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「大間マグロ」のブランド毀損、地元の水産会社と漁業者が原因という”救いのない話”
7日、青森県警は大間町の水産会社2社の社長を漁業法違反(報告義務)の容疑で逮捕した。読売新聞などが報じている。
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2人は青森県大間産クロマグロの漁獲量のうち、漁獲枠を超過する部分について、正しく県に報告していなかった。関連して、漁師約20人が2人にマグロを売った疑いがあるという。
この疑惑は、地元紙である東奥日報が21年11月5日、「大間マグロ漁獲無報告、一部が脇売り」という大見出しでスクープしていた。
クロマグロには、資源を保護するために国や地域単位の漁獲枠が決められ、漁業者は漁獲量を都道府県に報告する義務がある。実務的には、漁業者の委任を受けて所属漁協が数量を取りまとめて報告を代行している。
漁業者が所属漁協を通さずに出荷することを「脇売り」と言い、それ自体は違法ではない。だが漁業者が所属漁協に報告しない限り、漁獲量の合計から抜け落ちてしまうから、意図的に行われてしまうとチェックの方法がない。
2人の社長(40歳代と60歳代の男性)は大間町の漁師らと共謀して、漁業法で認められた漁獲枠を超えるマグロを、不正に流通させて利益を得ていたという。
当時の東奥日報の報道では、漁協の調査により21年6月から9月にかけて、約14トンの未報告が判明し、漁獲報告が修正された事実があるというものだ。21年9月には、静岡市中央卸売市場で28トンの青森県産クロマグロが、同時期の東京・豊洲市場の半値以下で取引されていた。クロマグロが「バッタ物」のような扱いで取引されていることは、市場関係者の間では公然の秘密のようなもので、情報をキャッチした東奥日報が裏付けを進めたのだろう。
22年9月に青森県がまとめたところでは、漁獲量等の報告を定める漁業法第30条に違反したとされる漁業者は合計20人。所定の年度内に報告されなかった「報告義務違反」で55.7トン、期限を守らなかった「報告期限違反」が4.1トンだ。違反数量合計では59.8トン(青森県全体)にもなる。
間の悪いことに、資源の回復状況を勘案してWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の増枠合意に基いて、青森県の大型魚枠が21年度の460トンから、22年度には506トンに増加することが決まっていた。念願していた漁獲枠が46トン拡大する決定があった年に、現場では増枠分を超える違反が行われていたことになる。
せっかく世間に定着していた「大間のマグロ」というブランドに、マイナスのイメージがついたことは間違いない。イメージダウンの片棒を担いだのが、地元水産会社の社長と漁業者だというところに、この事件の救いのなさがある。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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