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銀行の破綻と預金者保護に揺れる、本音と建前 (1)
財務省のHPによると、日本全国で銀行業務を行う金融機関は840に上る。預金保険で最低限保証される金額は、1預金者当たり1000万円だ。現金資産を多く持つ人が金融機関の破綻が怖くて財産を安全に預金しようとする場合、本人名義で分散したすると、840の金融機関に1000万円ずつ預金が可能だから、合計84億円とその利息については保証される。
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金融機関には数多くの支店を有する場合があるが、預金保険発動期には同一金融機関の預金は全て名寄せされるので、1000万円を超える預金は保証されない。
840の金融機関は全国に点在しているので、北海道から沖縄まで分散している金融機関に、本人が出向いて口座を開設する必要がある。こんな手間隙をかけて預金を保全しようと考える大金持ちはあまり想像できないが、原則を前提にするとそうなる。
以前、金融機関の預金名義は相当いい加減だった。本人名義の残高が多くなりすぎることを懸念する顧客が、例えば愛犬の名前をつけた「田中ポチ」という口座を開設することも可能だった。
本人確認という発想がなかった時代だから成立していた話だ。国内で脱税問題に厳しい目が向けられ、資金洗浄(マネーロンダリング)問題に対する国際的な関心の高まりもあって、厳格な本人確認が実行されるようになった。だから現在は、本人が自分の確認資料(運転免許証等)を持参して金融機関の窓口に出向かなければ、預金口座は開設できなくなった。
SNS等に「預金口座を買います」という内容のメッセージが出た場合、その口座は「オレオレ詐欺」等の犯罪に使われる可能性が高い。多少の現金が手に入るからといって、そんな輩に自分の口座を売却すると巡り巡って、忘れた頃に警察から照会を受ける羽目に陥るので避けた方が賢明だ。
預金保険には、金融機関が破綻した際に預金者の損害を一定額カバーして、(少額)預金者を保護し金融システムを安定させる、セーフティネットとしての役割が期待されている。取り付け騒ぎが勃発して、社会不安が高まるようなリスクを予め排除する想いが籠っている。
建前上は、自己資本の厚い安定した経営規律を金融機関に求め、金融取引の自己責任を預金者に促すことになっているが、建前だけでは収まらないとして態度を急変させたのが米財務省だ(続く)。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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