EUがガソリン車の販売禁止方針を転換 EV推進は骨抜きになる? (2)

2023年4月1日 15:30

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 今回、EUが理事会で正式に合意したのは、22年10月に合意していたこととは真逆のものだと言ってもいい。「ガソリン車などの販売を事実上禁止する」から「合成燃料を利用する以外の内燃機関車は禁止する」では、言葉としての違いはさほど見えてこないが、実態振り出しに戻ったということになる。合成燃料を利用すると言って購入されたガソリン車が、ガソリンで走り回ることを止めることはできない。

【前回は】EUがガソリン車の販売禁止方針を転換 EV推進は骨抜きになる? (1)

 EUの既定方針はドイツが土壇場で反対に回って覆された。ドイツが反対に回ったのは、連立政権の一翼を担う自由民主党(FDP)の強硬な反対が最後まで変わらなかったからだ。

 ドイツの連立政権はショルツ首相が所属するドイツ社会民主党(SPD)と環境保護で名高い緑の党、産業界寄りと目される自由民主党(FDP)の3党で構成されている。特に、緑の党と自由民主党は連立政権を構成していることが不思議なくらい目指すものが違うから、ガラス細工のようなものだ。ウクライナ支援を巡るドイツの決断が遅れ気味なのもこうした背景と無縁ではない。

 EUを構成するドイツの、連立政権を組む3党の中では1番小規模な政党の主張が、EUの威信低下を招く政策変更につながり、実質的に「ガソリン車など内燃機関車の販売を事実上禁止する」プランは骨抜きになった。

 EUでは今回の方針変更に対する不協和音が高まっていると伝えられる。また、今後EUの内部で「原則」の追加を、制度設計に落とし込むための作業が行われる過程で、各国の思惑の違いが際立ち紛糾する事態も想定される。

 現にイタリア、ポーランドや中欧諸国の動向次第では、ドイツの意向を汲んだ今回の妥協で収まらないとする見方すらある。

 異なった利害関係の集合体が、一定方向へ向かうことの困難さを印象付ける出来事だ。

 EVへの転換が遅れた日本の自動車メーカーを、揶揄する声は大きかった。ようやく足並みがEVへと向かい始めた時期に、EU内部の混乱が注目を集めるのは皮肉である。だがガソリン車や EV車のメリットとデメリットを冷静に分析して、より良い活用方法を考える時期が来たと言えないだろうか。
 
 仏ルノーが日産との優越的な関係を放棄するのと引き換えるようにして設立するホース(仮称)は、ルノーの内燃機エンジンなどのパワートレーン部門を切り離して、中国の吉利グループと同率出資で合弁する計画だった。だがそこに、サウジアラコムというサウジの国営石油会社が参画することになった。

 表向きは「合成燃料や次世代水素技術を研究開発する」としているが、時代によって事業目的が変遷するのは当然だ。

 日本人が正直すぎると考えるのは筆者だけではないだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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