資金流出続くバイナンス、本社所在すら不明な「謎多き企業」の行く末は?

2022年12月23日 11:22

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 暗号資産交換業者のFTXが破綻して以後、乱脈を極めたFTXの内部情報が伝えられている。一説には、支出に対する審査がほとんど存在しない状態で、「サム(前CEOのサム・バンクマン・フリード氏)の了解が得られれば金額に頓着することはなかった」とまで伝えられている。

【こちらも】FTXが破綻して被害全貌すら見えない中、最大手のバイナンスが日本に?

 金が湯水の如く湧いてくる(ように感じられる)のだから、どんな使い方に対しても咎めて牽制する野暮は存在しないし、投資効果を検証する人もいなかった。

 傍目にはFTXの破綻が急速に進んだ印象はあるが、今まで通り事実を糊塗してやり過ごすことが出来ていれば、無意味に費消されていた金銭が膨らんでいただけかも知れないと考えると、潮時が訪れたということだろう。

 再建のために支援を求められたバイナンスのチャンポン・ジャオCEOが、支援するはずだったFTXのFTT(電子証票)売却を公表したことで、マーケットでの FTT価格が暴落。FTXは一気に破綻へ向かった。FTXに最後の引導を渡したのが、再建への支援を求められていたバイナンスだったところに、今回の暗号資産を巡る騒動のポイントがある。

 バイナンスとFTXが世界の取引を大きく二分しながら、バランスが取れていた暗号資産交換事業は、FTXの敵失によって漁夫の利を受けたバイナンスによって寡占化が一気に進んでいた。だが現在懸念されているのは、独り勝ちのはずだったバイナンスから資金流出が加速しているという事実だ。

 バイナンスにとって計算違いだったのは、仏監査法人のマザーが「準備金証明」の作成をストップしたことだ。暗号資産交換業者への疑念を募らせた顧客が、「気休め」のように第三者の証明を求めることに問題はない。

 問題は「証明」が「一般市民にどんな思いで受け止められているかが分からない」という懸念をマザーが抱いたことだ。今後の事態の進展によっては、「準備金証明」の実効性への懸念が膨らみ、「準備金証明」作成責任を追求される事態を回避しようとするのは、当然の判断だ。

 今までマザーは、バイナンスの財務状況を詳細に確認しないまま(出来ないまま)、準備金証明を発行していたと認めた。暗号資産交換業者と顧客の間を何気なく繋いでいたマザーが、自社の責任を痛感したことで、暗号資産に対するガマン比べは成り立たなくなり、顧客がバイナンスから資金の引き出す動きは強まっているようだ。

 やや旧聞に属するが、バイナンスが16日に発表したところによると、12日から14日までの3日間で約60億ドル(約8200億円)の資金がネット経由で流出したという。

 これに対してバイナンスは、「600億ドルを超える資産を保有しているから問題はない」との姿勢を示している。だがFTXという当事者の説明に裏切られてきた顧客が、バイナンスの言い分に耳を傾けると期待するのは買い被りかも知れない。

 本社がどこにあるかも知られていないくらい、バイナンスには謎が多い。スタートアップならいざ知らず、業界のトップ企業に謎が多ければネガティブな方向に作用することは止むを得まい。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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