楽天Gの公募増資に対する市場の評価は?

2023年5月17日 08:01

印刷

●楽天Gが公募増資

 通信大手の楽天グループ(楽天G)は16日、公募増資と第3者割当で3321億円規模の資金調達を行うと発表した。ロイター通信によると、公募増資が2903億円と大半を占めており、第3者割当が418億円と見られる。

【こちらも】アフターコロナで戻る旅行需要、新たな不安も!

 15日には事前報道を受けて、株価は一時10%超下落していた。楽天Gは15日に「決定した事実はない」というプレスリリースを出して否定した。

 楽天Gは慢性的な赤字体質で、資金不足が指摘されていたが、公募増資ではどんな思惑があり、その戦略に対する市場の評価はどうなっているのだろうか?

●公募増資とは?メリットとデメリット

 公募増資は資金調達のために、不特定多数の投資家から資金を集めて、新たな株式を発行することである。

 資産を売却することなく、資金を調達することができる。

 公募増資の際の価格は時価に近く割安な水準に決められており、既存株主の利益を毀損することなく資金調達ができる。

 公募増資は証券会社を通じて資金調達をするため、新たな投資家に注目してもらえることもできる。株式の流通量が増えるので、出来高が増えることも期待できる。

 ただし既存株主からすれば、株式の増加により、1株の価値が希薄化し、楽天のように相場が芳しくない時には需給悪化が懸念され、株価の下落要因となりやすいというデメリットがある。

●楽天Gの今後

 楽天Gはモバイル事業の立て直しが急務と言われている。携帯電話事業の設備投資が重い負担となり、赤字が続いている。

 今回の公募増資などの資金は、携帯電話の基地局整備や社債償還に充てると見られている。

 楽天Gは楽天モバイルの損失の穴埋めに苦慮しており、西友株の売却や楽天銀行の上場などで、凌いできた。

 段々打つ手がなくなってきたという印象を与えるかもしれない。公募増資の資金をどう生かすかが焦点にもなる。

 5月11日に発表されたKDDIとの連携強化は、楽天側の設備投資の削減効果が期待されて株価が上昇した。

 自己資本比率も低下しており、資金繰りの面でも投資家から不安視されているが、モバイル事業の立て直しの進捗が信頼を得るカギになるだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事