建築物解体業:田中建設成長の何故と、「引き続き強き」の理由

2023年6月7日 08:23

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 田中建設工業(東証スタンダード。以下、田中建設)。建築物の解体を主軸に、それに伴う関連事業を一気通貫で展開している。

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 解体工事の動向については、今後とも「拡大」が見込まれている。その理由として、以下の点が指摘される。

(I)1950年代~1970年代の高度成長期に企業は積極的に設備投資と取り組み、その結果として多くの建築物が生まれた。そうした一連の建築物の多くが50年以上を経たいま、都市再開発の推進とも絡み老朽化検知器物の取り壊し・建て替えの時期を迎えている。

(II)空き家問題の深刻化。野村総合研究所の調査では2023年に1293万件と予想されるものが、33年には1955万件(全世帯数の30%超)に達する。団塊の世代の相続で、空き家の所有者らの管理に悩むケースが急増する。

(III)そして解体工事を担える業者の絞り込みが起こっている。建設業法改定で1件当たり500万円以上(税込み)の(解体)工事を請け負う場合には、建設業の認可が必要になった。認可を受ける場合には監理技術者の資格(1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士)と、主任技術者の資格(監理技術者資格、2級土木施工管理技士)を有する業者(企業)のみが認められる。

 つまり市場は拡大するが、施工参入者に枠がはめられる。

 コロナウイルス禍で解体業は一時、縮小を余儀なくされた。そうした中での田中建設の収益動向は注目に値する。

 2021年3月期「35.3%増収、80.1%営業増益、78.1%最終増益、12円減配68円配も20年10月期の1対2分割を勘案すると実質増配」。22年3月期「9.0%増収、1.1%営業減益、1.5%最終減益、5円増配73円配」。前23年3月期は2月の上方修正をはさみ「19.4%増収、32.6%営業増益、29.2%最終増益、創業40周年配を加え80円配」。そして今3月期は「6.7%増収(120億円)、11.2%営業増益(13億8500万円)、11.0%最終減益(9億4500万円)、73円配」と慎重姿勢でスタートしたが・・・「本社移転」や販管費増の一事要因が減益の主因。

 至24年3月期の中計は、2年前倒しで実現。今期を初年度とする至新中計では「売上高140億円(22年3月期比24.5%増)、営業利益17億円(10%増)、最終利益10億8600万円(1.1%増)、施工監理者数70名(23名増)」を掲げている。

 ちなみに解体市場規模は、今期:100億円に対し35年3月期には200億円を見込んでいる。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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