「アリババ」を売却したソフトバンクGが、「アーム」に同じ役割を期待できないワケ! (前編)

2023年5月26日 08:51

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 11日にソフトバンクグループ(SBG)は、国際会計基準による23年3月期の連結決算を発表した。四半期決算毎に不調が伝えられて来たSBGの経営内容が、4四半期決算を集約した年度決算で急に改善されることはあり得ないから、9701億円の最終赤字と伝えられても特に動揺はなかっただろう。

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 22年3月期にも1兆7080億円の最終赤字を計上していたので、都合2期連続の最終赤字になったことも想定の範囲内だ。発表された翌日の12日、東証の終値は4949円(シクシクと読める)と対前日比189円の下落を演じたが、僅か数%のダウンだった。

 17日には終値で5240円まで回復したので、1週間も経たずに決算発表当日の終値(5138円)をも軽々とクリアした。ちなみに3月16日に付けた直近の底値が4766円だったから、2期連続の巨額な赤字というハンディを乗り越えて、SBGは概ね底値圏を脱したように感じられる。マーケットは現在のSBGの適正株価を、5000円前後と評価しているようだ。

 心配があるとすれば、財務内容に再三の懸念が報じられて来たSBGの頼みの綱だった「アリババ」株を、全て手放したことだ。今までも、窮地や転機に陥った際には、「アリババ」の含み益を吐き出して乗り切ってきたから、SBGにとっては奥の手のようなものだった。

 23年3月期決算では、デリバティブ(金融派生商品)取引の担保としていたアリババ株を手放して5兆円弱の利益を生み出したが、投資先の評価損を埋め切れなかったことを考えると、実力では6兆円ほどの最終赤字だったことになる。

 今まで、大口の投資先が動揺しても、巨額の欠損を計上しても、孫正義会長兼社長が決算説明会で余裕のある態度を示してこれたのは、「アリババ」のおかげである。「アリババ」の神通力は23年3月期をもって失なわれた。

 今後、「アリババ」に代わるのは「アーム」だという論調が専らだが、「アーム」は「アリババ」の後を継ぐような孝行息子にはなれない。そのワケは・・(続く)(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

続きは: 「アリババ」を売却したソフトバンクGが、「アーム」に同じ役割を期待できないワケ! (後編)

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