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日本とサウジアラビア、連携の思惑は?
●脱炭素技術で連携強化
岸田首相は7月16日から中東3カ国を歴訪。17日にはサウジアラビアを訪問し、ムハンマド皇太子と会談した。脱炭素化に向けてエネルギー分野での協力推進を確認したと、ロイター通信などが報じている。
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今回の首相訪問は、日本企業数十社が同行するという異例の外交となった。
外相級の戦略対話の設置と、サウジアラビアが掲げる「ビジョン2030」へのゆるぎない日本の支援を表明。原油の安定供給に対し、岸田首相が謝意を示すとともに、ムハンマド皇太子からも消費国・産油国双方の利益になるように努めたいと述べ、両国の蜜月関係を印象付けた。
米国の同盟国でもある両国が、なぜ今連携を強めたいのか?
●日本とサウジの関係
日本は長年サウジアラビアと友好関係を築いており、関係は戦前から続いている。日本にとってサウジは最大の原油供給国であり、そのシェアは約40%を占める。
日本からの輸出額はサウジからの輸入額(約3兆7000億円)の約8分の1に過ぎないが、自動車や機械類が中心である。
2017年には安倍政権下で、サルマン国王と「日・サウジ・ビジョン2030」を立ち上げ、「ビジョン2030」の協力を約束している。
今回の岸田首相の歴訪では、クリーン水素、アンモニアなどの精製技術において、サウジのエネルギー省と日本の経済産業省とが合意を結んだと明らかにした。
●双方の思惑は?
従来通り、サウジは石油、日本は自動車・機械類とインフラという双方の足りない部分を補うという関係には変わりは無いだろう。
しかし脱炭素という取り組みと外交関係で、大きくバランスが変わる可能性もある。
サウジは広大な砂漠地帯や太陽光、ガス資源を生かし、水素事業や太陽光事業に注力しようとしている。
クリーンエネルギーの分野で、サウジは日本だけでなく、中国とも関係を強化している。今回の岸田首相の歴訪は、6月にサウジを訪問した中国にくさびを打つためという見方もある。
サウジは今年3月、中国の仲介により、イランとの外交関係を修復したが、原油の減産と人権問題で関係が悪化しているバイデン政権にとってはメンツを潰された格好となっている。
サウジは中国、日本、米国のいいとこどりを狙っている“天秤外交”とも揶揄されている。
岸田政権は、外国への援助に関して“海外バラマキ”という批判の声が国内にはあり、足元を見られぬよう、前のめりは危険かもしれない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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