世界のポリグロットから学ぶ、外国語学習で重要な8つのポイント 完結編

2023年5月8日 08:59

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 ポリグロットたちが異口同音に語る外国語習得のポイントについて、3回にわたって紹介してきた。今回はその完結編ということで、これまで紹介してきた記事などにも触れながら、残りのポイントについて説明していきたい。

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多言語話者たちが語る外国語学習のポイントは、下記の8つにまとめられる。

1. リラックスして楽しく学ぶ
2. 習得言語の発音表記を1から正確に覚える
3. 初期段階でリスニング洪水を浴びる
4. 頻出単語から習得する
5. 顔が筋肉痛になるまで練習する
6. 良き先生を見つける
7. 間隔反復で効率よく記憶する
8. しっかり間違えて正しく覚える

 どれも難しいことでも複雑なことでもなく、誰でも簡単に実践できることだ。しかし継続して効果を得るためには、タイミングや順序、背景や理由、科学的な根拠を理解しておく必要がある。

●1. リラックスして楽しく学ぶこと

 学習の過程全体を通して守りたい基本姿勢だ。理由は過度な緊張やストレスは、学習機能を阻害するからだ。リラックスして楽しく学ぶと、学習効率が格段に上がることには科学的根拠の裏付けがある。詳細はこちらの記事で確認してほしい。

●2. 習得言語の発音記号を1から正確に覚える

 語学学習のスタートと同時に徹底的に行う必要がある。なぜなら日本語は、外国語に比べると音素が少ないため、経験の中にある発音に当てはまることができないからだ。こちらの記事で詳しく説明している。

●3. 外国語のリスニング洪水を浴びる

 外国語のリスニング洪水を浴びると、脳の中に当該言語の神経回路網が形成され、外国語が理解できる音に変わる。学習初期において洪水を浴びると効率が良いということも含め、こちらの記事で詳述したので参考にしてほしい。

●4. 頻出単語から学ぶ必要がある

 この指摘には2つの意味がある。1つには家族、数字、色、身体など日常生活でよく使う言葉は繰り返し使われるため、最初に覚えないと効率が悪いと言うことがある。

 その後、学習の中で繰り返し話すことによって自然と記憶に定着するので、効率が良いし、モチベーションが向上し継続意欲が保たれる。必要な基本単語、文法を網羅したテキストとしておすすめなのが、東京外国語大学の語学モジュールだ。この記事を一読してほしい。

 頻出単語から学ぶ必要があるというアドバイスには、もう1つ大切な意味がある。外国旅行、ビジネス、留学、研究など学習者には各自異なる目的がある。自分なりの頻出単語を意識的に重点的に優先的に学ぶことは、その人のゴールに最短で到達するために必須だ。

 当該分野のサイトや雑誌、テレビ番組などにアンテナを張り、独自の単語帳を作成し、反復学習を行うことが重要になる。

●5. 顔が筋肉痛になるまで練習する

 このアドバイスは、言語学習はつまるところ筋トレと同じだということだ。筋トレによって筋肉がムキムキと発達するように、繰り返し学習によって脳に神経回路網がじわじわと形成され、これによって外国語が聞き取り話せるようになる。この記事を参考にしてほしい。

●6. 良き先生を見つける

 良き先生とは、改善ポイントを明確に指摘してくれる人だ。かつて中国語の先生に、「あなたは唇を前に突き出して、もごもごと口の先の部分だけで発音している」と注意されたことがある。自分では決して気づけない欠点であり、今でも、もごもごと口の先だけで発音していないか定期的に鏡を見ながらチェックしている。

 日本人の多くは、話をするとき唇や顔面筋肉の動きが比較的少ないと思われる。これは音素の少ない母語の特徴に起因するのであろう。しかし音素が多く発音が複雑な外国語を話すときは、口を大きく開けたり、唇を横にひっぱったり、舌を丸めたり、口内の空気を振動させたり、顔の中にある器官を総動員して日本語には無い多種類の音を作り出す必要がある。

 適格なアドバイスは一生の宝物だ。外国人を対象に長年語学を教えるプロの教師に学ぶことができたら最高である。しかし語学学校は、それなりに費用がかかるし、時間的制約も受けるのでハードルが高い。そこでおすすめなのが「Hello Talk」というオンラインで母語話者と繋がれるアプリだ。

 自宅にいながら自分の都合の良い時間帯にネイティブスピーカーと会話学習が進められる。相手にお願いすれば、発音や文法について互いに率直な意見を伝えあうことも可能なので試してみよう。

●7. 間隔反復で効率よく記憶する

 間隔反復で効率よく学ぶためには、記憶のメカニズムを知る必要がある。語学は短期記憶から長期記憶への転換が繰り返し必要なので、是非知っておきたい。この記事で詳しく紹介いているので一読してほしい。

●8. しっかり間違えて正しく覚える

 この言葉には2つの意味がこめられている。1つには、失敗を恐れず積極的に練習を重ねようという定番のアドバイス。もう1つは、外国語を自分の中にある既存の発音に適当に当てはめて発音してはいけないという意味だ。

 外国人でも母語話者以外と接する機会が多い人、勘が良い人には不正確な発音でも通じるかもしれない。だが長期的に見れば間違い続けているわけで、修正がより難しくなる。学習初期の段階で徹底的に発音記号から正確な音を記憶と筋肉に叩き込んでおいたほうが、圧倒的に効率が良い。

 そして実践の会話で間違いを指摘された言葉や、通じにくかった発音は、必ず発音記号に立ち戻ろう。この繰り返しがとても重要になる。

 以上がポリグロットの教えだが、最後にもう1つだけ加えたい。語学学習は短時間でも良いので毎日必ず行ってほしい。自分に言い訳をして1日で休んでしまうと、2日目、3日目も言い訳が止まらず挫折に繋がる確率がぐっと高まってしまう。体調が悪い日、気分が乗らない日は10分でも5分で良い、外国語のテレビ番組を聞き流すだけでも良いから必ず勉強を続けよう。(記事:薄井由・記事一覧を見る

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