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新型コロナの治療薬「ゾコーバ」はどんな薬? 他の治療薬との違いは?
11月22日、日本で開発された新型コロナ感染症治療薬「ゾコーバ」が、緊急承認された。これでコロナ治療薬として使用できる飲み薬は3種類になった。ゾコーバはどんな薬で、これまでに承認された薬と何が違うのだろうか。
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ゾコーバは、レベル3の実験施設を持つ北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所の澤洋文教授と、シオノギ抗ウイルス薬研究部門の佐藤彰彦客員教授らのグループ、塩野義製薬の共同研究により創薬された。
北海道大学の研究所は、人獣共通感染症を含む、新興・再興感染症について予測し、予防ワクチンや治療法などを開発することを目的としている。ウイルスを取り扱える研究所として、たくさんの化合物から効果があるものをスクリーニングする方法を確立し、これまでにもインフルエンザ治療薬などの研究も行ってきている。
今回創薬されたゾコーバは、新型コロナウイルスの3CLプロテアーゼの働きを阻害する薬だ。感染して細胞に入り込んだコロナウイルスは、まずウイルスRNAからウイルスのタンパク質を作る。このタンパク質を「働く形に加工する」のが3CL プロテアーゼである。
加工を受けたタンパク質は、ウイルスを増殖させるために働く。つまり3CLプロテアーゼを阻害された新型コロナウイルスは増殖できなくなる、ということだ。この3CLプロテアーゼはウイルス特有の酵素で、人間は持っていない。そのためこの薬は人に影響しにくく副作用も起きにくい。
現在承認されている3種類の内服薬のうち、ファイザー社のパキロビッドパックも同じく3CLプロテアーゼ阻害薬であり、ゾコーバと同様のメカニズムで新型コロナウイルスの増殖を抑える医薬品だ。
この2つの薬の違いは、対象とする患者だ。ゾコーバは熱・咳・咽頭痛が強い人に使用できる。つまり、これまでのコロナ治療薬のような「重症化因子」の有無は問われなくなっている。
一方パキロビッドパックは、重症化因子のある軽症~中等症の患者に使用できる。またゾコーバは症状が出てから72時間以内に使用する必要があるが、パキロビッドパックは症状が出てから5日以内に使用を開始すれば良い。
パキロビッドパックとゾコーバの共通点としては、併用できない薬が多いことだ。高血圧の薬や血液サラサラの薬、てんかんの薬、睡眠薬などの一部と、併用が不可となる。普段使用している薬をしっかり医師、薬剤師に伝える必要があるだろう。どちらも12歳以上で使用することができる。
もう1つの内服薬であるMSD社のラゲブリオは、ウイルスが複製するときに偽の材料を取り込ませてコピーミスをさせることで、増殖を止める薬品である。この薬は重症化因子を持つ18歳以上の成人に使用ができる薬であり、発症後5日以内の開始が必要だ。
新型コロナウイルスが世界に蔓延してから、ワクチンが開発され、点滴で使用できる治療薬が開発され、さらに入院せずに治療できる内服薬が開発された。そしてゾコーバにより重症化因子がなくとも症状が辛い患者を早く治癒できる薬が開発された。
あくまでも緊急承認のため、今後多くの患者に飲まれることにより効果の評価がされ、新たな副作用が明らかになることもありえる薬である。重症化リスクを持たない人が飲む薬だからこそ、リスクとベネフィットについてしっかり説明を聞き、理解することが必要だ。そして自分自身で飲むのか飲まないのかを判断していくことが大切だろう。(記事:室園美映子・記事一覧を見る)
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