いデザイン性・企画力を有するデザイン事業への需要が想定よりも高まっており、なかでもデザイン・設計単独プロジェクトなど利益率の高い案件獲得が進んだ」。どんな営業体制を執っているのか!?
山下氏の実績(存在)がドラフトの基盤となっている事実は、否定の仕様がない。要はそれを基にした「営業体制」に反映しきっているのか否かではないか。
こと事業展開に当たっては「初期段階から分業体制が敷かれ、各段階を担うデザイナーが喧々諤々の議論を戦わしている」(熊川氏)という。大いに結構。
が言葉尻を捉えるような言い方で恐縮だが、直近の仕事:兼松の新本社設計(経済産業大臣賞受賞)について熊川氏は、「オフィスでない観点でデザインが設計されたことも、受賞理由だと思っている」とした。その通りだろう。がそうした方向で兼松と渡り合ったはずの営業マンの匂いが、感じられなかった。
本稿作成中の時価は500円台入り口、予想税引き後配当利回り1%水準。時価総額52億円強を勘案すると「低い値頃」を禁じ得ない。時価は上場初値を下回っている。が上方修正を株価は素直に受け入れ9月に594円まで買われている。「山下氏の会社」+「相応の営業力を兼ね備えた会社」の認識が、求められていると感じた。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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