レバークチュール 2023年春夏コレクション - 夢のひとひら、刹那の形象

2022年9月5日 07:44

印刷

記事提供元:ファッションプレス

 レバークチュール(LEVER COUTURE)の2023年春夏コレクションが、2023年春夏楽天ファッション・ウィーク東京3日目の2022年8月31日(水)、東京国立博物館 表慶館にて発表された。

■一瞬のうちに織りなされる形象

 レバークチュールは、ウクライナ出身のレシャ・ヴェルリンジェーリ(Lessja Verlingieri)がデザイナーを務めるブランドだ。レディ・ガガのファッションディレクターであるニコラ・フォルミケッティに見出され、セレブリティのミュージックビデオやステージ、レッドカーペットなどの衣装を手がけてきた。

 東京国立博物館 表慶館を舞台に発表された今季のコレクションは、素材がふわりと蝟集し、身体を覆っては離れゆく、いわば一瞬に織りなされる形象をドレスに留めおいたようにすら思われる。たとえば光沢を帯びたナイロンは、ふんだんに素材の分量をとり、さながらヴェールが風に乗って身体を取り巻くようにして立体的なフォルムのドレスを生みだす。素材の弾力を活かしたそのドレスは、表面は激しく波打ち、襞に襞を重ね、時には弧を描くようにして半ば頭を包みこみ、流動的なフォルムを軽やかに固化しているといえる。〈軽やかなる固化〉という、この矛盾した響き!

 織物という平面を立体へと変えること──薄く柔らかな素材もまた、緻密なプリーツを施すことで、一種のボリュームを獲得する。華やかに光沢をまとったプリーツ素材は、褶曲しつつ身体の上を縦横に走り、あるいは扇のように優雅に広がる。身体という複雑なフォルムの上で、プリーツというひとつの素材が豊かな表情を織りなしてゆく。

 ひとひらの織物が凝縮し、また広がることでフォルムを織りなす一方、「パーツ」とでも呼ぶべきものを素材にするベクトルも見られる。帯を思わせる細長い素材は、いわば1枚の織物をまとうことで衣服とするかのように、身体に蝟集しては官能的なドレスに変幻する。歩みの律動に合わせて動くその躍動感は、帯様の形状ゆえにいっそう際立つものとなっている。

 織物ならぬ素材が一瞬夢見るドレスの形象──ダイナミックなフェザーを用いたドレスこそ、すぐれてその一例をなすものだといえる。光を透かして白くきらめくフェザーは、さながら天から舞い落ちては身体を包みこむかのように、官能的なドレスを生みだす。羽根という、柔らかく軽やかな素材が織りなす一瞬の姿──さながら刹那の裡に具現する〈軽やかなる固化〉を、ここにも見てとることができるだろう。

※本記事はファッションプレスニュースから配信されたものです。ファッションプレスでは、ブランド、デザイナー情報、歴史などファッション業界の情報をお届けしています。

関連キーワード

関連記事