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デジタルマネー、給与振込に解禁決定! 銀行やクレカ業界にも影響甚大! (下)
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生き残りを賭けた死闘のような激しい競争を繰り広げている資金決済業者に、新たに名乗りを上げて注目を集めているのがJCBだ。キャッシュレスサービスの分野では以前から存在感を見せていたクレジットカードは、政府がキャッシュレスに力を入れるようになってから風向きが変化している。
【前回は】デジタルマネー、給与振込に解禁決定! 銀行やクレカ業界にも影響甚大! (上)
経済産業省がまとめたところでは、21年のキャッシュレス比率は前年比2.8%増の32.5%となり、クレジットカードのシェアは85%を超える。流石と言いたいところだが、5年前の16年には90%のシェアを占めていたので、5%ほど減少したことになる。
これに対して経産省がコード決済と標記しているデジタルマネーは、16年には数字にならない存在だったのに対して、21年には5%を超えている。16年の年間キャッシュレス利用高が約60兆円だったのに対して、21年の利用高が95兆円だったので、キャッシュレスの規模は1.5倍に増加した。
嵩(かさ)が増えたものの、シェアが縮小した訳だから、クレジットカード業者が将来の営業基盤に不安を感じるのは自然だ。
一般的な使用場面を考えると、デジタルマネーがコンビニなどの小額払いを積み重ねた累計だったのに対して、クレジットカードは1桁上の支払いに使われていると考えても、おかしくない。そのため金額でのシェアが85%対5%だったとしても、使用頻度で比較すると、クレジットカードとデジタルマネーの立場が逆転している可能性すら考えられる。
おまけに、デジタルマネー勢は、利用者に対して”お得感”をアピールすることに巧みだ。クレジットカードの利便性を象徴していた「まとめて後払い」というメリットも、すでに”ペイペイ後払い”などでデジタルマネー業者も実現している。
機能に大きな差がなくてサービスに大きな差があるとユーザーが感じれば、クレジットカードの利用をデジタルマネーに切り替えるのはむしろ当然の成り行きだろう。JCBが危機感を抱いてデジタルマネーへの進出を考えるのは当然である。
子育ての面でもデジタルマネーの優位性が注目されている。これまでも小遣いを交通系のICカードやプリペイド式の電子マネーに入金して、子供に利用させる親はいた。デジタルマネーには、落としたらそれっきりの現金のネックを解消することはもちろん、子供の支払いをリアルタイムで親のスマホに通知するサービスを提供する業者が現れた。
子供がどこで何を買ったのかを知ることはもちろんだが、子供の動静を知ることに大きなメリットを感じる親も少なくないはずだ。月間4~500円の手数料に見合うかどうかを判断する点に個人差があっても、有り難く感じる人は少なくないだろう。
9月15日には全国銀行協会が、全銀システムをデジタルマネー業者に解放することを正式に発表した。全銀センターの分担経費が軽減されることを歓迎するノー天気な銀行もあるようだが、銀行の縄張りが侵食されていることは間違いない。
今後は給与の受け取りにも、支払いにも銀行と縁を結ばない人達が出現する。銀行ビジネスを根本から問い直すべきだろう。銀行の存在感はもちろんのこと、存在理由すら問われる時代が近いことを予感させる事態だ。
デジタルマネーの給与振込解禁には、キャッシュに対する人々の感性の違いを際立たせ、銀行やクレジットカード会社のあり方すらも根本から変えてしまう可能性を秘めている。 (記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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