暗号資産大手交換業者の破綻懸念で、波及が懸念されるソフトバンクG

2022年11月11日 11:22

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 米暗号資産(仮想通貨)業界の有力企業が主役を分け合うドラマが、注目を集めている。

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 交換業者大手のFTXトレーディングが、グループ内の保有資産を水増ししていたという疑惑が拡散して、顧客に動揺が広がり資金の引き出しが殺到した。引き出しを求められた金額は、5日の朝から8日朝までの72時間で60億ドル(役8700億円)にも膨らんでしまったため、FTXは資金繰りに行き詰まった。窮地に陥ったFTXは業界最大手のバイナンスに対し支援を求め、一時はバイナンスがFTXを支援買収する方向に話が進んだ。

 その際公表されたバイナンスのチャンポン・ジャオ最高経営責任者(CEO)の発言要旨は、「(法的な拘束力を持たないから)いつでも取引を撤回できる」というものだった。自社が巻き込まれる事がないように予防線を張ったのだろうが、ジャオ氏の元を飛び出して独立したFTXのサム・バンクマン・フリードCEOが、以後ジャオ氏と対立関係にあったから、「無条件降伏」のような成り行きに違和感を持つ人もいた筈だ。

 事の始まりは、フリード氏が経営する投資会社アラメダ・リサーチの内部文書漏洩だ。その文書によってアラメダ・リサーチ社が保有する約150億ドル(約1兆7000億円)もの資産の、過半に近い60億ドル分が、FTXが発行するトークン「TTF」で、負債の一部にもTTFが含まれていた事が明らかになった。

FTXもアラメダ・リサーチも、フリード氏が経営する兄弟会社だったから、胡散臭さは一気に高まった。そして、その情報を受けたバイナンスのジャオ氏がツイッターに、「当社が保有するFTTを精算する」と発信したものだから、当時25ドル台だったFTTがあっという間に4ドル台まで売り込まれた。

その後は連想ゲームと恐怖が連鎖して、投資家の売りがFTXへ向かって今回の事態を招いた。謂わばFTXが資金繰りに窮するきっかけを作った当事者に、支援を求めるという不可解な事態が発生した事になる。

 おまけに、支援に前向きだった筈のバイナンスの関係者が「FTXの財務に重大な欠陥を発見した」と語ったものだから、FTXの先行きが一転して不透明になった。マーケットでは暗号資産の投げ売りが出て、2日間で32兆円が蒸発したと伝えられている。

 ソフトバンクグループ(SBG)にとって不本意なのは、破綻が懸念されるFTXへの出資者にSBGの「ビジョン・ファンド2」が名前を連ねている事だ。

 SBGは21年11月に発表していた1兆円の自社株買いを10月に完了し、8月に新たに実施するとしていた4000億円の自社株買いの50%相当額を、10月までに実施した事が判明している。急ピッチで進めてきた自社株買いに、水をさされた思いだろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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